とめどもないことをつらつらと

日々の雑感などを書いて行こうと思います。
草稿に近く、人に読まれる事を前提としていません。
引用OKす。

ジブリ・タバコ論争

2013-08-19 00:43:58 | 映像作品
スタジオ・ジブリがアニメーション映画「風立ちぬ」を2013年7月20日に公開した。が、これが少々面倒なことになっている。
この件についてはきちんと追って行きたいので、各所の文章を引用している。
結論は一番下に書くので、わずらわしい方は一番下だけ読んで頂きたい。
***********

日本禁煙学会は何がしたいのか……
http://blogos.com/article/68298/
より引用。
>その中のタバコの描写に問題があるとして、NPO法人日本禁煙学会が要望書を送ったことが話題になっている。

映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて(要望と見解)
http://www.nosmoke55.jp/action/1308kazetatinu.html
映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて(要望)
http://www.nosmoke55.jp/action/1308kazetatinu.pdf

少々長いが引用する。
<映画「風立ちぬ」なかでのタバコの描写について苦言があります。現在、我が国を含む177か国以上が批准している「タバコ規制枠組み条約」の13条であらゆるメディアによるタバコ広告・宣伝を禁止しています。この条項を順守すると、この作品は条約違反ということになります。(別冊をご参照ください)
教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面など、数え上げれば枚挙にいとまがありません。特に、肺結核で伏している妻の手を握りながらの喫煙描写は問題です。夫婦間の、それも特に妻の心理を描写する目的があるとはいえ、なぜこの場面でタバコが使われなくてはならなかったのでしょうか。他の方法でも十分表現できたはずです。
また、学生が「タバコくれ」と友人にタバコをもらう場面などは未成年者の喫煙を助長し、国内法の「未成年者喫煙禁止法」にも抵触するおそれがあります。事実、公開中のこの映画には小学生も含む多くの子どもたちが映画館に足を運んでいます。過去の出来事とはいえ、さまざまな場面での喫煙シーンがこども達に与える影響は無視できません。誰もが知っているような有名企業である貴社が法律や条約を無視することはいかがなものでしょうか。企業の社会的責任がいろいろな場面で取りざたされている昨今、貴社におきましてもぜひ法令遵守をした映画制作をお願いいたします。なお、このお願いは貴社を誹謗中傷する目的は一切なく、貴社がますます繁栄し今後とも映画ファンが喜ぶ作品の制作に関わられることを心から希望しております。
どうぞその旨をご理解いただき、映画制作にあたってはタバコの扱いについて、特段の留意をされますことを心より要望いたします。>

さて、この「「タバコ規制枠組み条約」の13条」というのはどういう文章であろうか。
どこのサイトも詳細を載せていないので調べてみた。
(尚、上記のPDF要望書には参照すべき別冊へのガイドが見当たりません。)

正確には、「タバコの規制に関する世界保健機関枠組条約」であり、日本国は2004年3月9日に署名、6月8日に批准。条約は2005年2月27日発効とのことである。

そしていきなり13条と言われても一般には分かりにくい。この条約を構成する第三部の中での第十三条ということになる。

FTCT「タバコ規制枠組み条約」
http://uen2003ehime.com/page014.html

こちらも長いが引用する。

あらゆるタバコの広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を行う。この包括的な禁止には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を含める。この点に関し、締約国は、この条約が自国について効力を生じた後五年以内に、適当な立法上、執行上、行政上又は他の措置をとり、及び第二十一条の規定に従って報告する。
3 自国の憲法又は憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国は、あらゆるタバコの広告、販売促進及び後援に制限を課する。この制限には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える効果を有する広告、販売促進及び後援の制限又は包括的な禁止を含める。この点に関し、締約国は、適当な立法上、執行上、行政上又は他の適当な措置をとり、及び第二十一条の規定に従って報告する。
4 締約国は、憲法又は憲法上の原則に従い、少なくとも次のことを行う。
(a)虚偽の、誤認させる若しくは詐欺的な手段又はタバコ製品の特性、健康への影響、危険若しくは排出物について誤った印象を生ずるおそれのある手段を用いることによってタバコ製品の販売を促進するあらゆる形態のタバコの広告、販売促進及び後援を禁止すること。
(b)あらゆるタバコの広告並びに適当な場合にはタバコの販売促進及び後援に当たり健康に関する警告若しくは情報又は他の適当な警告若しくは情報を付することを要求すること。
(c)公衆によるタバコ製品の購入を奨励する直接又は間接の奨励措置の利用を制限すること
(d)包括的な禁止を行っていない場合には、まだ禁止されていない広告、販売促進及び後援へのタバコ産業による支出について関連する政府当局に対し開示することを要求すること。当該政府当局は、国内法に従い、当該支出の額を公衆に開示すること及び第二十一条の規定に従い締約国会議に開示することを決定することができる。
(e)ラジオ、テレビジョン、印刷媒体及び適当な場合には他の媒体(例えば、インターネット)におけるタバコの広告、販売促進及び後援について、五年以内に、包括的な禁止を行い、又は自国の憲法若しくは憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国の場合には、制限すること。
(f)国際的な催し、活動又はそれらの参加者に対するタバコの後援を禁止し、又は自国の憲法若しくは憲法上の原則のために禁止する状況にない締約国の場合には、制限すること。
5 締約国は、4に規定する義務を超える措置を実施することが奨励される。
6 締約国は、国境を越えて行われる広告の廃止を促進するために必要な技術及び他の手段の開発について協力する。
7 特定の形態のタバコの広告、販売促進及び後援を禁止している締約国は、自国の国内法に従い、自国の領域に入る当該形態の国境を越えるタバコの広告、販売促進及び後援を禁止する主権的権利並びに自国の領域における国内の広告、販売促進及び後援について適用する制裁と同等の制裁を科する主権的権利を有する。この7の規定は、いかなる制裁をも科することができることを認め又は承認するものではない。
8 締約国は、国境を越えて行われるタバコの広告、販売促進及び後援の包括的な禁止のために国際的な協力を必要とする適当な措置を定める議定書の作成について検討する。>

**********
さて、ここから分かるのは、この条文は簡単に言うと「広告、販売促進及び後援の包括的な禁止」の意図を主軸とし、抜け穴が無いように肉付けされている形である。

ここから判断されるのは、「風立ちぬ」がタバコの「広告、販売促進及び後援」であるかどうかだ。

まず広告に該当するか。
タバコ業界からのスポンサーとしての金銭授受があれば広告となる。
無ければ広告ではない。
販売促進を意図したかどうか。これについてはスタジオ・ジブリからの回答を待つべきである。
問題なのは後援であるか否かだ。
作品の性質から後援である部分が捨てきれない。
が、日本禁煙学会では、「タバコ広告・宣伝」の禁止の条約違反は指摘していても、後援については指摘していない。

これには、それとなく他方面からの根回しも必要である。
日本禁煙学会からのコメントは下記の通りである。
<現在、我が国を含む177か国以上が批准している「タバコ規制枠組み条約」の13条であらゆるメディアによるタバコ広告・宣伝を禁止しています。この条項を順守すると、この作品は条約違反ということになります。>
というPDFでの要望書は条約違反としているが、その条約そのものでは、「締約国は、自国の憲法又は憲法上の原則に従い」とあるので、日本国内の憲法に従いこれを決めていくことになる。
まず、金銭授受も無い、後援の意図もないとなれば条約違反ではない。
これを恣意的に適用したとする。日本でこの描写が許されるかどうかについては日本の憲法で決める。これには「日本国憲法第21条」での表現の自由が適用される。

ここで日本禁煙学会のコメントを再び引用してみよう。
<今回の日本禁煙学会の要請を、表現の自由の侵害だと批判する向きがありますが、それはまとはずれです。「表現の自由の侵害」とは、強制権力を持った政府が市民の言論を抑圧することを指すものであり、強制権力のないNPO法人である日本禁煙学会が行う批判活動は、正当な市民的権利の行使に過ぎず、まったく表現の自由の侵害に当りません。 日本禁煙学会が、「風立ちぬ」の表現を批判することも、日本禁煙学会の「表現の自由」です。それは、このアニメの制作者の表現の自由を侵害していることにはなりません。論評や意見表明を行うことは、「対抗言論の原則」に基づいた「表現の自由」社会の現れなのです。>
<「風立ちぬ」は、製作者の意図したものであるにせよないにせよ、結果的に「プロダクト・プレイスメント」の効果をもたらしています。>

「製作者の意図よりも、作品の社会的影響性を優先せよ」「強制ではない」、ということであるが、日本禁煙学会の言うことも分からなくもない。日本禁煙学会が手をくわえて見ていたのであれば日本禁煙学会の存在意義が無い。
笑ってしまうのが、日本禁煙学会の皆様方がこの映画をよく見ていることで、ジブリファンの人がいるのではないかと思ってしまうくらいだが、それではその心情を少し察すると、実のところ「日本禁煙学会の立場としては、この表現手法は看過できないのでこうした指摘を言わざるを得ないが、製作者の立場としての反論をして言論のバランスを取って欲しい」というところが本音なのではないだろうか、と邪推する。

<「対抗言論の原則」に基づいた「表現の自由」社会の現れなのです。>
という部分には同意なので、これに対して更に対抗言論をしてみましょう。

それではどうすべきか。
私は以下のように考える。

スタジオ・ジブリは以下のように次のコメントを公式見解として発表することである。
「当スタジオ・ジブリで平成25年7月20日に公開したアニメーション映画「風立ちぬ」での作中喫煙シーンについて、日本禁煙学会より「タバコ規制枠組み条約」の13条に条約違反しているという旨のご指摘がございました。これにつきまして下記に回答致します。
当スタジオ・ジブリでの「風立ちぬ」では、「タバコ規制枠組み条約」の13条、その論旨である、タバコに関する広告、販売促進及び後援を意図するものでは全くございません。
喫煙シーンが現代一般と比較して多くなっているという指摘はその通りであると考えておりますが、飽くまで当時の日本の背景におけるテーマ性の追求とその描写をした上での表現ということになりますが、その当時における喫煙が多いという時代背景を描写することを通しての「タバコに関する広告、販売促進及び後援」を意図するものでは決してありません。
尚且つ過去の時代背景があって現代の動きに繋がるということを考えれば、当作品では過去を描写することにより、現代という時代を考察をする上での重要な考察材料となりうるのではないでしょうか。当スタジオ・ジブリでの製作スタンスも、「タバコ規制枠組み条約」についても、共に未来を作っていくという方向に合い間違いないと考えております。
 繰り返しとなりますが、我々としましては作品を通して、過去の描写による現代における喫煙の助長をしている意図は全くございません。このことにつきまして、深くご理解戴きたく存じ上げます。」

そして次のアクションで手打ちである。
DVD販売の際には、作品再生前に「この映画につきましては、現代一般における喫煙よりも多くの喫煙シーンが描写されておりますが、これらの描写は喫煙の助長をするものでは全くございません。未成年児童やその他一般におけるご鑑賞の際に喫煙シーンの多寡が懸念される場合、保護者様やその他の方々による事前のご説明をお願い申し上げます。」という趣旨のテロップを差し込む。

表現手法に外部からイチャモンをつけるのは、相撲をしていたら「おしりが見える下品なスポーツはやめなさい、少なくともスパッツを履いては」と助言するような無粋(ぶすい)な人々である。
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