HIF-1（低酸素誘導因子)阻害

HIF-1（低酸素誘導因子)とは、血管新生阻害によって引き起こす腫瘍周辺の低酸素環境において腫瘍細胞が生き延びるのを可能にする蛋白質であることから、『抗血管新生の泣き所（アキレス腱）』と呼ばれる。　
Duke Univ.放射線科原文2005/8
HIF-1はVEGF、bFGF他40以上の血管新生促進因子の産生スイッチを入れる『マスタースイッチ』である。HIF-1をブロックすることにより、血管新生を促進するそれらの因子をブロックすることができる。HIF-1抑制は、理論的にはVEGFなどの1種類の蛋白質をターゲットにしている現行のアプローチよりさらに強力な血管の生存阻害療法となるはずである。
デューク大では放射線治療直後にHIF-1阻害剤を用いて血管新生をブロックすると生き残った癌細胞を増殖させない事を発見した。反対に、HIF-1はアポトーシスを促進するので放射線の前にHIF-1をブロックすると、腫瘍細胞はアポトーシスを起こしにくくなり、放射線にも抵抗性となる。また、放射線治療自体がHIF-1値を上げるので、そこでブロックすることは最も理にかなっている。
現在HIF-1はさまざまな癌種で注目されているが、癌における作用はあまりに多様であり、70以上の遺伝子を制御している。HIF-1は時に癌を促進し、時に阻害する効果を持つ。どのタイミングで使用するかが重要である。

CCI-779の作用機序の解明。UCLA原文
UCLAの研究では、腎臓癌患者の50%～70%にVHL（Von Hippel Lindau)腫瘍抑制遺伝子が欠損しており、それらの患者にｍTOR阻害剤CCI-779が奏効すると見られる。VHLはHIF（低酸素誘導因子)を制御しており、VHL遺伝子が欠損した患者の腫瘍細胞はHIFが過剰になる。そのため癌細胞増殖を助長する。CCI-779は、腫瘍を殺傷するのでなく、増殖を止めることから、他の療法と組み合わせて最も効果を表すであろう。
CCI-779、　No158　CCI-779

参考：「乳業最前線」Hypoxia(英語）、Tips腫瘍の低酸素環境