豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

山岳保険

2006年04月27日 | 遭難と救助について考える
山岳会に所属するような人なら、山岳保険に加入するのは常識だと思います。が、夏の北アルプス程度までの山しかやらない人だと、保険に入っている人は少ないかもしれません。

実際、現場でヘリの要請が必要になり、「民間でもいいですか?」と確認すると、悩む人が多いです。「保険は入っています?」と聞いて、「はい」と応えた人には出会ったことがありません。

また山岳保険と生命保険を間違えている人も多いです。生命保険では、ヘリコプターの費用を出してくれるわけがありません。そりゃ、死んだらいずれお金は出るかもしれませんが・・・・



一昔前に比べて、山岳保険を扱っている業者は増えたようです。が、最近気になっていろいろ調べたところ、「あれまぁ」と思うことがありました。


病気によって動けなくなった場合、救援費用を認めてくれない保険が多い。


高山病や凍傷といった山岳特有の病気でも、出さない会社が多いのです。(転落や滑落の結果、凍傷にかかった場合は出るようですが)

病気だとダメ、という知識は昔からありましたが、いまだにほとんどの保険がダメなんですね。

高山病は「登ってみないとわからない」ものであり、一度3000m級の山に問題なく登ったとしても、次の機会に発病、ということもありえます。(前は平気だったのに~、という患者さんが何人かいました)

凍傷は確かに装備の問題があります。が、風でオーバーミトンを飛ばされて手が凍傷になるなど、そういったアクシデントによる凍傷もありえます。もちろん指先程度の凍傷で地形に問題がなければ「自力下山しろ」のひと言ですが、厳しい山では救助が必要になることもあるでしょう。

保険会社の多くは「脳疾患、疾病、心神喪失」が遭難の原因の場合、救援費用は出ないと約款で定めています。たしかに重い持病を抱えて登るのは自殺行為ですから止めて欲しいのですが、突然の発病で動けなくなった時にお金を出してもらえないのはツライです。以前水分不足が原因と思われる尿道結石の患者が小屋で発生したことがありますが、一般の人ではこんな病気まで予測できないと思います。

保険会社の約款はもちろん、FAQなどを見ても、病気遭難に関して詳しい説明が載っているのは少ないです。逆に病気遭難に対応している保険は、そのことをFAQなどでデカデカと書いている場合が多いので、参考になると思います。

私が入っている保険は、高山病も凍傷もOKです。病気で動けなくなった場合でも、突然の発病なら100%、持病なら50%、負担してもらえます。とはいえ、職業柄ヘリコプターに乗るのは「恥」であり、関係者に延々とネタを提供してしまう行為なので、行動には気をつけています。


参考URL
急性高山病にかかりヘリコプターで降ろされました。
費用は補償されますか?

**一般的な山岳保険の例です。

山小屋の中で階段を踏み外して骨折して
下山できなくなったというような場合は
屋内での行動中のケガや病気でも大丈夫です。


**山小屋の階段で転倒したり、ハシゴから落ちてケガをすることはよくあります。


上高地で販売しているアルピコの1000円保険でも、高山病はダメみたいですね。

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
知らなかった~ (もりもり)
2006-04-27 09:01:36
病気でもOKな保険は保険料も高そうだね...
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Unknown (uutan)
2006-04-27 09:34:29
山岳保険はもともと傷害保険の特約をアレンジしたものだから、損保の領域なので病気の補償というのはないんだろうね。けがが守備範囲。。



入っている保険みたらやっぱ病気はダメだった。

今まで入っているのに上乗せして病気でも桶のを入るか。。



山友クラブのって一昨年くらいに白○山荘からパンフレット送ってきましたよーー。
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Unknown (bongo-pete)
2006-04-27 10:09:44
元は傷害保険なんですね。なんとなく納得。



私が知る限り、病気OKなのは日山協と都岳連と日本山友クラブぐらいです。



死亡時の補償などはまったく比較せずに書いてますのでアレですが、単純にレスキュー費用だけで考えても、病気OKの保険のほうが安い感じがします。



都岳連の保険に入っていますが、事故がなければ2年目からさらに3割引きになりますよ。



山友クラブはどんな遭難でも1割ほど自己負担があるようです。それでも「山小屋内でのケガOK」ということをサイトではっきり書いていますので、いいかもしれません。バックはバカングループですし。

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