BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ

2010-01-12 00:24:22 | Boxing
王者 ファン・カルロス・サルガド VS 挑戦者 内山高志

内山 12ラウンドTKO勝利

考察 ~内山~

あまりにもオーソドックスなそのスタイルは変則的な王者を見事に封じ込めた。
左を制する者は世界を制すというが、左で追う、左で寄せ付けない、
要するに左で試合の流れをコントロールする。
手数こそ出ないものの、的確さと重さで主導権を強奪し、
左を当てる局面と威嚇に使う場面を使い分け、最後の右につなげた。
最終ラウンドに至るまでワン・ツーはことごとくかわされたが、
そのことで自身は消耗せず、王者の精神を削り取った。
愚直に見えるそのボクシングは確かな哲学と知性に裏打ちされていて、
フィジカルもメンタルも最高の状態だったのだろう。
真正面に立つのは危険だと感じていたが、
回を重ねるごとに繊細なフェイントと重厚なプレスが活きてきた。
頭をそれほど振らずとも相手のパンチを喰わないのは
フェイントとプレスで王者の踏み込みを防ぎ、
自身のパンチは届き、相手のパンチは届かないという間合いと時間帯を演出した。

アホな予想をしてしまったが、それだけに痛快で爽快だ。
この夜の戦いは文句のつけようがない。
ボクシングは最終ラウンドKO決着が最も面白い。

考察 ~サルガド~

どれほど底知れぬ実力を秘めているのかと恐々とさせたが、
始まってみればスピードもパンチングパワーも標準的で、
序盤こそリング中央でのボクシングに応じたが、
すぐに半身の構えからサークリングとジャブ、単発の出入りにシフトした。
力量差を肌で感じ、心理的に委縮してしまったか。
入り際に挑戦者にドネアばりのカウンターの左フックも迫力は十分で、
当たりはしなかったがビビったのは確実。
アゴも強く、体も柔らかいので決定的なダメージは喰わなかったが、
そのせいでダメージが蓄積された。
追撃のフック系は要所でスリッピングアウェイでごまかしたが、
最後は脇を絞った右ストレートの軍門に降った。
ジャブも切れず、カウンターも取れず、逃げ足もなく、
なぜリナレスはこの相手に敗れたのかと考え込んでしまうが、
勝負の綾とはそういうものか。

WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ

2010-01-11 23:27:03 | Boxing
王者 プーンサワット・クラティンデンジム VS 挑戦者 細野悟

プーンサワット 2-0判定勝利

考察 ~プーンサワット~

アゴを徹底的にガードすれば当然のようにテンプルが開くが、
この選手は低い重心と柔軟な上体で横からのパンチを受け流す。
体型・体質に応じた防御であるとともに経験で培った技術でもある。
挑戦者は外から大きく、しかし鋭くパンチを振るってきたが、
果断に即応し、インサイドからより鋭角的にパンチを当ててきた。
コルドバに勝利し、シドレンコに敗れているということから、
自分と似たようなタイプには分が悪いと思われる。
得意とする左フックを交錯させた次の瞬間に右アッパーを功打したが、
相手のパンチの引きの甘さと出入りの「出」の遅さを初回から見切ったか。
自分よりも長身の相手には畢竟パンチが上向き軌道を通るが、
だからといって顔面がきれいに跳ね上がるわけではない。
ナックルでしかるべき顔面部分、つまりアゴを捉えてこそで、
根っからのファイターとして完成されている。

長谷川の二階級制覇の相手?
非常に興味深いマッチアップだが、西岡との統一戦の方が夢がある。

PS.
ラウンドカットは勘弁してほしいもの。
カイーズと森田の採点もどこかしら変に感じたし。

考察 ~細野~

榎戦でもそうだったが、喰ったときのリアクションが良くない。
良くないというか、不恰好だ。
打ちつ打たれつの展開では当てるのも喰うのもサマになっているが、
打ち始め、あるいは打ち終わりに不用意に被せられることが多い。
日本ないしは東洋ランカークラスなら打っていけば下がってくれただろうが、
世界レベルのインファイターならば望むところの展開となる。
一発の威力では頭抜けていても、入り際の一発目以降は
ショートのパンチをコンパクトに連打する必要がある。
相手はそれを行い、自身はそれができなかった。
またアッパーを織り交ぜたコンビネーションを隙を見つけて
ぶち込むゲームプランは築いていたと思われるが、
王者に先手を打たれ戦術面でいきなり袋小路に入った。
打って離れる、あるいはくっついてから打ちまくるのどちらかに特化した方がいい。
細野はアマの土台からか妙に器用に見えるが、
そのボクシングの幅の広さがボクシングに深みを与えていない。
自身が最も上手く戦える距離と意外にも不得手とする距離を知っただろう。
川嶋同様、ここからが逆に楽しみだ。

1/11ダブル世界戦予想

2010-01-10 22:34:05 | Boxing
WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ
王者 プーンサワット・クラティンデンジム VS 挑戦者 細野悟

プーンサワット 判定勝利

判断材料は2点。
王者の直近のパフォーマンスと細野の減量。
敵地アイルランドで地元の人気者(≠実力者だが…)を文字通り粉砕したことは
プーンサワットの評価を間違いなく押し上げる。
日本のリングなど屁の河童だろう。
細野は榎を退け、世代交代を成し遂げたが、
その榎とライバル粟生が世界レベルで通用しなかったことから
フェザーの日本トップと世界の差はまだまだあると考える。
ならばSバンタムでは?
これはデメリットの方が大きいだろう。
まず挑戦ありきの姿勢で、興行としてはありだが、
防衛を勘定に入れていないように思われる。
榎戦で負った顔面骨折も完治しているのだろうか。
打ち合い上等の好試合になると思うが、
細野のパワーよりも王者の豆タンクスタイルの方に分があると見る。

ところで大橋会長はプーンサワットの致命的な欠点を見つけたのだろうか?


WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ
王者 ファン・カルロス・サルガド VS 挑戦者 内山高志

サルガド 判定勝利

センセーショナルな戴冠劇を果たした王者にして
実力未知数と見るのはこれ如何に。
初回KOという結果は素晴らしいが、予想に際して重要になるのはむしろ過程。
その意味でこの予想は極めて内山側に辛いかもしれない。
その内山は、ここぞであと一発が出ない傾向にあり、
慎重と言えば言えるが、キツイ表現をすれば勇敢さに欠けるとも言える。
ジャブで容易にコントロールできる相手ではないだろう。
時折、相手の一発を被弾することもあり、坂東戦ではアゴに対する疑問も呈した。
プロキャリアは浅くとも、年齢的、コンディション的に今がピークと見ての勝負だと思うが、
直近のパフォーマンスを比較して敢えてこの予想をする。
新年から景気が悪い話だが、我が目の不明を証明するような試合を期待する。