豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

あれからまもなく5年ですか

2008年10月30日 | 山岳遭難
福井・石川県境の大長山で関学ワンゲル部14名が遭難してからまもなく5年ということで、メモリアル?登山を行ったそうです。

遭難の教訓伝える登山 関学ワンゲル部OBと現役生ら
神戸新聞  10/15 09:11



美談ですねえ・・・・・・




と言いつつ、心のどこかに釈然としないものがあるこの遭難について、以前このような記事を書いています。


遭難救助の費用/豊後ピートのブログ


主にJANJANの記事を対象に、批判の意味で書きました。


上記の記事でもいろいろ書きましたが、書き足りない部分や書き忘れがあるので今一度整理して書いてみましょう。



○捜索活動がそもそも不要

以前書いた記事の中でJANJANの記事に触れていますが、そこではすべてのフライトを捜索と仮定し、1フライトにつき1時間では済まないだろうから、20回も飛ばせば数千万円にもなるだろう、としています。

しかし今回のケースでは、遭難パーティの現在地はほぼ特定できているわけですね。少なくとも、大長山の山頂付近ということはわかっているのです。冬山ですから樹林帯であっても見通しがいいですし、仲間が14名もいるから、上空から見つけるのは比較的簡単だと思います。第一、アマチュア無線による定時交信もできているようですしね。

コレ、普通ならば現地の天気を見計らってフライトし、その場でちょろっと捜索して遭難者を見つけ、そのままピックアップでしょう。このケースでは14人もいますから2~3機でやるかもしれません。が、トータルで3~5便のフライトで済むような気がしますね。


○ジェット機の投入は不要

現場からワイヤーで長吊り救助ができないジェット機が現場を飛んでも、意味が無いと思います。捜索を行うにしても、現場上空でホバリングできないのでは非効率的です。ヘリコプターによる捜索って、うんとスピードを落として飛ぶんです。ジェット機ではいくらスピードを落としても、あっという間に現場を通過してしまいます。それにこのジェット機はどちらかというと広大な面積を捜索するのが専門です。


○民間ヘリコプターが飛んでも一人あたり300万円を越すレスキューは少ない

JANJANの記事では

それに、もし実際に民間レベルの金額を請求されても、遭難救助・遺体回収費としての最高支払限度額が、せいぜい300万円程度しかない山岳保険が一般的な現状では、個人として支払える額ではない。

としていますが、実際の遭難救助で民間機が飛んだ場合、逆に300万円を超えることは珍しいケースだと思います。都岳連共済だと実際に掛かった費用の総計が発表されていますが、最高で400万円ぐらいです。しかも3人分ですから、ひとりあたり130万円ぐらいですね。




そもそもJANJANの記事では、ヘリコプターが20回飛んだことに対して、これをすべて捜索だと決めつけたりと、なんだか高い方へ高い方へと無理矢理持って行っているんですよね。この20回のウチ半分以上は県外から現場付近のヘリポートまでの移動とか、あるいは帰還ではないかと私は思っています。ですから、隣の県からやたらとヘリコプターを呼ばなければ、必要な捜索を行ったところでフライト回数はかなり減るんではないでしょうかねえ。



もっとも、こういう大げさなレスキューになったのは、単純に言って福井県が山の遭難に慣れていないからでしょう。







で、ここで話を終わろうと思ったら、こんな記事を見つけてしまいました。

山小屋も冬支度 勝山・法恩寺山
福井新聞  10月28日午後8時00分

何気ない内容の記事だなあ、と思ったら、「2004年に大長山で遭難、救助された関西学院大ワンダーフォーゲル部の部員4人も手伝いにやってきた」という文章が目に飛び込んできました。普通に学生さんが手伝いに来た、と書けばいいのにねえ。


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4 コメント

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Unknown (ばぎー)
2008-10-30 13:16:57
こういった煽りたがりの世論誘導も大学山岳団体の衰退の一因ではないかと思います。

死亡・重傷事故が起きれば、その原因に関係なく廃部処分や1年以上の活動停止などという大学側の姿勢も問題です。
今回の関学は理解のある学校だったようですが、大学によっては廃部ものの事故だと思います。

さらに懸念されるのが、こういう状況下で世代間の空白が生まれ、技術伝達がされない事だと思います。
私は、学生の事故隠しや、事故後の無理な自己解決などが増えることも心配しています。
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Unknown (きじばと)
2008-10-30 19:42:39
>こういう大げさなレスキューになったのは、単純に言って福井県が山の遭難に慣れていないからでしょう。

全くそうです。
遭難に慣れていない地域で遭難すると、凄いことになります。
話だけが膨らんで勝手に大騒ぎ。
救助のための指揮系統も慣れてない。
救助依頼者の承諾もなく捜索隊が集まってきます。

山から降りてくると話題に飢えた地元TV局がドアップで放送。
そして皆に迷惑をかけたとさらし者です。
そして捜索費用は全員分乗せた日当を要求されます。

山岳事故に慣れてない地域で絶対遭難してはいけません??
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Unknown (bongo-pete)
2008-10-30 19:43:57
>ばぎー様

大学山岳部についてはしっかりしているところもまだまだあると思います。が、部員が少なく、またOBもいなくて活動を維持するのがやっとというところも相当あるでしょうね。

高校や大学の山岳部だと、社会人団体と比較して監督責任が何かとやっかいであり、このあたりを解決しないと良き指導者が出てこないでしょうね。
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Unknown (bongo-pete)
2008-10-30 19:49:54
>きじばと様

結局、事故現場を正確に見積もれる人間って少ないわけですね。長野富山あたりの警察が持っているノウハウを全国的に広めれば、もっとスマートにできると思うのですけどね。
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