以下も「石橋」をそのまま使っている。
”石橋物”(獅子物)定番の歌詞で、石橋の有様をのべ、
菩薩が現われるから、立ち去るでないぞ、と戒める内容だ。
傾城の生霊なのだから、菩薩影向は関係ないと
思うのだが、いったん引っ込んだ奥州が、
牡丹の被り物を頭につけ、両手に大巾利巾の手獅子を持って登場する。
つまりはここで獅子の精に変身するわけだから、
定番の歌詞が来ないとまずいのだ。
それに菊之丞お得意の、石橋の所作を見せなければいけないし。
『牡丹に戯れ 獅子の曲
げに 石橋の有様は
笙歌の花降り 簫笛琴箜篌
夕日の雲に 聞こえゆべき
目前の奇特 あらたなり
暫く待たせ給えや
影向の時節も
今幾程に よも過ぎじ』
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photo by 和尚