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卵巣癌の腹腔内投与推奨(NCI)の賛否

2007-01-11 | 卵巣癌、子宮癌
2006年10月に行われた米国臨床薬学会総会で、卵巣癌の化学療法について、腹腔内投与(IP)Vs静注(VP)(他、体重による投与量決定Vs固定投与量、カルボプラチンの最適投与量)についてディスカッションがなされた。この問題は、非常に意見の分かれる議論である。
卵巣癌の腹腔内投与は全生存期間を16ヶ月以上延長するとして、NCIによって特例のClinical Announcementが発行された。(Tips2005年記事)外科的腫瘍切除したFIGOステージ3卵巣癌にIPシスプラチン+IVまたはIPタキサン療法の推奨は、腹腔内への薬剤送達や頒布など理論的には優れているが、その真の価値は確かでない。IP投与はその聴覚への副作用はIVに比較して少ないが、消化器への影響、痛み、発熱などはIVと比べ、頻発する。
Alberts氏らの試験では、2cm以下の残存病変をもつステージ3の546人の患者において シスプラチンの(100 mg/m2)IP、IV投与を比較した。生存に貢献したのはIPシスプラチンであったにもかかわらず、パクリタキセルの報告が広まったため、そちらがたちまち標準の治療として受け入れられてしまった。また、他の試験でもパクリタキセルIP、IVの用量や種類が異なったり、重要であるはずの残存病変の定義がまちまちだった。Markmanらの試験では、無進行生存期間はIP投与群で優れていたが、全生存期間には差がなかった。

NCIの決定を左右した試験(NCI臨床試験結果日本語訳2006/11)では、IP投与群では消化管、血液、神経系、代謝関連の毒性が多く、実際には、6コースの治療を完了できたのは半分にも満たなかったのだ。この事実にもかかわらず、生存期間の中央値は16ヶ月も延びた。しかも、試験中IP投与群におけるQOLは著しく低かったが、1年後の時点では、両群で差はなかった。
この場合、患者の選択が決定的である。また、IP投与する場合には、医療者は厳重なその後のケアが必要で、患者にとっても大変な苦痛である。また、予後にいい結果をもたらしたのは果たして投与法なのか、投与量なのか、または化学療法のスケジュールなのか、そしてIP投与の副作用を減らす方法はあるのかどうかなど、未解決の疑問が多い。Dr. Wong は、IP投与の忍容性を向上させるいくつかのヒントを発表している。(以下略)
ソース:Medscape


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