(第17話)夏が近付くと思い出す事がある。その昔、息子がまだ幼稚園児だった年の夏に高原で沢山のトンボやチョウ、カミキリなどを採って意気揚々と帰宅した。夏休み作品展に昆虫採集の標本を作る事になった。「ママがやってあげるからネ」と偉そうに一応、防腐剤を注射して、菓子の空き箱に虫ピンで止めて並べはじめた。上手く止まらないチョウチョがあったので、金槌をもってきて虫ピンの頭を叩いた瞬間・・金槌がツルリと滑ってチョウチョを殴りつけてしまったのである。息子の顔を見たら今にも泣き出しそう・・。勿論チョウチョはバラバラに・・。「大丈夫、大丈夫、ママがちゃんとしてあげるから・・」とは言ったものの・・。仕方なく裏側からセロテープでベタベタと。なんとか形だけはそれらしくなったのだか・・、後日、展覧会場に行って見たらやっぱりバラバラだったのである。どうして虫ピンの頭は丸いのかな~?あれが平らなら事件は興らなかったのに・・。あの時、母親を信じてガッカリした息子の姿が時折思い出されるのである。