御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

本田直之「レバレッジ時間術」

2007-09-03 13:14:58 | 書評
前の記事で「自己啓発の本」とあるのはこの本のことである。久々にこの類を読んだせいか結構刺激されるところもあり、とりあえずそれなりに文具を揃えた(笑)。大学受験から現在まで退路のない生活をしてきたであろう本田氏の迫力はなかなかのものであり、その迫力は技術論を超えて評価できる部分である。

ただ、ふと思い立って野口ユキオさんの超整理法も読み直してみると、本田氏のアイデアはずいぶんざくざくっとしたものに見えた。長期単位で予定を見渡すという技術論は両者に共通しているが、野口氏の発想は早くも10年前にアスキー社の超整理手帳の蛇腹式予定表として結実しているのに対し、本田氏はそれも知らずカレンダーを持ち歩いているということであるから少しびっくりする。ま、親切なというかしゃらくさい読者が指摘はしているであろうが。

しかしなあ、このあたりどうなのかなあ、と思う。というのは、本田氏はこうしたことを指導したりして収入を得ている。時間にレバレッジをかけてこうしたこと自体を教えるということなのか。速読のセンセイが速読で何かの分野で業をなすのではなく速読指導ばかりしているのと一緒で、どうも得心が行かない部分である。そういう気分を胸にして本屋に行ったら、タイムマネジメント屋さんがタイムマネジメントを広めるためにタイムマネジメントをしている類の本ばかりのように見えた。昔は野口さんや梅棹さんのように強い本業があってそれを行なううえでのおすそ分けのような様相があったような気がするのだが。それとも、自己啓発の分野にそれ自体で生業が可能な結界が形成されつつあるのだろうか?




コメントを投稿