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マンガ・アニメの発信力:BLEACH―ブリーチ―(3)

2011年01月06日 | マンガ・アニメの発信力の理由
「マンガ・アニメの発信力:BLEACH―ブリーチ―(2)」の最後で、「マンガ・アニメに古来の日本人のあの世観が反映されているとして、そこにどんな意味があるのか。このような日本人のあの世観が、マンガ・アニメを通して世界に発信されることにどのような意味があるのか」と自分自身に問いかけた。

事実として、太古からの日本人のあの世観が人気マンガやアニメに色濃く反映されていて、それが世界でも人気を博している。世界中の人々が、それを受け入れ楽しんで見ているうちに、その世界観に知らず知らずのうちに影響を受けていることは確かだと思う。それはどのような影響だろうか。私自身、この問題はじっくり考えていきたいのだが、とりあえずそのためのヒントとなる考え方を紹介しておきたい。

先に紹介した梅原猛の『あの世と日本人 (NHKライブラリー (43))』と内容はかなりダブるのだが、もう少し本格的な研究書になっている本に同著者の『日本人の「あの世」観 (中公文庫)』がある。その中で著者は次のようにいう。

著者があぶりだしたような日本人の原「あの世」観が、キリスト教、仏教、イスラム教、古代シュメールやエジプトの宗教など世界の多くの宗教のあの世観と比し、どのような位置づけになるかは、本格的な研究を待たなければならない。ただ、著者の推測では、日本人の原「あの世」観は、人間の「あの世」観のごく原初的な形態をとどめており、おそらく旧石器時代に形成されたものなのではないかという。

日本人のあの世観に人類の原初的なあの世観の名残りを見るのは、そこに都市文明の成立以後に発展した世界宗教とは違う姿が見られるからである。日本人のあの世観には、天国と地獄、極楽と地獄の区別も、死後審判の思想も、因果応報の思想も認められない。現世の階級差の激しい社会で虐げられた人々の、願望の投影が見られない。とすれば、日本人の原「あの世」観は、階級や階層が生まれない旧石器時代の人類に共通な原初的な「あの世」観の姿をかなりとどめているのではないか。

この原日本的なあの世観は、決して日本だけのものではなく、かつては普遍的なものであったが、農耕牧畜文明の出現、それに伴って生まれた都市文明の発達によって失われてしまったあの世観だった。ところが日本列島では、世界の文明の流れとは合流せずに、高度に発達した漁撈採集文明が1万数千年も続いた(縄文時代)。しかも水稲農業文明を受け入れたのちも、旧石器時代や縄文時代の心性をそのまま残し、言葉も受け継がれていったため、旧石器時代以来のあの世観も存続していったのではないか。

旧石器時代や縄文時代に息づいていたであろうアニミズムや自然崇拝、生きとし生けるものとの同根・共生の心性は、もちろんあの世観とも一体となって存在していた。縄文遺跡から発掘される土偶は、縄文人たちの生への願望や死への恐れ、畏敬、祈りといった感情が強く反映されている。それらが全体として私たち、現代の日本人の心の深層にも受け継がれている。

そして現代のマンガやアニメ、『ブリーチ』にも、『犬夜叉』にも、『幽・遊・白書』にも、原日本的なあの世観、世界観が反映している。それらは、もしかしたら期せずして世界に、農耕文明以前の人間と自然、人間とその生死とのかかわり方を思い起こさせる役割を果たしているのかもしれない。

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