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ドービニーの庭の黒猫…「ゴッホの遺言」から

2011-04-05 | 
「ゴッホの遺言」が完全版として文庫で出版されていた。
読まなければならない本は山のようにあるけれど、やはり興味のあるタイトルは手に取りやすい。

「ゴッホの遺言」は2000年の日本推理作家協会受賞作である。

完全版と文庫化された理由は、著者が描かれていないと言及していた「ドービニーの庭」の「黒猫」の存在が、研究者の調査で、誰かの手によって塗りつぶされていたことが証明されたからだ。

見ていただくと分かりやすいのだが、スイスの美術館にある作品①は実際にゴッホが庭を目の前に描いた作品になる。
(ちなみにドービニーはパリ生まれの風景画家)
作品①↓




これを自室内で複製した作品②が現在はひろしま美術館の展示公開されている。
作品②↓



ひろしま(ブログ記事)で何よりも見たかったこの作品を実際目の前にして感じたことは…「穏やか」「優しさ」だった。
淡い色合いでタッチも優しく、見ている人間を癒してくれるような作品。
広い館内には私しかおらず、至福の一時だった。

残念ながら作品①はまだ見たことがないのでなんとも言えないのだが、タッチも色彩も荒々しく感じられる。



画家でもある小林英樹さんは本当にゴッホを愛しているんだなぁ~と思う。
この著書はある「スケッチ」が贋作であることを証明しながら、なぜ、ゴッホが自殺に追い込まれていったのか…解き明かしてくれている。

正直、絵についてはまったく知識のない私。
技法や時代背景、また書簡などから証明される数々の点を読んでいると、思わず納得させれてしまうほどだった。

小林さん曰く、

「ドービニーの庭」にいる黒猫はゴッホ自身で、奥にいる女性は義妹と幼い甥。
作品①は弟夫婦との意見の相違で憤慨している時に描かれたもの。
作品②は絶筆とも言われているが、自殺する決意をし「ドービニーの庭」を描き直したもので、弟夫婦や甥に負担を掛け続けた自分の存在を消すことで、これからの生活を明るく楽しく穏やかに過ごして欲しいという願いが込められれいる。

そんな解釈であった。

そして、著書の中に出てくる弟テオとの書簡のやり取りから、生まれて初めて絵画「カラスの群れ飛ぶ麦畑」を観て泣いたことを思い出した。


つづく。