BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC世界フライ級暫定タイトルマッチ

2009-09-15 22:17:17 | Boxing
王者 ポンサクレック・ウォンジョンカム VS 挑戦者 升田貴久

ポンサクレック TKO勝利

考察 ~ポンサクレック~

初回に升田の左のフェイントから右のボディへのスイングを敢えて受けてみせたが、
あまりのパンチの無さに拍子抜けしたのではないか。
慣れたリング、気候、時間帯、声援とあらゆる要素が味方したが、
それを抜きに考えても無慈悲なアッパーのコンビネーション、
右フックと槍さながらの左ストレートボディは健在だった。
ポンサクレックで最も印象的なのは静と動の間。
コンビネーションは練習通りのものしか試合で出せないが、
それを当てる下準備は間合い、踏み込み、フェイントと色々とある。
ポンサクレックは目のフェイントと動体視力に優れ、
懐に飛び込む、あるいは呼び込めば面白いように手数が出せる。
今回の相手の不調を差し引いても、世界トップクラスの力量はあると見て間違いなかろう。

考察 ~升田~

試合背景は当ブログのリンクの一つ、バンコク愚連隊氏のブログに詳しい。
そちらの当該エントリのコメント欄でも私見を述べさせて頂いたので
敢えて繰り返さないが、試合を観た今思うことは、なぜ升田陣営は
2ラウンドでタオルをしなかったのかということだ。
ボクサーの調子の良し悪しを見分けるポイントはパンチの振り抜きまたは引きの速さ、
腰と肩のリズム、パンチへの反応、表情、肌の色つやなど無数にあり、
またボクサーごとのタイプ、対戦相手との相性などもあって一定の基準はないが、
この日の升田の腰の軽さは尋常ではなかった。
2ラウンドのクリンチで前に出ながら引きずられるような足運び、
繰り返すスリップダウン、戻りのバネに欠けるダッキング、
さらに4ラウンド終了時に帰るコーナーを一瞬間違えたが、
なぜこの状態で戦わせ続けるのか。
世界のチャンスまであと一歩まで迫り、それを逃した。
そこに舞い込んできた暫定への誘い。
喰らいつきたくなるのは理解できるが、ボクシングは命懸けの競技なのだ。
「死んでも戦う」などというのは力石で終わりにしてもらいたい。

WBA世界Sウェルター級暫定王座決定戦

2009-09-15 21:34:44 | Boxing
石田順裕 VS マルコ・アベンダーニョ

石田 判定勝利

考察 ~石田~

徳山昌守的なエッセンスにあふれるボクシングだ。
消極的な戦法を積極的に採用したというところか。
ジャブ、ジャブ、ジャブ、バックステップ、ダッキングで
構成するボクシングは一見して逃げを思わせるがさにあらず。
相手の右ストの追撃をかわすバックステップ時、
上体をのけぞらせず、左足を引くムーブを織り交ぜていたが、
あれはカウンターの左フックのフェイントとして機能した(打たなかったが)。
追い足に長けていない相手への威嚇・牽制として有効で、
金沢ジムで徳山を鍛えたトレーナーの手腕によるものだろうか。
テレビ実況によるとスパーを見た徳山が「パンチが切れている」と評したそうだが、
パンチ力はSウェルターとしては並み以下だろう。
徳山の言うパンチの切れとは、自身の哲学と同じく、タイミングと角度の意。
(だと解釈しているが…。今度本人に尋ねてみるか)
終始動き続けながらも膝、肩、腰を一定の高さに保ちながら放つジャブは
一度リズムにハマりさえすれば攻略不可能の武器と化す。
暫定世界王座?
サントス、マルチネス、ジンジルク、フォアマン、マヨルガ、マルティロジャン・・・
こいつらとの対戦の可能性が広がったことは歓迎すべきだ。

考察 ~アベンダーニョ~

前戦は観ていないが、背中から見るとマヨルガを連想させる。
ただ、凶暴さ、破天荒さが足りない。
ベネズエラ人はメキシカンのようなかっちりとしたスタイルや
パナマ人のような体形・身体能力依存のボクシングではなく、
奔放なボクシングをするイメージがある。
石田のアウトボクシングを崩すカギはヘッドスリップとボディへのフック、アッパー。
定石ではるが、定石を採用せずして相手の牙城を崩すにはアベンダーニョは
パワーもパンチもスピードも欠けている。
背丈・リーチともに劣る場合、潜り込むことが大前提。
ファイタータイプならばなおさらだ。
警戒すべきはショートアッパーと打ち下ろしだが、
そのどちらも来ないということは序盤で見抜けたはず。
作戦実行能力は決断力と判断力に支えられるが、もう一つ、勇気というファクターもある。
はじめの一歩でお馴染みのコンセプトだ。
ラテン、カリビアンという気質が磊落さを生み出す一方で、
勝負を仕掛けるタイミングをそのメンタルゆえに見逃してしまうのか。

日本スーパーフライ級タイトルマッチ

2009-09-15 20:19:27 | Boxing
王者 中広大吾 VS 挑戦者 本田秀伸

中広 判定勝利

考察 ~中広~

マルケス兄がカサマヨルを攻略できた要因の一つは
左足を相手の前足(右足)の外側シューズ幅一つ分に
踏み込めたことだが、中広にはそれができなかった。
オーソドックスのサウスポー対策の定石として
ジャブ、フェイント、捨てパンチ、フットワークなどがあるが、
この日の中広にはどれにも明確なテーマを見出せなかった。
粟生にも当てはまることだが、相手を動かすのと相手に動かれるのは似て非なるものだ。
右のカウンターはフックもストレートも軸がぶれず、最短距離を走るが、
どうも「カウンターのカウンターをとってやる」と考えているように思える。
パンチを打たせるのとパンチを出されるのも似て非なることであるのは言うまでもない。
この男に必要なのはレベルアップではなく、試合中のadjustabilityだ。

考察 ~本田~

これは僅差で本田の勝ちじゃないのか?
名古屋判定ならぬ広島判定… とまでは言わないが、
ある程度の情状が中広側にあったことは否めないだろう。
対サーシャのディフェンス一辺倒から確実な変化を見せたが、
ファイトマインドは従来通りだった。
胸鎖乳突筋の張りはスリッピングの意識を常に持っていることを物語る。
この状態では逆に首筋を固くしてしまう可能性もあったが、
右リードから左、そして右の返しを上下に打ち分ける様は
左右の体側と椎骨の安定を証明していた。
年齢を重ねることでファイター色を濃くする選手は結構いる(ペニャロサなど)。
そうする方が結果的に選手寿命が延びるわけだ。
ただし攻撃的なスタイルへの変貌により没落してしまったミハレスを忘れてはなるまい。
日本が誇るフライ、Sフライ戦線でまだまだ若手の壁として立ちはだかってほしい。