ぶつぶつ地蔵

地蔵 呟く ひーの言葉を。ぶつぶつと…。

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林英世 ひとり語り ~夜が軋む~

2005-05-22 02:07:08 | 舞台関係
西陣ファクトリーGardenは、昔は西陣織りの織り機のあった場所。
一見、通りから見ただけではその内部は解らない。
普通の家のその奥に設けられた建物が、西陣ファクトリーGardenである。

細い路地を通り抜け、受付を済ませる。

そっと踏み込んだ空間。
普通の空間とは、何かが違う。

時間の重み?
歴史の厚み?
天井形状の違い?
少しひんやりと感じる空気のせい?

天井を見上げる
勾配天井は梁が剥き出しになっている。
変わった形に梁が巡らされている天井を見ていると、普通の家でない事が良くわかる。


織り機の大きさや形など詳しくは解らないけれど、昔話を思い出すと何となくイメージが出来て来る。
不思議な木組みの部材がある。
あのアタリに縦糸を掛けたのかしら?
真直ぐ落ちてきた縦糸に横糸を貼るのはこのアタリ?
そんな事を思いつつ、天井を眺めていた。


トンカラリン・・・
そんな音が聞こえてきそうな不思議な空間にセッティングされた舞台。
客席として置かれている椅子との間には、隔たりは、ない。
目に見える境界はないが・・・でもやはり、境界は、ある。
ピンと貼られた目に見えない境界をぼんやりと見ていると時間が来た。

暗転。

紅色よりは紫っぽい、えんじ色の地色に花文様の着物を纏った英世さんが、椅子に佇んでいる。
1本目は藤沢周平さんの『夜が軋む』

宿に泊る客の一晩の世話をする女が、その日の客に身の上話をせがまれる所から始まる。
淋しい山間の小さな村で起こった不思議な事件。
閉鎖的な昔の村の形と、人間の生々しい欲望とが入り交じった話。
人為的に起こった事件なのか、物の怪(あるいは山の神)のなし得た事なのか。。。
ぎし・・・ぎし・・・と軋む家。降り積もる雪。事の真相は解らないまま、終わる。
背筋がゾ・・・とた。
人情物の作品しか知らなかった私には驚きの作品。

1人称で語られるこの話は、語るのが非常に難しかったと挨拶の時には英世さんがおっしゃっていた。
読見込めば読見込む程、言葉の表現の難しさにぶつかったとか。

本を自分で「読む」ことと、人に「読む」ことは全く違うようだ。
自分で本を読んだ時、どれだけ行間・文字間を読み込んでいるだろう。
いつもは黙読している。
ざっくり読み進めている物語の中の、「空間」を感じさせてくれるのだと思う。

1本目と2本目の間に、英世さんの生徒さんの語りの発表もあった。
3人の方が、それぞれこの日の為に選んだ作品を語った。『モーニング・コール』『おはよう』『あずきとぎ』
人によって、「語り」のタイプが違った。
英世さんの語りしか知らなかった私には、その語りの違いが面白く写った。

他の人の語りを聞くのも面白いな、と思った発表会だった。
新しいモノと出会うのは大切だ。
それを拾い上げるか置いておくかは別として・・・

2本目は坂口安吾さんの『桜の森の満開の下』
次までには時間があるので、ぶらぶら歩き出した。