春ちゃんは、みんなの誕生日に何かをプレゼントしてくれる。すごくほしかったものとか、高価なものでなくても、うれしいものだ。空の希望を聞いておいて、パステルのなめらかプリンを昨夜学校から帰ってきたときにプレゼントしていた。入院中に、お母さんが買って来てくれておいしかったからリクエストしたそうだ。「同じ味がする、やっぱりうまい」と喜んですぐに食べてしまった。すぐ近くで売っているのだから、いつでも買えばよさそうなものだけど、こういうときでないと思い出さないものなのだろう。入院中ぜんぜん食べれないときは、プリンやゼリーやヨーグルトがいつも冷蔵庫にそろっていた。そのうちのひとつで、いつもはなくてめずらしかったので印象に残っていたみたいだ。
慧くんのコンサートのDVDをコピーしてバックアップした。もちろんついでに見ていた。涙腺がかたくなって泣かずに見れたのは、空とふたりで見ていたからであって、ひとりで見ているとやはり涙があふれてくる。お母さんのメッセージ、お父さんの実際のしゃべっている映像を見ていると、親としての気持ちがわかってくるとたまらない。このDVDで慧くんの声を聞いてしまったし、映像は強く心に残ってしまった。この日に空が行けなかったのは、抗がん剤内服の最後のときだったことで、はっきり後々まで記憶に残るだろう。うまく言葉にできないが、「慧くん、空と友だちになってくれてありがとう」と、やはりこれだけは言いたい。