西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

二人椀久

2014-07-16 | 長唄考

「椀久出端」の歌詞が、90年後の「二人椀久」(安永3・1774年・錦屋金蔵作曲)
ではこうなる。

「たどりゆく
 今は心も浮かれそろ
 末の松山思いの種よ
 あのや椀久は
 これさ これさ 打ち込んだ
 とかく恋路の濡れ衣」

下記にあるのは元になった「椀久出端」の歌詞だ。
オレンジの部分だけをもらってアレンジしている。

 「たどりゆく 
 今は心も浮かれそろ

 誰かいく野を引きぬきしより
 いつの頃よりあいなれそめて
 通う心の幾世の思い
 忍ぶ妻戸を ほとほと叩くは椀久か
 さりとはさりとは 請けうかの 忍ぼかの
 そっこで請けだせ おもわくを
 これこれこれ うけたもの
 あのや椀久は これさこれさ
 鼓の皮かのうほんえ
 しんぞ心は これさこれさ打ち抜いた ほんほえ
 しんぞのうほんえ
 とかく恋には身をやつす

「二人椀久」以前(享保19・1734年)にも、
瀬川菊之丞が「二人椀久」を坂田兵四郎の唄で踊っているが
その曲は消滅して伝わっていない。

おそらくはもう少し「椀久出端」に近い歌詞だったと思われる。

何曲も作られていくうち、または再演されて行くうちに
いらない部分が削られ、ついにはシンボル的な歌詞だけが残されていくのである。

だから「椀久出端」の歌詞では「打ち抜いた」のは「鼓の皮」だと分かるが、
「二人椀久」の歌詞では何に「打ち込んだ」のか分からなくなっている。
まあ、「遊女松山」に入れ込んだと取れなくもないが…


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photo by 和尚
 

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