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日本文化のユニークさ42:甘えと母性社会(2)

2012年04月18日 | 母性社会日本
◆『「甘え」の構造

この本の中に「甘えと自由」について論じている箇所がある。日本人の甘えの心理を、歴史的な視野から考えていくきっかけとしても興味深い。

まず著者は、西欧的な自由の観念を、歴史的に古代ギリシャやローマの自由人と奴隷の区別に発するものと見る。すなわち自由とはもともと奴隷のように強制的に縛られた状態ではないことを意味した。だからこそ自由は、人間の権利や尊厳という考え方と結びいて、守るべき価値のあるものとなったのだろう。また西欧では集団に対して個人の自由が重視される。

これに対して日本で古くから使われていた自由という言葉は、「自由気まま」という表現が暗示するように、もともと甘えの願望とかなり関係が深いという。つまり西欧語の翻訳としての意味が入り込む以前は、自由とは甘える自由であり、つまりはわがままな態度を意味したのである。集団に対して自由勝手、わがまま勝手にふるまうのは、集団からの独立としての自由というよりは、集団への甘えや依存を前提としている。日本的自由はもともと甘えに発するのであり、甘えは他を必要とし、個人が集団に依存していることを前提としている。

これに対して西欧では、個人の自由を重視する一方で、甘えに相当する依存的感情が軽視されてきた。西欧的な自由は甘えの否定のうえに成り立っているのである。「神は自ら助くる者を助く」という諺は、本来はユダヤ・キリスト教の伝統とは無関係らしいが、その意味は「万人が万人にとって敵である世にあって、自立自衛以外には頼むべきものがない」ことを意味したという。

とすればこれは、「旅は道連れ、世は情け」とか「渡る世間に鬼はなし」などという日本的な諺とは正反対の精神と社会を反映していると言ってよいだろう。ということで自由と甘えの問題は、男性原理の社会と女性原理の社会の違いにも深く関係し、その違いをある程度反映しているとも言えそうだ。

さらに、このブログで探求してきた「日本文化のユニークさ」5項目でいえば、

(3)大陸から海で適度に隔てられた日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺な体験をもたず、また自文化が抹殺されることもたなかった。一方、地震・津波・台風などの自然災害は何度も繰り返され、それが日本人独特の自然観・人間観を作った。

との関係もかなり見えてくるだろ。民族同士が闘争を繰り返していたユーラシア大陸に対して、日本列島では異民族の侵入や虐殺はほとんどなく、言語や文化の抹殺もなく、似たような価値観を持つ者相互の長期的な信頼関係を保つことが可能であった。そこで重視されたのは、万人を敵と見なして自立自衛するよりも、ともに協力して生活するもの同士の家族的な人間関係であった。遠慮ではなく「甘え」が許されるような親密な関係が理想とされたのである。

これについては、「日本文化のユニークさ11:侵略なしだからこそ日本の長所が」でもやや角度を変えて論じているので参照されたい。

《関連記事》
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日本文化のユニークさ36:母性原理と父性原理
ユダヤ人と日本文化のユニークさ07


《参考図書》
「甘え」と日本人 (角川oneテーマ21)
続「甘え」の構造
聖書と「甘え」 (PHP新書)
日本文化論の系譜―『武士道』から『「甘え」の構造』まで (中公新書)
母性社会日本の病理 (講談社プラスアルファ文庫)
中空構造日本の深層 (中公文庫)

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