クールジャパン★Cool Japan

今、日本のポップカルチャーが世界でどのように受け入られ影響を広げているのか。WEB等で探ってその最新情報を紹介。

オタク文化と製造業をどう結びるけるか(1)

2011年01月07日 | coolJapan関連本のレビュー
今日は、一昨日紹介した川口盛之助『世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」 (ソフトバンク新書)』のレビューである。

著者は現在、世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンで、主に、製造業の研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行っているという。「世界に誇るオタク文化」と「国の基幹産業である製造業」の架け橋となり、両者の力で日本を元気にすることがライフワークとのことだ。本書も、そんなライフワークにつながる趣旨で書かれている。だから世界が絶賛する「メイド・イン・ジャパン」の現状報告というよりも、「メイド・イン・ジャパン」をより魅力的にするために製造業とオタク文化をいかに結び付けるかという、新しい発想の提案が本書のテーマといってよいだろう。

団塊の世代は、愚直に品質や信頼性を作りこむことで日本製品のブランド力を確立した。しかし今や、愚直なモノづくりをそのまま維持することは現実的ではない。近年、日本発のポップカルチャーが世界で注目されるようになったが、しかし、それだけでは国全体の富を生み出すには不十分だ。これまでに築き上げた「モノづくり魂」とクールジャパンという世界級のカルチャーを融合させる豊かな発想が必要で、今はその絶好のチャンスだという。

近代工業を支える根本概念は、合理的な秩序に支えられた人工の世界観であり、理性的な男性原理が作り出した代表格が、工業製品だ。それは元来、西欧近代に端を発するものだ。ところがその工業製品のかなりの面で、西欧世界を追い抜いてしまった日本では、にもかかわらず男性原理とは対極にあるカワイイ文化や、少女が大活躍するマンガ・アニメが大人気だ。ここに日本文化のユニークさがある。

ところが世界は今、西欧的な男性原理が生み出した、ひたすら機能だけを追求する工業製品に飽き足らなくなっているのというのが著者の判断のようだ。そして、自分が持つ機械や道具にオタク的な発想の付加を加える動きが、個人ではかなり行われ、製品のアイディアとしても、世界に先駆けて始まっているのが日本なのだ。そのような消費者の新しい傾向をうまくとらえた商品がこれからは大きく伸びていくのではないかと著者は主張したいようだ。

ただし著者が挙げているのは、あくまでも発想のヒントとなるかもしれない事例や製品であり、すでに大成功を収めたり、画期的だと評価されたものではない。

たとえば、カスタム車界で急激に拡大したジャンルである「痛車」(いたしゃ)。普通の人々が見ると痛々しいほどにオタク系の美少女キャラでデザインされた車だという。オタク系の文化が世界に広がっている流れの中で、従来のカスタムカーと違って、メジャーに近づく、少なくともマイノリティーに終わらない可能性を秘めているかもしれない。

もう一つ例を示すと、おもちゃとしての遊び感覚で工夫された「ツンデレ」テレビ。チャンネルや音量操作に女の子の声で対応するが、ふつうはツンツンしているのに、ある条件下になるとデレデレといちゃつくという声の態度の変化を楽しめる。ツンデレは、オタク用語から一般に浸透しつつある言葉だという。

こんな例だけ見ていると、これがほんとうに「メイド・イン・ジャパン」の未来を開くアイディアになるの(?)という感じだが、あくまでも、こういう発想の中に新しい商品を開発していくためのヒントが隠されているということである。私も、こういう流れの中で商品を開発していこうとする発想は、これからますます重要になっていうような気がする。

次回は、こうした発想を、これまで私がこのブログで考えてきた日本文化のユニークさや、マンガ・アニメの発信力の理由などと、関連づけて何がいえるかを、すこし補足をしてみたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする