獅子の精となった奥州は、
”獅子物”お定まりの終盤、”獅子団乱旋”(ししとらでん・舞楽の曲名)
で喜びの舞(狂い)を舞う。
『獅子団乱旋の 舞楽のみきん
獅子団乱旋の 舞楽のみきん
牡丹の花房 におい満ち満ち
大巾利巾の 獅子頭
打てや囃せや 牡丹芳 牡丹芳
黄金の蕊 顕われて
花に戯れ 枝に臥し転び
実にも上なき 獅子王の勢い
靡かぬ草木も なき時なれや
万歳千秋と舞い納め
万歳千秋と舞い納め
獅子の座にこそ 直りけれ』
(意訳)
獅子、団乱旋(いずれも舞楽の曲名)の舞楽が始まる。
牡丹の芳しい薫りがあたりに満ちあふれ、獅子は頭を振って、やれ打て、やれ囃せと舞い狂う。
牡丹の花は呼応して次々と花びらを開き、黄金色の蕊を現す。
花に戯れ、枝に臥して転がるように舞う獅子王の勢いの前に、なびかぬものはない。
万歳楽、千秋楽(雅楽の曲名)と、泰平の世を祝し舞い納めた獅子は、文珠の蓮華座に戻っていった。
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photo by 和尚