『現代川柳』、今号10号はより充実していた。
ただし門外漢の言うことです。
句は後にして、読み物が楽しかった。
うちの店に来てくださったことのある、島村美津子さんが写真入りで紹介されている。
美津子さんは1930年生まれ。
しかしすこぶる元気な人。わたしの店に来られたころは、縄跳び連続100回出来たのだが、今はどうなんだろう。
「絶対戦争をしないこと 93歳まで生きた私の願い」とある。
「フォト川柳」の写真提供者は中野文擴さん。
「書斎・輪」によくご来訪下さり、わたしの人生の先輩として尊敬する人です。
「古川柳 つまみぐい」のページはわたしが好きなページ。楽しいです。
今号は「赤子」がお題でこんなのが載ってました。 「女房へ乳だ乳だと追つつける」
中川千都子さんの「ビ・キ・ニ」が楽しかった。上手いもんです。
そして茉莉亜まりさんの「天の網」も好奇心を誘って読ませます。
さて、句ですが、素人のわたしのアンテナに響いたもの。無数にある中から。
わたしのアンテナは「ドキッ」とするもの、あるいは「クスリ」とさせられたもの、そして「ホロリ」とさせられたものに反応します。
【 月の抄 】
人謗る元気昔はあったのに 上藤多織
水の音たったひとこと泣いた日の 茉莉亜まり
花手桶ようお参りと寺の藤花 伊藤玲峰
地蔵様罪ほろぼしのよだれかけ 宇野弘子
母のまえ弟とする猿芝居 小川敦子
まわれ右 前に苦手な女(ひと)がいる 岸本きよの
門燈が夜通しついていた隣 黒川利一
思い出を忘れ回らぬ走馬灯 中野文擴
左手に右手の悩みわかるまい 林かずき
シルバーシート若きに譲り笑ひとつ 門前喜康
交番がいつも不在の神戸駅 吉田利秋
口癖の「めっちゃ」呑み込む修道女 小林康浩
致命的誤植があって値が上がる 小林康浩
【 星の抄 】
薬並べて見ているだけで副作用 大海幸生
自叙伝に無かった恋を入れておく 中野文擴
ひそひそに大きな声で返す人 久保奈央
寝室もおやつケースも夫婦別 太田牧子
五本足袋だれかは居場所まちがえる 悴山真理子
お言葉をかえして波をもろ被る 富田房成
いろいろな神様を知る 病んでから 道家えい子
その日まで最後は早い砂時計 こはらとしこ
仏文出洒落た恋文書けもせず 石部漂吉
内視鏡 辛い別れの痕がある 川本勝三
◎帽子にマスクそれでも席を譲られる 林操
おばさんと言われて腹立つおばあさん 細目十万屯
いいないいな退屈出来る暇できた 鵜川幸子
いや面白い。川柳いいですねえ!
沢山の中からお気に入りを見つける楽しさ!
あ、そうだ。最後に言っておこう。
「編集後記」に小林康浩さんがこんなことを書いておられる。
「今号では詩人、今村欣史さんをご紹介したい。同氏は『完本 コーヒーカップの耳』なるロングセラーを持つ著名な方。」
この「著名な方」というところ、消し去りたい。
昔、福知渓谷に建立された田辺聖子さんの文学碑に「文豪田辺聖子先生は…」と彫られているのを見た田辺さんは、
「もう消しゴムでは消せない。どうしようもない。わたしは消え入りたい」と頭の中が真っ白になったという。
わたしも似た思いをしている。書かれたものは残ってしまう。