御託専科

時評、書評、そしてちょっとだけビジネス

中村屋のボース

2006-08-19 17:59:22 | 書評
チャンドラ・ボースというのは知っていたが、この物語の主人公、ラッシュ・ベハリ・ボースというのはしらなかった。日本に寄り沿いつつインド独立の目的を果たそうとし、日本に客死した闘士の物語。
あのころの日本というのは、対華21か条ののちであっても、アジアのリーダーでありアンチ西洋近代の思想的・実態的中心となり得たんだなあ、そうボースや孫文からも期待はあったんだなあ、と認識。でも、著者の言うとおり頭山満などの右翼大立者たちは心情が前面に出てしまい論理・思想・戦略に欠けていた。本当に残念なことである。今ひとつの「スピン」があればうまくめぐったのかもしれない、と思う。
もうひとつ。あとがきを見て著者の若さに驚いた。「私の二〇代は、この本を書くためにあったといっても過言ではない。」なんたる達成感、何たる充実!新たな論客の出現である。その才能と幸運には嫉妬を禁じえなかった。

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