豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

遭難救助の費用 その2

2007年09月17日 | 遭難と救助について考える
ウチのブログには、「遭難」「救助」「費用」のキーワードでやってくる人が多いです。みんな万が一の時にお金が掛かるのが、心配なんでしょうね。

正直な話、そんな心配するぐらいだったら山岳保険に入ってしまえ!と思います。年間5000円程度の支払いでヘリコプターを1発飛ばせるだけのお金が出ます。20年払い続けたって10万円ですから、ぜんぜんオッケーだと思うのですが・・・・






で、今回はヘリコプターでのレスキューにどれだけお金が掛かるのか、です。


とりあえず県警と防災は無料、って書いておきましょう。少し前に長野県でヘリコプターレスキューの有料化が検討されましたが、あっという間に話が消え去りました。先日県警の中の人に「アレ、どうなったんですか~」と質問してみたのですが、なんかイヤそうな顔していました。現場では有料化、あまり人気がないみたいです。



民間ヘリコプターによる救助と言えば、東邦航空が独擅場です。しかも「ラマ」という機種の使用がほとんどです。では、どのくらいの料金になるのか。


○チャーター料  465,000円/時間
捜索救助の際に掛かる、1時間あたりの料金です。

○空輸料  425,400円/時間
遭難現場近くにあるヘリポートまでの移動が必要な時に掛かる料金です。

○スタンバイ料  150,000円/1件
通常業務(山小屋の荷揚げなど)を中止して現場へフライトするので、荷主への補償等に必要な費用が掛かる。またパイロットや整備士の手配などの費用として。

古いデータですと滞留料とか夜間滞留料なんて項目も出てきます。滞留料は現場近くのヘリポートまで来たものの、天候が悪くて飛べない場合に3時間を超えて待機した場合に掛かる費用です。夜間滞留料はヘリポート待機が夜間に及んだ場合の費用です。ネット上では最近の滞留料については金額が出ていないので省略します。

チャーター料の465,000円/時間というのは、別に救助作業だから高額というわけではありません。おそらく下界で遊覧飛行やっても同じ料金です。遭難者の足元を見てふっかけている金額ではありません。他社だって同じ機種なら同じ金額のようです。



とまあ、このあたりはけっこうネットに出ていますね。で、この数字を基にして、ヘリコプターを何時間も飛ばすレスキューを想定し、何百万円という救助費用を算出していますが、あまり現実的ではありません。普通のレスキューなら、何時間も飛びっぱなしということはまずありませんから・・・・





それでも、この数字から考えるとヘリコプターを依頼しただけで軽く100万円以上掛かることになるわけですが、実際はどうでしょうか。


都岳連の遭難共済のページには、支払った保険の金額や事故状況が出ています。このページにはヘリコプターが民間なのか県警なのかも記載されていますので、ヘリコプターの費用もある程度わかります。(はっきりチャーター料と書いてある場合もある)

このページに出ている数字では、安いと35万円程度、高いと400万円ほどとなっています。けっこうバラバラですね。



実際のところ、北アルプスや八ヶ岳では比較的安く済むケースが多いです。

理由のひとつは、東邦航空の営業所がある松本空港に近いことです。松本空港から現場に直接飛んでいける場合、空輸料が掛からないようです。

もうひとつは、東邦航空が荷揚げを担当している山小屋が多いことでしょうか。荷揚げをやっている時に周辺でレスキューが掛かると、その場から現地へ直接行けることがあります。そうなれば、わざわざ遠くからヘリコプターを呼び寄せるための空輸料がいらなくなります。

上記の条件で現場の位置がわかっていて、1発でピックアップできた場合、100万円を越えるようなことはないでしょう。例えば登山道で転倒し、重いねんざで動けなくなった、なんて場合、いきなり数百万円掛かることはありません。



一方、料金がハネあがる場合もあります。それは行方不明になり、フライトが捜索になった時です。一発で見つかればいいのですが、何度も飛ばしたらその分だけチャーター料がかさんでいきます。

ですから冬山をやるとか、単独が多い人は、救助費用を300万円まで払ってもらえる保険に入った方がいいでしょう。そして貧乏な人は、無理しても高い保険に入った方がいいですね。


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