豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

ソフトバンクの遭難者捜索システムが進化

2016年12月11日 | 遭難と救助について考える
今年の9月頃ですが、係留した気球に携帯電話の基地局をぶら下げて、電波の届かないところにいる遭難者との通信を可能にするシステムがニュースになりました。この件については以前にエントリーを書いたのですが、今度はこんなニュースが出てきました。

ソフトバンク、ドローンで遭難救助めざす
日本経済新聞  2016/12/6 23:51

前にブログを書いた時には「気球なんかよりヘリコプターで吊って運んだ方が手っ取り早いんじゃね?」って感じのことを書いたのですが、そんな期待?に応えてソフトバンクはドローンを登場させてきました。ドローンのことはよくわからんのですが、仮に自動飛行で視界が無くても飛べるというのであれば、ヘリコプターが飛べない状況での選択肢になります。また誰でも携帯しているスマホの電波を捕捉するというのも大きいです。何度も書いていることですが、どんなに素晴らしいシステムであっても普及しないと意味がありません。もっとも、スマホ含む携帯電話には不感地帯だと激しくバッテリーを消耗してしまうという問題があり、私も山域によっては電源を切ったままにしていることが多いです。そうなると意味が無いわけで、このへんはなんとかクリアできないものですかね?


ついでなので、ハイテクを使った遭難救助に絡んだネタをもうちょっと書きましょう。 以前にも書いたロボットによる山岳救助コンテストの話ですが、北海道上士幌町において10月17日から21日までの5日間にわたって開催されました。結果ですが、ドローンで遭難者を模したマネキンを発見した団体が2チーム出たようです。 参考リンク
ざっと動画を見てみましたけど、早いチームは24分で発見していましたね。ただどんな方法で発見できたのか、動画をちょろっと見るだけではよくわかりませんでした。


あと博報堂アイスタジオという会社も遭難対策システムを発表していたのですが、最初に出てきたのは登山道に1キロおきぐらいの間隔でアクセスポイントを設置。そこを登山者が通過すると記録され、さらにその位置情報を下界にいる家族がリアルタイムで見られるというものでした。 参考動画
この動画を作った人がどう思ったかは知りませんが、山の中にこんなものを大量に設置するのは自然景観の破壊だし、そもそも維持が大変だし。その後は山小屋に機器を設置する方法に変更したようで、だいぶ実現性が高い感じになりました。

しかし、リアルタイムで登山者の位置を家族が把握できるのって、本当にいいことなのですかね?登山者の位置を示すマークがいつまで経っても動かないとか、登山道から大きく外れているのをモニターで見ていた家族が発見すれば、例えば単独行でなおかつ気絶状態に陥って通報どころではない遭難者であっても迅速に救助活動を開始できるのですけど、別の問題があると思うのです。

例えば登山道の脇で休憩中、ビーコンだかデバイスだかが入ったポーチが谷底に向かってコロンと落ちてしまったとしましょう。もちろん回収不能な地形ですよ。これは登山者本人にとっては単なる落とし物ですが、下界でタブレットやパソコンのモニター等を眺めている家族にはどう見えるか。ちょっと考えてみてください。あるいは登山道の途中に忘れちゃったとか、デバイスがいきなり壊れた、でもいいです。



携帯電話が普及したことで早い段階で救助要請ができるようになり、死亡事故や行方不明など重大な事故の割合は下がってきています。が、一方で安易な救助要請も増えていて、それが遭難事故増加の原因のひとつと言っても過言ではないでしょう。つまり、以前であれば遭難にならなかったようなちょっとしたアクシデントでも簡単に救助要請ができてしまい、遭難件数にカウントされてしまうのです。ここ最近はさらにハイテクの導入が進み始めた印象ですが、それもまた、うっかり間違うと遭難防止どころか遭難事故件数の増加につながりかねない気がしてなりません。



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