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喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『現代川柳』第10号

2024-07-27 19:39:37 | 文芸

『現代川柳』、今号10号はより充実していた。

ただし門外漢の言うことです。

句は後にして、読み物が楽しかった。

うちの店に来てくださったことのある、島村美津子さんが写真入りで紹介されている。

美津子さんは1930年生まれ。

しかしすこぶる元気な人。わたしの店に来られたころは、縄跳び連続100回出来たのだが、今はどうなんだろう。

「絶対戦争をしないこと 93歳まで生きた私の願い」とある。

 

「フォト川柳」の写真提供者は中野文擴さん。

「書斎・輪」によくご来訪下さり、わたしの人生の先輩として尊敬する人です。

 

「古川柳 つまみぐい」のページはわたしが好きなページ。楽しいです。

今号は「赤子」がお題でこんなのが載ってました。 「女房へ乳だ乳だと追つつける」

 

中川千都子さんの「ビ・キ・ニ」が楽しかった。上手いもんです。

そして茉莉亜まりさんの「天の網」も好奇心を誘って読ませます。

 

さて、句ですが、素人のわたしのアンテナに響いたもの。無数にある中から。

わたしのアンテナは「ドキッ」とするもの、あるいは「クスリ」とさせられたもの、そして「ホロリ」とさせられたものに反応します。

  【 月の抄 】

  人謗る元気昔はあったのに       上藤多織

  水の音たったひとこと泣いた日の    茉莉亜まり

  花手桶ようお参りと寺の藤花      伊藤玲峰

  地蔵様罪ほろぼしのよだれかけ     宇野弘子

  母のまえ弟とする猿芝居        小川敦子

  まわれ右 前に苦手な女(ひと)がいる 岸本きよの

  門燈が夜通しついていた隣       黒川利一

  思い出を忘れ回らぬ走馬灯       中野文擴

  左手に右手の悩みわかるまい      林かずき

  シルバーシート若きに譲り笑ひとつ   門前喜康

  交番がいつも不在の神戸駅       吉田利秋

  口癖の「めっちゃ」呑み込む修道女   小林康浩

  致命的誤植があって値が上がる     小林康浩

 

  【 星の抄 】

  薬並べて見ているだけで副作用     大海幸生

  自叙伝に無かった恋を入れておく    中野文擴

  ひそひそに大きな声で返す人      久保奈央

  寝室もおやつケースも夫婦別      太田牧子

  五本足袋だれかは居場所まちがえる   悴山真理子

  お言葉をかえして波をもろ被る     富田房成

  いろいろな神様を知る 病んでから   道家えい子

  その日まで最後は早い砂時計      こはらとしこ

  仏文出洒落た恋文書けもせず      石部漂吉

  内視鏡 辛い別れの痕がある      川本勝三

 帽子にマスクそれでも席を譲られる   林操

  おばさんと言われて腹立つおばあさん  細目十万屯

  いいないいな退屈出来る暇できた    鵜川幸子

 

いや面白い。川柳いいですねえ!

沢山の中からお気に入りを見つける楽しさ!

 

あ、そうだ。最後に言っておこう。

「編集後記」に小林康浩さんがこんなことを書いておられる。

「今号では詩人、今村欣史さんをご紹介したい。同氏は『完本 コーヒーカップの耳』なるロングセラーを持つ著名な方。」

この「著名な方」というところ、消し去りたい。

昔、福知渓谷に建立された田辺聖子さんの文学碑に「文豪田辺聖子先生は…」と彫られているのを見た田辺さんは、

「もう消しゴムでは消せない。どうしようもない。わたしは消え入りたい」と頭の中が真っ白になったという。

わたしも似た思いをしている。書かれたものは残ってしまう。

 

  

コメント
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