猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

母なる証明

2022-09-04 21:51:42 | 日記
2009年の韓国映画「母なる証明」。

夫を亡くして以来、漢方屋を営みながら知的障害のある息子トジュン(ウォン
ビン)と共に暮らしているヘジャ(キム・ヘジャ)。トジュンは健常者の友人ジ
ンテ(チン・グ)といつも遊んでいたが、ヘジャはそれを良く思っていなかった。
ある日街で女子高生が殺害される事件が起き、トジュンが容疑者になってしま
う。事件の解決を急ぐ警察がトジュンを犯人だと決めつけ、弁護士も頼りにな
らない中、ヘジャは真犯人を見つけ出し、息子の無実を証明しようと孤立無援
の状態で奔走する。

パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督によるミステリーであり人
間ドラマでもある。この監督の映画では格差社会というか貧しい家庭が描かれ
ることが多いようだ。この映画でも未亡人のヘジャは知的障害のある息子と漢
方屋を経営しながら貧しくも幸せに暮らしている。ヘジャは時々近所の人を相
手に違法行為をしていた。資格を持っていない鍼治療だ。息子のトジュンは健
常者の友人ジンテといつもつるんでいたが、トジュンを利用しているふしもあ
るジンテのことを快く思っておらず、トジュンに「あの子と遊ぶのはやめなさ
い」といつも言っていた。そんなある日女子高生が殺される事件が起き、彼女
と最後に会っていたのがトジュンだということがわかり、トジュンは容疑者と
して拘束されてしまう。
ヘジャには、おとなしくて純粋なトジュンが殺人を犯したとはとても思えない。
弁護士に依頼するが、接見してもトジュンはよくわかっていない様子で、弁護
士は早々に諦めてしまう。トジュンを信じるヘジャは息子の疑いを晴らすため
に奔走する。ジンテがトジュンに「お前の母さんはどうしてお前がかわいいん
だろうなあ」と言うシーンがあるが、ジンテの気持ちもわからなくはない。以
前中国映画を観た時にも思ったのだが、中国や韓国には成人した知的障害者を
入所させられる施設はないのだろうか。中国映画では父親が息子を職場に連れ
て来ていたし、本作でも母親のヘジャは仕事をしながら息子の行動を見ていな
ければならない。
ヘジャは真犯人を見つけるため、犯罪まがいの行為までする。ある理由からジ
ンテが犯人ではないかと思ったヘジャはジンテの家に侵入する。もちろんジン
テは犯人ではなかったのだが。とにかくヘジャ役のキム・ヘジャの演技がすご
く、見た目は普通の貧乏そうなおばさんなのだが鬼気迫るものがある。いやこ
の役は普通のおばさんっぽい人の方が合っているのだろうと思った。息子を信
じる気持ち、愛する気持ちが怖いくらいに描写されている。そして殺された女
子高生にも事情があった。彼女は生活苦のため援助交際をしていたのだ。ここ
でも貧しい家庭が出てくる。廃品回収で生計を立て、廃墟のような家に住んで
いるおじさんも出てくる。
物語にはどんでん返しが2度あってびっくりする。事件の真相はこうだったの
か。そしてもうひとつ。私は予想もしていなかった。あれ?と思うシーンは確
かにあったのだが。こういう展開を考えるポン・ジュノ監督はすごい。この人
の映画はまだ4本しか観ていないが、どれもとてもおもしろかった。トジュン
役のウォンビンは木村拓哉にちょっと似ていてハンサムだが、知的障害者の役
もうまかったのはさすが実力派。衝撃的な映画だった。




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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ウォンビンが出ているのですね。 (ウラジーミル・アスポン)
2022-09-05 13:29:39
ウォンビンみたいなイケメンさんが知的障害の役とは驚きです。
顔の悪いぐらい人の合うはずですが…。
でも演技力で知的障害の役もちゃんとやっているんですね。

女子高生を殺した容疑者はトジュンだそうですね。
普通に考えれば、援助交際をしている女子校生は
援助交際の相手に殺されたと考えてもいいはずなのですが…。

トジュンを容疑者と決めつけるだけの証拠があったのでしょうか…!
最後に会っていただけでは証拠になるとは思えないです。
警察の捜査も適当ですね。

どうせ援助交際している女子校生は底辺なので、
真剣に捜査するよりひたすら解決を急ぐんですね…。

この映画では、貧しい家庭が描かれていますね。
トジュンも…女子校生も…。
格差社会なら貧しい人には、警察の扱いが悪そうですね。

母親は事件の解決に必死ですね。
確かに知的障害で純粋に見える子が犯人とはとても思えないもんですね。
息子の健常者の友人ジンテの家に無断侵入するとか犯罪まがいの行為して
真犯人をつきとめようと必死なんですね。

ところで、中国映画の中で、父親が知的障害の息子を
職場に連れてくるシーンがあるんですね。
それは驚きですね。
この作品は個人経営の漢方薬屋だから、おかしくはないけども…。
でも、仕事しながら面倒みるのはやりにくそうです。
返信する
Unknown (杏子)
2022-09-05 20:33:47
>ウラジーミル・アスポンさん
コメントありがとうございます。ウォンビンが知的障害者役って意外ですよね。
でもやっぱり俳優ってすごいなーと思いました。

トジュンを容疑者にしたのは状況証拠だけですね…
この街は何10年も殺人事件なんて起きてない田舎なんですよね。
だから警察も何というか、「殺人の捜査慣れ」してないんですよ。
早く事件を終わらせたいので、捜査もずさんです。
被害者も容疑者も底辺層の人間なので、見下してる面もあるんでしょうね。

母親が何とか息子の容疑を晴らそうとする行動がすごいです。
弁護士も当てにならないし…
でも物語は衝撃的な結末を迎えます。

はい、中国映画でそういうシーンがありました。そちらは父子家庭なので、
昼間息子の世話をする人がいないんですよね。
日本には成人した知的障害者が入居できる施設はありますが、
中国や韓国にはないんですかねえ…
返信する
Unknown (asateru0628)
2022-09-06 20:21:55
パラサイトの映画みました。映画館では無いけど…こんな世界もあるのかな?って思いましたよ。 
で…この話の映画も観たいです。テレビでやらないかなぁ〜。
返信する
Unknown (杏子)
2022-09-06 21:17:30
>asateru0628さん
コメントありがとうございます。パラサイト映画館で観ました〜すごく衝撃的でしたね。
この映画はテレビではどうでしょうね〜深夜とかならあるかもしれませんね。
レンタルはできますけどね(^-^)
返信する
観ました。ぞわぞわする映画ですね。 (ウラジーミル・アスポン)
2022-09-07 14:53:01
映画、観ました!
気持ち悪いけど面白い映画です。

母が怖いですね。
気持ち悪いシーンが多いですね。
ぞわぞわきますし、そこが良さでもあります。

友人ジンテを疑うシーンで侵入したら、
ジンテが彼女とHはじめているところを見てたりするところとかが…(^^;
何ともキモく見えました。

それに携帯電話の改造を頼むシーンでは
薬局に生理用品買いにいくシーンとかが
何か恥ずかしいしえげつない感じです。

最後、どう解釈していいやら、見るものによって違いそうです。

廃品回収のおじさんによると犯人はトジュン…
でも真犯人が捕まったって事は、廃品回収のオジサンの証言は一体…

トジュンの代わりに逮捕された人は誤認逮捕なのでしょうか。
それとも、廃品回収のオジサンはトジュンを犯人と勘違いしただけ…

犯人は複数かもしれないとも思えます。
後から捕まった人も、犯行を認めているフシがあります。

2人とも同時刻に彼女を攻撃したかもしれないです。


母の犯罪は、ただの火事で処理されてバレずじまいですね。
トジュンが鍼ケースを拾っていて、母の犯罪に気付いているみたいですね。

トジュン親子は、一応、ハッピーエンドでもあるけど、どこか気持ち悪いところがあって印象に残ります。
返信する
Unknown (杏子)
2022-09-07 18:10:09
>ウラジーミル・アスポンさん
コメントありがとうございます。全体的に気持ち悪い映画ですよね。
母親の必死さがほんとに怖いと思います。

私も女子高生と携帯電話のエピソードでは、生理用品買うのって普通の行為なのに、
すごく嫌な感じがしました。
この監督は観る人を不快にさせるのが得意なようです(笑)

犯人はトジュンですね。廃品回収のおじさんが目撃してますから。
でも通報しようとしたおじさんを、息子を守るために殺してしまいますね。

トジュンの代わりに捕まった人は誤認逮捕というより、
警察が適当に引っ張ってきたのだと思います。
あの男性も知的障害者ですね。だから本人もよくわからないまま認めているのでしょう。
警察は真剣に捜査をする気はなく、さっさと事件を終わらせたいんでしょう。
ヘジャはその人と面会して知的障害者だと気づきますが、
やはり息子を守るために真実を言いません。
ヘジャはかなり罪深いと思います。

ヘジャがおじさんを殺したことは多分バレないでしょうね。
この親子にとってはハッピーエンドと言えるでしょうけど、
すごく後味が悪くて嫌な(誉めてます)映画ですよね。
返信する
「はじめまして」 (はなこ)
2022-10-16 10:51:47
はなこと申します。さきほどは私のブログに訪問くださり、ありがとうございました。

gooにも映画好きで、マメに感想を書いておられる方がおられて嬉しいです(私は最近、teacupブログから引っ越して来た者です)。

私も映画が大好きです。人生の大抵のことは映画から学んだ、と言ってよいほど(笑)。自宅のテレビがしょぼいので(画面が小さい)、映画は殆ど新作を映画館で見ています(自宅ではなにかと邪魔が入り、集中して見られないので)。旧作はWOWOWやBSで見ています。

昨日はキノシネマで「キュリー夫人」を見て来ました。ロザムンド・パイク姉さんが相変わらずの熱演名演でした。

さて、「母なる証明」ですが、2009年公開時に私は見ており、シャーロッテさん?のレビューを懐かしさを感じながら拝読しました。後に米国アカデミー賞を受賞するポン・ジュノ監督の実力を如実に示した作品ですね。

はて自分は2009年当時、どんな感想を覚えたのだろうと改めて知りたくなり、久しぶりに自分のレビューも読んでみました。

gooにはTB機能がないので、ずうずうしくもコメント欄にアドレスを貼り付けました。当時知り得た情報も含んでおりますので、読んでいただければ幸いです。

https://blog.goo.ne.jp/hanakonoantena20220612/e/5f246e2f76c5945c81dac1c724304c06
返信する
Unknown (杏子)
2022-10-16 15:43:23
>はなこさん
コメントありがとうございます。私も映画館で観るのが好きです。
好きな俳優が出演していたり、あらすじを読んでとても興味を惹かれた映画は映画館で観ますね。
後はTSUTAYAの宅配レンタルを利用しています。残念ながらうちのマンションはBSが観られないんですよね~。

「母なる証明」も映画館で観られたんですね。衝撃的な物語ですよね。さすがポン・ジュノという感じです。
韓国のラブストーリーとかはほとんど観ていないのですが、サスペンスやミステリーのジャンルだと
ほんとにハズレがないって感じですよね。
日本のサスペンスやミステリーにもおもしろい作品はありますが、韓国映画には敵わないですね。
暴力シーンやグロテスクなシーンもリアルですね。
どうしてこんなに差がついてしまったのか…韓国ではいい監督が育っているのでしょうかね。

韓国旅行に行かれたことがあるんですね。私は海外旅行に行ったことがないです。
行きたい国や地域は色々あるんですが、貧乏なもので…(笑)
韓国は先進国のイメージですが、そんなに不衛生なトイレがあるんですね。
日本ではちょっと考えられないような…やはりポン・ジュノが描くような「格差」の表れでしょうか。

「母なる証明」の感想の記事を読ませて頂き、ありがとうございます。
ウォンビンってやっぱり木村拓哉に似てますよね(^o^)
返信する

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