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タッシリ・ナジェール最終回/かってはライオンも食料だった。高原台地の下にも岩絵…。【日曜フォトの旅】

2013年02月19日 09時04分51秒 | Weblog

タッシリ・ナジェール最終回/かってはライオンも食料だった。高原台地の下にも岩絵…。【日曜フォトの旅】

(晴れのち曇り、時々パリ)より

 
サハラの生き証人『タッシリ・ナッジェール』を、三週に渡ってご紹介して来た。


月の世界の様な荒涼かつ時の止まった台地を再び下って、麓一帯をご紹介して今週で最後としようと思う。


下界は砂漠が連なる。


     
     後方に続く「タッシリ」台地の断崖


国立公園で自然博物館である「タッシリ」の麓の南端から東側に入り込む様に、タッシリの台地の東側にワジ(涸れ沢)の砂漠地帯がリビア南端の国境から、続いて下って来る。

『タドラールト渓谷』と呼ばれる。

渓谷と言っても、そこはサハラ。

谷川も早瀬もない。

リビア側の「アカクス台地」とアルジェリア側の「タッシリ・ナッジェール台地」の狭隘部の砂地である。

数年に一度の「大雨」が降ると、あっという間に水流が押し寄せて辺り一帯の地形を変え、やがて又太陽にじりじり焼かれてワジとなる。



     
     タドラールト渓谷の出口で、砂の中に孤立しているシンボルの山



そこを北側へと四駆で入って行くと、奇岩の岩窟有り、大砂丘あり、そして岩絵もある。

この「タドラールト渓谷」の岩絵は、近年になって発見され始めている。



     
     渓谷の南端辺りを入った所から南向き(ニジェール方向)の光景


最初の頃は、だだっ広く白っちゃけた礫漠の用な光景が続くのだが、その内眼を奪われる様な光景に変わって行く。


砂漠の砂が、とにかく美しい。



     
     奇岩と砂漠


     
     『亀岩』(または「ハリネズミ岩」)



この場所に、画期的な岩面画が見つかっている。

『ライオン狩り』

つまり、いにしえの先住民達が、狩りの獲物としてアンテロープ(羚羊)やその他の草食動物だけを追い回していた訳ではなく、なんと「ライオン」までが狩りの対象であった事が、確認される岩絵だったのだ。

サイトは、回廊状の「砂の渓谷」の縁取りの部分の岩だなにある。


     
     「ライオン狩り」の岩絵の有る岩だな



四駆を降りて、二十メートルほど登った壁龕に、それは有った。


     
     集団でライオンを狩って居る光景


全体の右端に、抵抗するライオン。

その前面には、倒されて死んでいる狩人が数人。

左上の方には、這々の体で逃げている集団の後ろ姿。

果敢に闘う狩人の投げる槍が、ライオンの周りに飛んでくる。


     
     「ライオン狩り」部分



つまり、ご先祖達は、百十の王ライオンまで狩りの対象にしていた訳だ。

果たして、美味しいのだろうか…。



走りながら、時折止まるとその他にも岩絵がある。

やはり一番多いのは「牛」である。

家畜として飼育すれば、凶暴なライオンと命を賭して闘う危険を侵さずとも、タップリ食事にありつけると言う物だ。


     
     サハラの岩絵の牛は殆ど「長角牛」である。


この「長角牛」は、現在でもアフリカ全土で広く飼われている。


     
     長角牛の実物(カメルーンにて)


ここ「タッシリ」の彩色画に描かれたこの長角牛は、側面から描かれているが、角は正面から見た様に広がっている事が普通である。

ピカソの絵の様に。

ところが、このタドラールト辺りに見つかる牛の岩絵は、角も「プロフィール」に近い。

やはり、時代が少し遅いのか、棲んでいた人種が違ったのだろう。


あとは、やはり様々な動物達が描かれているが、タッシリの「上」と違って、彩色画だけではなく線刻画も半々に混じっている。

これも、時代が下って来ているからだろう。



     
     初期ティファナグ文字


一般的に言って、彩色画の方が遥かにデッサンも優れ、表現力は秀でている。

線刻画は、かなり乱雑な物が多い様だ。



そして、とにかく「岩窟」が素晴らしい。


     
     岩窟


     
     内部


岩の壁の割れ目から水が侵入し、水流は徐々に割れ目を拡大し、広がり、水の流れを多く激しくなって行くと、更に壁面が抉れ削られて、回廊の様になって行く。


その回廊が更に広がり、壁面が浸食されて崩れ、岩のタケノコの様な光景に変わって行ったのだ。


そして、その崩れた岩が砕け、更に細かく風化し、遂には砂になる。

悠久の時の作業である。



     
     濃い黄土色の砂漠


     
     殆ど赤に近い砂漠


タッシリの拠点「ジャネット」の町から二泊目、一番リビアに近づいた辺りに大砂丘が有る。

『ティン・メルズーガ』大砂丘である。


     
     ティン・メルズーガ大砂丘


     
     徐々に近づいて行く



     
     標高差は三百メートルは雄に有る大砂丘



この麓で野営する。

明朝は、砂丘に登る余裕が有れば是非「ご来光」を拝みたい。


朝日は写真の手持ちが無いが(起きられなかった…)、途中での幻想的な光の写真を一葉。


     
     光と岩山との幻想的な姿



あとは、この驚異の世界の主人公達を、写真で紹介して行こう。




《岩絵に描かれた住人達》


     
     キリン(線刻画)



     
     キリン(彩色画)



     
     アリクイ



     
     犀



     
     ゾウ


     
     ウマ


     
     サーモン



     
     ナマズ



     
     ライオンの足跡



     
     ラクダの足跡



     
     フルベ人



     
     キリンと狩人




《現代の住人達》


     
     移動中のトアレグ人のノマッド(遊牧民)



     
     臨時に定住中のノマッドの小屋



     
     旅人



     
     先住民の残した調理器具



     
     定住したトウアレグの盛装した男



     
     主人は近くに見えないが、ノマッドの追うラクダの群れ



     
     おそらく逃げ出して野生化したラクダ



     
     放牧されている子ラクダは、逃げ出さない様に脚を縛られている



近年イナゴが大量発生し、中央アフリカから北へと草木を喰い尽くしながら北上して来た。

お陰で、アフリカ大陸の北半分の緑地の減少が、急激に勧められてしまった。


     
     砂漠の中の貴重な植物の枝の中にもイナゴが



岩棚のひさしから、トカゲが覗いていた。


     
     トカゲ


砂漠には欠かせないのが、フン転がし。


     
     フン転がし



     
     鳥の足跡


良く蛇の這った後も見られる。


雄大な砂の海の中にも、生命が生息している。

実に逞しく。



     
     一見命を拒んでいる様に見える砂漠だが…。


こんな過酷に見える環境でも、生命は育まれ、太陽がそれを育てる。


中には、現代の都会人を怖がらせる様な奴も。


     
     現地のトウアレグの人によれば<無害>だそうです…




陽は昇る。

都会にも、田舎にも、人の住む所にも人の住まない所にも。


そして、陽は沈む。

一日が終わる。


     
     夕日が遠くの岩棚に最後の明かりを当てている



砂漠のまっただ中で「トウアレグ」の人々が作ってくれる夕食は、一日の最高の楽しみである。



     
     手作りのクスクス



後は、朝までぐっすり眠るだけ。


     
     筆者のテント



これで、『タッシリ・ナッジェール』の旅は終わりにします。

又どこかを旅する日まで、おやすみなさい。

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