太陽くんはグレコにかけるしかない状況となっていた。この県予選は各クラス上位2人が東海大会・グレコローマンスタイル全国大会へ出場権があり、3位は考えられないとはいえ、もしもの場合はここで終わってしまうことになる。先週はもしもの敗戦だった。先週の96kg級から下げた選手が2人もいて、自分の84kg級が多くなり、いつものように弱気なことばかり考えているようだった。多くの種目で県大会が終わり、高3という同じ歳の大半はスポーツにかけた夢をあきらめている時期なのだ。グレコだけでも全国大会へ行けるなら、夢をつなげるなら幸せなことだ。
送っていってから試合開始まで時間がありすぎるので、一宮の友人と喫茶店でモーニングを食べた。前日のテレビの「ぐっさん家」で、一宮はモーニング発祥の地というのをやっていた。友人は警察官なので、先週負けたしレスリングで大学が難しいようなら高卒で警察官という道について聞いた。高卒は募集人数に満たないそうだが、試験を受かるかどうかが問題。ともかく、願書は送ってもらうように話をした。
太陽くんの今週の結果は圧倒的に強い勝ち方で優勝だった。やはり全国でも警戒される強さと、県予選でもやられてしまう弱さを併せ持つ。おそらく膝が心配でなければ、足を取られても簡単に切ってしまうのだろう。ともかく、現状ではグレコにすべてをかけるしかない。団体戦も東海大会フリーもグレコのための練習のつもりでいい。もちろんチームを引っぱるキャプテンがそういう考えでは本当はいけないのだ。しかし、レスリングは格闘技であり、1対1で闘うものである。団体戦は個人のためにあるということも事実だ。目標は全グレ優勝でいいと、はっきり言っておいた。
この試合用レスパンの青を忘れてしまって借りたもの。赤と青が必要で、昨年秋の大会に個人用をあつらえて全員が購入した。私が取りに帰ると交通費がすごいので体型が最も近い同僚から借用した。試合でシューズに次いで大事なものを忘れるあたりが、何か事件を起こしてしまうところだろう。ただ、多くの人が何か途方もないことをしでかす可能性を持っているように思えるのも確かだ。