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小さな腫瘍に対する腎臓癌全摘手術は再評価されるべき

2006-11-16 | 腎臓癌・膀胱癌
腎臓癌の場合、小さな腫瘍1つに対する腎臓全摘出手術は、これまで40年間、腎臓癌治療のゴールドスタンダードであった。しかし、今回、メモリアルスローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)の研究者らの後ろ向き研究の結果、この施術は再評価されるべきであるとThe Lancet Oncology2006年9月号において報告された。
この研究で、小さな腫瘍1つ摘出する腎臓温存術(部分切除術)を受けた患者は、慢性腎臓疾患を発症する割合が、腎臓全摘患者より3分の1低くなることがわかった。また、部分切除の患者では80%、全摘患者では35%が3年間腎臓疾患を発症しなかった。米国のMSKCCのような3次医療センターでは腎部分切除は30~65%、最新のUrology誌の報告では、1998年~2002年に全米で行われた腎臓全摘出術は92.5%に及ぶとされている。イギリスでも2002年に96%と腎部分切除は4%のみしか行われていない。MSKCCにおいては約70%が部分切除を行っている。
主要な施設でのエビデンス調査によると、小さな複数の腫瘍では、局所コントロール率、生存率ともに部分切除術と全摘術は同等であった。慢性腎臓疾患は、腎機能低下をもたらし、腎不全を引き起こすこともある。合併症は貧血、高血圧、栄養不良、末梢神経障害で、またQOL低下、心臓病や死亡さえ起こりうる。しかも、腎臓癌の約70%は極めて小さいサイズ(4cm未満)のときに発見される。
われわれの研究は、小さな腫瘍に対して腎臓の全摘出術を行うことは腎機能および慢性腎臓疾患のリスク上昇に大きく影響することを初めてはっきりと証明したものである。
スローンケタリング記念がんセンター原文記事


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