現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

池井戸潤「下町ロケット2 ガウディ計画」

2021-06-26 12:03:45 | 参考文献

 東京の大田区の町工場(着実に成長しているので、もう中小企業というよりは中堅企業になっています)を舞台にした人気シリーズの二作目で、テレビドラマ(シリーズの後半)にもなりました。
 ここでもモノづくりや働くことの意義を、エンターテインメントの面白さでくるんで、うまくまとめ上げています。
 良い側と悪い側が最初からはっきりしていて、良い側が様々な困難に直面するのはお約束どおりなのですが、最後には水戸黄門ばりの勧善懲悪でめでたしめでたしの大団円を迎えます。
 ただし、今回は悪い側(一部の人だけ)にもラストで救いの手を差し伸べているのですが、あまりに安易で筆が滑った感じです。

下町ロケット2 ガウディ計画
クリエーター情報なし
小学館
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池井戸潤「下町ロケット」

2021-06-26 12:02:30 | 参考文献

 2011年上半期の直木賞受賞作です。
 2015年にドラマ化されて大ヒットしました。
 大企業の横暴に対して、下町の中小企業がプライドをかけて戦う様子が書かれているので、読者には共感が得安い構図になっています。
 偶然の多用、デフォルメされた登場人物、ご都合主義のストーリ展開、大団円的なハッピーエンドなど、典型的なエンターテインメントの手法で書かれているのですが、主役の研究者を挫折した経験をもつ中小企業の社長の人物像がしっかり描かれているので、最後まで破綻なく読めます。
 しかも、水戸黄門的な勧善懲悪のストーリーなので、読むとスカッとしますし、ドラマ化にも向いていると思われます。
 ここに描かれたロケットエンジンのバルブシステムの技術や重要性がどのくらい正しい物なのかは、門外漢の私にはわかりませんが、少なくとも一般読者にはリアリティを持って読めると思います。
 児童文学の世界でも、かつてはこういった専門的な内容を含んだ作品はありましたが(砂田弘の「さらばハイウェイ」など)、お手軽なエンターテインメント作品全盛の現在では絶えて久しいです。

下町ロケット (小学館文庫)
クリエーター情報なし
小学館
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