猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

クイルズ

2018-12-19 02:40:45 | 日記
2000年のアメリカ映画「クイルズ」。

18世紀末のフランス。卑猥文書の罪でナポレオン体制下の警察に逮捕されたサド侯爵
(ジェフリー・ラッシュ)は、シャラントンの精神病院に送られる。金の力で特別待遇
を受ける彼は、広い部屋で執筆の自由を与えられていた。これは理事長を務める若き
理想家ド・クルミエ神父(ホアキン・フェニックス)が、サドの治療になると信じて与
えた特権であった。だが小間使いのマドレーヌ(ケイト・ウィンスレット)を通して彼
の文章は世に渡り闇出版されており、その事実を知った神父はただちに筆記具を没収。
するとサドの猛烈な反逆が始まり、あらゆる手段を使って小説を書こうとする。

サディズムという言葉の語源になったサド侯爵の晩年の物語。サドは長きに渡って刑
務所や精神病院に収容されていたようだが、それでも小説の執筆をやめなかった。そ
してそれは好奇心旺盛な小間使いの手によってこっそりと世に出回っていた。病院の
理事長である神父は、サドを患者としてだけでなく友人とも見ていた。サドの矯正に
なるならと執筆の自由を与えていたのだ。ところがそれが世間で出版されていたと知
ると神父は激怒し、紙とペンとインクを取り上げてしまう。更に新しく院長になった
博士によって拷問も行われる。しかしサドはそれでも執筆をやめなかった。
この博士というのが、もう年なのに16歳くらいの尼僧院育ちの孤児の娘と結婚するよ
うな俗物で、胸が悪くなる。サドの執念とも言うべき執筆欲はどこから来ていたのだ
ろう。彼は規律も常識も宗教も無視した卑猥な小説を書くことに一生を捧げた。これ
は犯罪というより精神異常なのだろうか?私にはわからない。いずれにしても彼の文
章が世間の人々の興味を捉えたのは事実である。筆記具を没収されたらワインでシー
ツに文章を書いたりと、あらゆる手段を用いて書いていたのだ。
サドを演じたジェフリー・ラッシュの演技がすごい。とりつかれたようにサドを演じ
ていると思った。彼は「シャイン」での演技も素晴らしかった。ホアキン・フェニッ
クスやケイト・ウィンスレットもとても良かった。特にホアキンが演じた神父は、マ
ドレーヌへの恋心と神職との間で苦悩する様子がとてもリアルだった。サドが世に問
いたかったものは何だったのだろう、と思った。そんな気持ちはなく、単に猥褻な小
説を書きたいという欲だけだったのか。鬼気迫るサドの執念を感じさせられる、おも
しろい映画だった。




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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (じゃが太郎)
2018-12-21 19:25:20
凡人には理解出来ない世界の住人ですね。
でも、だからこそ、凡人は惹かれてしまうのでしょうか。
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Unknown (杏子)
2018-12-22 01:22:24
>じゃが太郎さん
コメントありがとうございます。死の間際まで猥褻な文章を書き続けたサドの執念はすごいです。でも人は時としてインモラルなものに惹かれてしまうことがありますよね。
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Unknown (鳥天)
2018-12-22 08:12:15
サドさんとジャン・ジュネさんの本は読むのが辛くて途中で断念したなぁ。読み取ること以前に、読み続けることができなかったわぁ~。
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Unknown (杏子)
2018-12-22 17:57:21
>鳥天さん
コメントありがとうございます。サドの小説読んだことがあるんですね。映画の中で文章が出てくるのですが、私もあれは読めない、と思いました( ̄▽ ̄;)
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Unknown (Kamoko)
2018-12-22 22:11:12
この映画まだ見てないんですよ~
見るべきですねー
サド。。すごく興味があります。サド行為に、ではなくて、そうしたいと思う人間の心理に。
沙村広明(無限の住人の作者)が出してる責め絵画集を見た時、倒れそうになるくらい気分が悪くなりましたが、いつまでも脳裏に張り付いて離れませんでした…私も危ないかも(笑)
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Unknown (杏子)
2018-12-23 01:39:04
>Kamokoさん
コメントありがとうございます。サディストやマゾヒストの世界は理解できないです。だからこそ余計に興味を持つのかもしれませんね。
無限の住人はちょっとグロテスクですね…(^-^;
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