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米国「下院歳入委員会貿易小委員会」公聴会に出たTPPの本音

2013年04月21日 20時10分47秒 | Weblog
米国「下院歳入委員会貿易小委員会」公聴会に出たTPPの本音

(神州の泉 )より


 普段は全く意識にも止めていないのだが、国立国会図書館には「調査及び立法考査局
調査企画課」という部署の「海外立法情報課」というものがあるらしい。

その「海外立法情報課」によれば、2011年12月14日、アメリカ「下院歳入委員会貿易小委員会」は、「TPP交渉の現状と将来及び同協定の米企業、労働者、農民への潜在的な利益」という公聴会を開催したが、その中で日本に関連した部分がpdfでネットに公開されていた。

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/pdf/02500214.pdf


 この中に、アメリカがTPPに組み込んだ思想性や、日本に対する真意が正直に出ていると思ったので感想を書いてみたい。

どうでもよいことなのだが、最近、ネット情報や新聞などを見ると、米国通商代表部(USTR)のマランティス代表代行という名前が頻繁に出てくるが、マランティス氏のフルネームを知ろうとして検索にかけても、まったく出てこなかった。


 今まで、日本で記事にされたUSTRの代表は、あの郵政民営化を裏で指令していたロバート・ブルース・ゼーリック(Robert Bruce Zoellick)氏のように、フルネームがすぐに調べられたが、今TPPで話題になっているマランティス氏は、ネットを調べても「マランティス代表代行」としか出ていないので、“なんだかなあ!”とすっきりしない日々が続いていた。


 ところが、数日前、冒頭に述べた国立国会図書館「海外立法情報課」のpdfを偶然開いてみたら、初めてマランティス氏のフルネームが書いてあったので胸のつっかえが下りた。

彼の名前はデメトリオス・マランティス(Demetrios Marantis)と言うらしい。

(さすがは国立国会図書館、真面目だ。どうでもよいが、すっきりした)


 与太話が長くなったが、このpdfにはTPPによって日本をどうしたいのかという、アメリカの本音が透けて見えている。


ケヴィン・ブレイデイ貿易小委員長は冒頭発言の中で次のように語っている。


「関税や輸入割当といった伝統的な障壁のみに焦点を当てるのではなく、非関税障壁、米国に不利な基準、差別的な政府調達規則、非科学的な衛生基準を撤廃し、知的財産権の十分な保護を求め、また外国の規制の実施を改善させ、効率的な供給網の重要性を認識し、中小企業の国際貿易における役割を増大させ、国有企業(stateowned enterprise)による市場の歪曲化の問題を取り上げ、高い水準の市場に基づく貿易規則の確立を目指す旨発言した。」


 ここでは名指しこそしていないが、明らかに対象を日本に絞っていて、TPPの本質がかなり出ているように思う。

非常に正直な本音が出ていると思ったのは、ブレイデイ氏が伝統的な障壁のみに焦点を当てないで、非関税障壁の突破こそが大きな焦点だと言っていることにある。

この中で、“非科学的な衛生基準を撤廃し”とあるが、常識的に考えれば、非科学的な衛生基準とは、安全が脅かされる程度に規制が緩和された状態をいう。


 ところが、ここでは、まったく逆な意味で、安全を考慮して厳しい水準が採用されていることを非科学的だと言っているのだ。

アメリカは日本の基準を厳しすぎて非科学的だと決めつけているのである。

開いた口がふさがらない。

これを聞いて思い当たるのが、牛肉のBSE対策に関わる基準である。

アメリカは日本の基準を不必要に厳格すぎると言って、基準をアメリカ並みに緩和しろと言い続けている。

彼岸・此岸では衛生観念がまったく違うのである。



 アメリカ人は日本人が神社詣でする時、手水で手を洗ったり、うがいしたりする慣習を決して理解できないだろう。

これは神州の泉の本心だが、“ケガレ”“ハレ”の観念のない人間が握った寿司は口にしたくないわけである。


各国の伝統文化は最大限尊重すべきであり、人類の文化遺産という側面からも残さなければならない。

ましてや、BSE牛やモンサント食品の問題は、生物学的な存続にかかわるから規制が厳しくて当然である。


 これは原爆の問題ともリンクする。

大東亜戦争終結直前、アメリカは敵国であるドイツは避けて、日本にのみ原爆を投下した。

これはドイツ人は白人というわれわれと同じ人間であるからむごいことはできないが、日本人は黄色い性悪サルであるから、殺虫剤の感覚で原爆を投下したのである。

時を隔て、この猿たちが衛生基準をどうのこうのいう権利はないという考えが深層にあると思う。


 次に「知的財産権の十分な保護」と言っているが、アメリカは異常なパテント保護国であり、四六時中訴訟沙汰ばかり起こしているSF的な国家である。

彼らは異常すぎるパテント寡占思想で人類全体の知的分野の発展を阻害している。

TPPでこの分野が日本や世界に大きな脅威をもたらすことは想像に難くない。


 次に「国有企業(stateowned enterprise)による市場の歪曲化の問題」と言っているが、これが日本郵政を指していることは間違いない。

ゴールドマンサックスが待ち構えているから、日本は可及的速やかに政府の郵政持ち株を全部市場に放出しろということである。

これについては、ジム・マクダーモット民主党筆頭委員が、日本郵政のような国有企業への「特別な便益」に言及しつつ、日本はその市場を外国の競争に対して閉ざすためのさまざまな方法を利用することで「悪名高い」と、日本を直接批判したが、これは「年次改革要望書」と同じことを言っているのである。


 保険業の多いコネチカット州民主党・ジョン・ラーソン議員は、日本郵政に対して、ある種の対等な競争条件(level playing field)の構築を強調していて、これは竹中平蔵氏が2005年当時、「米国生命保険協会は、昨年来、郵政民営化に関連して、完全なイコールフッティング(equal footing)が確立するまでは郵便保険会社は新商品の発売を認められるべきではない等の主張をする声明等を出している」と言及したことと同位相である。

事実、最近、麻生財務大臣が「JPかんぽ生命」の新商品はまかりならんと言ったのは、いまだに2004年当時のアメリカの意志が継続していることの証左であろう。


 詳しくはpdfをご覧になっていただければいいが、マランティスUSTR次席代表が「紛争処理メカニズム及び執行」について、チャールズ・ブスタニー共和党議員の質問に答えた次のような経緯が載っている。



「TPPの全条項は、非常に強力かつ確固とした執行可能な紛争解決条項に従う旨説明した。

さらに、同議員が知的財産権や著作権の侵害、模造品への刑事罰について詳細を尋ねたのに対し、米国は参加国に刑事罰の導入を求め、万が一罰則規定を持たない場合には、米国はそうした措置が確実に実施されるようなTPP紛争解決に頼ることになろうと応じた。」



 この中で、「知的財産権や著作権の侵害、模造品への刑事罰」を参加国に求めるとあるが、これが昨年日本で批准されたACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)であることは明らかである。

しかし、マランティス氏の見逃せないステートメントは、「万が一罰則規定を持たない場合には、米国はそうした措置が確実に実施されるようなTPP紛争解決に頼ることになろう」というくだりだ。


 もちろん、これはISDS条項を主体に考えているが、TPPは米国が最終的にすべての権限を行使して参加国を仕切るという意味以外にないのであって、ヤクザの恫喝宣言以外の何ものでもない。

このpdfには、米国の本音が相当強く出ているなと感じた次第である。

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