豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

携帯電話のGPS機能は道迷い遭難を防ぐか

2008年03月24日 | 道迷い遭難を防ぐシリーズ
いまやGPS付き携帯電話はごく普通のことのようで、それに合わせてGPS携帯から警察や消防に通報すると自動的に位置がわかるシステムの導入が各地で進んでいるようです。

携帯の110番でも位置特定、現場到着の時間短縮へ、県警4月から新システム
WEB埼玉  2008年3月23日(日)

この記事は埼玉県の例ですが、先月には松本広域消防局でも「位置情報通知システム」を2008年度に導入する、なんて記事が出ていましたね。



遭難者や現場に居合わせた登山者からのいい加減な通報によって余計に歩かされたことが何度もある私としては「どんどん普及してくれ」てな気持ちが先行するのですが、ここでちょっと考察を加えてみましょう。先に書いておきますが、私はGPS携帯持っていませんので、少々間違ったことを書くかもしれません。ツッコミがありましたら遠慮なくコメント入れてくださいませ。



どうも携帯電話のGPS機能は、完全に電波が届かないところでは使えないようです。もちろんGPSは内蔵されているわけですが、単独では精度が悪く、どうしても基地局の情報が必要になるようです。つまりセンターと位置情報をやりとりしなければなりません。ということは、稜線や中腹では使えても、標高が低いところでは使えない場合が増えてくるのではないかと。

電波が通じる稜線にいれば現在地がわからなくても登山道や踏み跡がしっかりついていたりするわけで、救助要請までするような事態にはならないでしょう。で、道迷い遭難が発生するのは標高が低くて樹林帯が広がっているような地点が多く、そういうところは得てして携帯電話の圏外だったりします。もちろん電話で助けを呼ぶこともできません。

結局、一番GPSが効力を発揮するはずの道迷い遭難において使えない可能性がけっこうある、というわけで、今のところ、これが携帯電話に内蔵するGPSの限界なのでしょう。


一方、通話で助けを呼べるような地点なら位置情報の取得も可能なわけです。昔、残雪が大量に残る槍ヶ岳・飛騨沢を登っている登山者がガスに巻かれて道を失い、山小屋に電話で「ここがどこなのかわかりますか?」と助けを求めてきたことありましたけど、そんなことを聞かれてもわかるわけがありません。あたり一面真っ白なわけですし、小屋番には透視能力がありませんから。でもGPS付き携帯なら何とかなっちゃうわけですね。素晴らしい。


ちゃんとしたハンディGPSを持っていても道迷い遭難にハマる人がいるのですから、GPS付き携帯の普及に伴って「GPS付きの携帯電話があるから、地図もコンパスもいらないや」という、ニュータイプな遭難者が登場してくるかもしれません。



↑この記事が参考になる、面白い!と思ったらクリックしてください。ランキングサイトです。

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
一応2016年の情報として… (マツモトケイジ)
2016-02-18 11:47:45
『ガチで考える道迷い遭難』シリーズ面白かったです。ありがとうございます。

このエントリについては書かれたのが古いので、現在の状況についてはご存知かと思います。が、たまたまこれだけ読まれるかたもいると思いいますので、そういった読者さんのためにコメントを書かせていただきます。

2008年当時の携帯電話というとガラケーかと思いますが、確かにガラケーは電波が通じないとGPSが動かない機種などがあったようです。欠陥レベルの仕様だと思いますが当時の技術力だと仕方なかったのかも知れません。登山用の地図も入っていないでしょうから登山に使うには無理があったと思われます。

現在、2016年ではスマホが普及し、登山用のGPSアプリも色々開発されています(当方はジオグラフィカというアプリを作っています)。もちろん携帯圏外でもGPSは動作し、登山用アプリなら事前準備をすれば圏外でも地図と現在地を確認出来ます。精度はスマホの価格次第で、高い方が高精度です。5万円程度出せばガーミンのGPSと変わらない精度で現在地が判ります。また、Androidであれば機内モードにすれば30時間以上GPSログを記録する事も出来ます。

という事で大分状況が変わっていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
返信する