豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

北アルプス・水晶岳でヘリコプター墜落 その3

2007年04月12日 | 山を飛ぶヘリコプター
北アルプス・水晶岳でのヘリコプター墜落事故ですが、「座席の取り外し」や「スノーシューの未装着」、「飛行計画の変更」などが問題になっています。

いくつかニュースを調べてみて、中国新聞のこのページが一番わかりやすいかな?と思ったので、リンクを張っておきます。

3人の座席取り付けず 富山のヘリ墜落事故(中国新聞)


私はヘリコプターの専門家でも何でもないのですが、山小屋番時代に北アルプスにおけるヘリコプターの運用について多少は見聞しています。そこで、いくつかの問題点について考察してみたいと思います。



◎スノーシューの未装着について

スノーシューとは、ヘリコプターが雪上に着陸する際に機体が沈み込まないようにするための器具です。ですから雪が固い状態では不要であり、今回のようにアイスバーンとなれば悪影響だと判断して装着しなかったのは、問題ないと思います。この件についてマスコミがわざわざ書いているのは、重箱の隅を突くようで疑問を感じます。


◎飛行計画の変更

当初は「水晶小屋への着陸をあきらめて他の飛行場へ向かう」と会社に連絡していたのに、いつのまにか水晶小屋へ着陸していたことも問題になっています。中国新聞のページを見ると、

14:00
大町の東沢離着陸場にて待機開始

15:50
天候回復が見込めないため、山神離着陸場へ移動する

という流れになっています。そして移動途中に水晶小屋方面を見たら着陸できそうだったので、そのまま直行した、というように感じます。

北アルプスでの飛行は目まぐるしい天候の変化に対して臨機応変に対応しなければなりません。その場で急遽予定変更というのは、よくありがちかな?と思います。

報道では「飛行計画を勝手に変更」みたいに書かれていますが、これが法律で定められたフライトプランを独断で変更したものなのか、それとも機長の裁量の範囲内なのか、ちょっとわかりづらいです。専門家の人がいたら教えてください。


◎乗員が4人いたこと

通常、山小屋の荷揚げや人送では、パイロットと整備、あるいは営業の2名が搭乗員としてヘリコプターに乗り込みます。パイロットだけ、という場合も多いです。それだけに4名も乗っていたことを聞いて、当初は「なんで?」と思いました。

が、

前述の予定変更を聞いて納得です。つまり水晶小屋への着陸をあきらめて山神離着陸場へ移動するため、地上にて待機していた社員を全員ヘリコプターに乗せたわけですね。で、飛んでみたところ着陸が可能な天候状態、つまりガスがとれていたので、予定を変更して乗員4名のまま水晶小屋へ向かったわけです。


◎座席の問題

少し引用します

大城さんらは三人の席がなかった理由について「機長が席を装備するよう指示しなかった」「三人席がないほうが乗客の乗降がスムーズだと思った」と話しており、同社は「常識では信じられず、法令違反だ」としている。

引用おわり


前回の記事でも触れましたが、この問題は微妙です。最初は軽量化のために座席をはずしたのかな、と思いましたが、特に意味はなかったのかもしれません。ただ「座席があるのは常識」というのは、山関係でしかヘリコプターに乗っていない私からすると、ちょっと意外です。

それでも法令違反になるわけですから、影響が大きいかもしれませんね。通常の業務での人送ならしょうがないかな?と思いますが、これが救助活動にまで適用されるとなるとだいぶ窮屈な感じがします。


◎視界不良

乗客の証言によりますと事故の直接の引き金になったのはテイルローターが雪かなにかに接触したこととなっています。が、この中国新聞のサイトでは「旋回した」という話が出ています。

もしかしたら空間識失調、俗にいうバーティゴに陥ったのかもしれません。

参考URL

地面は一面の雪でガスに巻かれているとなれば、空間識失調になってもおかしくないと思います。空間識失調になってからテイルローターをぶつけた可能性もありますね。


↓この記事が参考になる、面白い、と思ったときはクリックしてください。ランキングサイトです。↓
にほんブログ村 アウトドアブログへ