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心理的介入が乳癌の生存期間を延長

2008-12-06 | 乳癌
米国オハイオ州立大学の研究者らは、治療期間中に心理的介入を受ける乳癌患者において、全生存期間が改善するのみならず、癌再発リスクが低減すると11月Cancer誌で報告した。

癌の診断を受けたことによるストレスは、身体的な衰弱を引き起こす可能性がある。患者は死に直面する恐怖と向き合わなくてはならないばかりか、治療費など金銭的な問題、副作用を乗り越えるという課題、治療と仕事の両立や家族とのバランスなど、その他たくさんのストレス因子に対応していかなくてはならない。(略)癌の病因にストレスが関与しているのかは十分に理解されていない。(略)これまでの研究で、診断後5年間に極度にストレスの多い生活を1回以上経験した乳癌女性は再発リスクが低いことが認められた。(略)

しかしながら、慢性ストレスは免疫系を抑制することでも知られており、一部の研究者はストレスの延長が癌の進行や転帰にマイナスの影響を与えうると推測した。オハイオ州立大学の研究者らは、ストレス対処に有用な心理的介入を受けた乳癌患者を対象に、こういったサポートを受けなかった患者と比べ、生存期間の優位な延長が認められるか否か判定するための試験を実施した。

本試験には、局所乳癌の外科的治療を受けたことのある女性227人が含まれた。術後補助療法を開始する前に心理診断および行動評価を行った。患者の約半数は心理的介入を受けるよう割り当てられたのに対し、残る半数にはそれ以降の評価は行なわなかった。心理的介入は、心理士2名の主導のもと少人数群で週1セッションを4か月間行う強化期間と、それに続けて維持管理期間として月1セッションを8か月間行なうこととした。患者は、12か月間にわたって計26セッション(39時間治療)に参加した。このセッションには、ストレスの軽減、気分の好転、保健行動の見直しなどを試みる方法や、癌の治療と処置を遵守し続けるための方法が含まれた。

11年間の追跡調査後、女性62人で癌再発が認められ(介入群29人、評価のみ群33人)、女性54人で死亡が認められた(介入群24人、評価のみ群30人)。介入群のほうが癌再発までの平均期間が長く(介入群約3年、評価のみ群約2年)、平均生存期間も長かった(介入群約6年、評価のみ群約5年)。この結果から、心理的介入を受けた女性は再発リスクおよび乳癌死亡リスクが有意に低いことが示された。研究者らは、適切な心理的介入を行うことで乳癌女性の生存期間が改善する見込みがあると結論づけた。
『海外癌医療情報リファレンス』記事

    
オハイオ州立大学原文記事によると、試験参加者はステージ2、3の患者で、精神的苦痛が大きく改善されて日常の行動が変化したことが決定的な理由であるとみられるという。
作用機序としては、心理的介入によってストレスが軽減されることで免疫機能が高まったこと、心理的苦痛をもっとも改善した患者では漸進的筋弛緩が頻繁に起こっていたことが述べられている。また、介入群の患者は、ストレスが病状の安定によくないことであるとよく理解してもらっていた。


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