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喫茶 輪

コーヒーカップの耳

句集『秋灯』

2020-12-06 16:17:38 | 本・雑誌
昨日、自治会長のN氏が公用で来訪。
そして、これは私用で、本を一冊くださった。



句集『秋灯』(小牧幸枝著・昭和57年刊)。
え?くださったのか?それとも読んだらお返ししたほうがいいのでは?
N氏の父親の蔵書だったのが書棚にあったのでとのこと。
因みにこの本、非売品です。ということは身の周りの人だけに配られたものでしょう。
しかしN氏は著者をご存じではないらしい。お父上の知人ということなのでしょう。
多分、N氏のお父上も著者の小牧さんもすでにご健在ではないのでしょうね。
著者喜寿のときのものですから、ご健在なら110歳を過ぎておられる。

句は昭和48年から57年までのもの。
読ませていただいたが、どれもわかりやすく、上品な作風。
人を驚かすような句はない。
巻頭句。
  春暁の枕響かせ貨車長し 
光景と心持がよく伝わります。
この一句から、この人の俳句は始まったということのようです。
竹貫示虹氏の跋文によると、幸枝さんは終戦後すぐにご主人を亡くし、4人の子供さんを育てられたとのこと。
その苦労を感じさせるような句はほぼ見えないが、かすかに匂わせるようなものはある。
  耐うことに慣れもし今朝の冬木立  
  女一人飢ゑる四児抱へ敗戦日  
などはそうなのでしょう。
そしてこれ。
  足袋白し寡婦とし生きて四十年
でも、子育てを終えてからは幸せな余生を送られたようだ。
琴や茶の湯を趣味とされたのだから。
そしてこの本、子どもさんたちが費用を出し合ってとのこと。
親孝行な子どもさんを育てられたのだ。
いかにも幸せな晩年。

ところで、ご本人は、まさか令和2年のこの時代に、縁もゆかりもない見ず知らずの人間がこの句集を読むとは思ってもおられないでしょうね。
正に、《書いたものは、いつだれがどのように読むかしれたものではない》です。
幸枝さんがいつお亡くなりになったかは知らないが、巻末の写真は玄関先での矍鑠とした和服姿。
昭和の真っただ中を生きた人という感じです。

わたしが好きだった一句。
  文庫本とぢ爽やかに席譲らる
電車の中に一瞬流れる空気が爽やか。切れ味良い若者の動きが見える気がします。

さて気になるのは、この本の序文を書いている、丸山海道という人。
ググってみると、京都の俳人で「京鹿子」を創設主宰した人のようです。
幸枝さんも「京鹿子」の同人。
そしてなんと、海道は高浜虚子に師事していたと。
またか、と思われるかもしれませんが、わたし虚子の直筆ハガキ所持してます。

これ、フアンから署名を求められて書いたものです。
「きょし」と小さな声が聞こえるような気がしませんか?






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