(第122話)
台風の被害といえば、いつも植木鉢が転がる程度で済んでいた。
ところが昨日の台風9号では、朝方、風の音に目を覚まし、一階の猫達が気になって様子を見に行った。
猫達は寝ていたのだが、雨戸を少し開けて・・自分の目を疑った。
なんと、なんと、我が家の庭の大黒柱である大きな梅の木が幹の途中から折れて道路に向かって倒れているのであった。
27年前にここに転居した折に狭い庭を造園したのだが、その時既にこの梅は太い幹と丹精に育てられた容姿は堂々としたものだった。
早春には立派な花を咲かせ、その後ギッシリと梅の実をつけて、夏には生い茂る葉で暑さを和らげてくれていたのであった。
この木が倒れる日のある事など全く予期せぬ出来事である。
ショックのあまりにしばしウロたえたが、連絡を聞いて千葉県八日市場から駆けつけてきた植木屋さんも「これが倒れるとは・・風向きから言って台風の通り道になってしまったんだな・・」と残念そう。
親の代から手塩にかけて育て、毎年クレエーンで手入れをしてきた植木屋さん夫妻と私の悲しみは大きい。
7割はダメになりながら下の方の一塊は助かって太い幹(95cm)は残っている。
(写真の上でクリックすると大きな写真が見られます)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/87/e71e500d7bb9ab90d75639d6b65870df.jpg)
が
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/5e/3f1d6cf3d00faeac13a8fdd69b7e8d2d.jpg)
なった訳
もう、あの雄姿は見られない・・とガックリしている私に植木屋さんは
「なってしまったものは仕方が無い。お隣の車を潰さなくて良かったよ。マキの生垣にも、キャラの木にも全く被害がないのは不思議なくらいだ。一番いい方向に倒れているよ」と慰めてくれた。
そして「残っている枝を右の方に広げよう」と枝振りをチョキチョキ変え始めた。
腕を見込んで彼を選ぶまでに時間のかかった私の目に狂いのない人である。
台風一過の渋滞している高速道路を跳んで来てくれて手際よく処置して貰った事に感謝しながら、最後に手数料を払おうとしたら・・
「いらないよ。今日は遊びに来たと思ってる。たまにはそんな日があってもいいさ」と、どうしても受け取らない。
外見は目立たないが、美しさに感動する目と心を持った根っからの職人さんだ。
悲しんでいる被害者を仕事の対象から外した人柄に更に私は感動した。
2年も経てば新しい芽や枝が出て、この木が生きている事を感じるであろう。
家屋の倒壊や犠牲者に比べたら小さな事だったに違いない。
人生は色々あるものだ。
毎年、この木に目白やウグイスまで来ていたのに・・みんなどうするのかな~?
小さな木では我が家には猫が沢山いるんだから・・。
笑える気分ではないが、植木屋さんのお蔭で沈んでいた心が軽くなった。