原さん、入って来るなりうれしそうに
「昨日パチンコ屋でなあ、一等や」
何が?
「行ったら、全国パチンコ愛好家感謝デーとかでな、抽選せえゆうから、くじ引いたら一等賞が出たんや。みんなビックリしよった。ほんで大きな段ボールに入ったテレビもろて帰って、嫁はんに『お前のテレビにせえ』ゆうたら喜んどった」
やっぱり、原さんやから、当たるようにしてくれたんや。
「マスター、またムッチャ言う」
この人、パチンコ屋でもめごとがあると自ら仲裁役をする人である。警察が来るまでに片付けてしまう。だから、パチンコ屋さんからも頼りにされている。
仕事中にパチンコ屋から「今トラブルで困ってるから来て欲しい」と電話がかかって来ることもと。「なに言うてまんねん、俺いま仕事中でっせ」と断ったこともあると。
とにかく押し出しの強い人だ。あちらの世界に行っていたらきっと頼りにされる親分になっただろう。
加古川の井上慶太さんから小包が届いた。
例年の将棋カレンダーだ。今年頂く最初の一本。
慶太さんは、日本将棋連盟のプロ棋士、現役の九段である。
もう長くお付き合いさせて頂いている。
このカレンダーには毎月、スター棋士の写真が載っている。
残念ながら今回、慶太さんは掲載されてない。
しかし、立派なものだ。
そして、お手紙とともにもう一点同封されていたのがこれ。
お弟子さんの稲葉陽さんの扇子である。
お手紙によると、六段昇段を記念しての扇子とある。
おめでたいことだ。
この稲葉君は、少し前のNHK杯戦で、元名人の丸山九段との激戦を制し、話題になった棋士だ。
うれしいなあ。
慶太さんには、他にも優秀なお弟子さんがたくさん活躍しておられる。
楽しみなことである。
あ、そうだ、今年の春、慶太さんには西宮に来て頂いて子どもたちに指導将棋をして頂いたのだった。その時の様子を少しyoutubeにアップしてます。
http://www.youtube.com/watch?v=7R5zUCdSs7A&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=jX5C9xvQriI&feature=plcp
人柄の良さが出てますねえ。
必要があって今、幸田文さんのものを読んでいるが、上手いですねえ。
父、露伴の死の床での誕生日を祝う魚のことである。終戦直後、なにもない時代だ。
つくづく見るそのちいさい魚。生きは極上だった。えも云われぬ美しい整っ
たすがたをしている。鰭の薄い膜は人体のどこにもない美しさ。穏やかな眼つ
き。一枚も損じていない鱗。魚のからだ中の表情がすなおだった。魚屋の盤台に
並ぶ魚にだって表情はいろいろある。潮を離れるとき絶叫したことをおもわせる
のもあるし、ふわふわっとあがって来てしまったというのも、さんざ駆引きをし
てくたびれきったのもある。眼に血をさしたむごい形相のさえもいる。これは親
魚に云いつけられると何の疑うところもなく忽ち、はいと云ってまっすぐうちへ
やって来た魚だ。あわれに美しく、あまりに可憐な魚だった。秋の快気祝いに
は、これの親兄弟一族がずらっとやって来るつもりだろう。この幼い魚をおとう
さんにおあげしよう。
いいなあ、幸田文さん。