始まりに向かって

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先住民族サミット、あれからどうなった?(3)

2008-10-14 | アイヌ

以前の記事で紹介した「先住民族サミット宣言」に続いて、サミットの開催主である日本政府に、
国際的な基準としての「先住民族の権利に関する国連宣言」を守ってほしい、と呼びかけた「提言」が、採択された。

多様な文化の在り様を認めることは、日本に住むどの人々にとっても、より生きやすい社会を作ることになるのではないかと思う。

先住民族サミット」HPより転載する。
      

「先住民族サミット」HP
http://www.ainumosir2008.com/map5.jpg




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先住民族サミット「アイヌモシリ」2 0 0 8から日本政府への提言


北海道・洞爺湖サミットに参加した各国の首脳に、国際連合の「先住民族問題に関する常設フォーラム」の
ヴィクトリア・タウリ・コープス議長とともに先住民族からの提言を行うため、このアイヌモシリ(北海道)に集まった。

我々世界各地の先住民族の代表は、「アイヌ民族は日本の先住民族であ
る」という、衆議院、参議院、すべての議員の賛成決議を受け、日本政府が、アイヌ民族を正式に先住民族と認めたことを高く評価する。

アイヌ民族を先住民族と認めた日本政府は、2007年9月13日に、自らが国際連合で賛成票を投じた
「先住民族の権利に関する国際連合宣言」の内容を速やかに実施するために、アイヌ政策のあらゆる立法化や
、行政レベルでの対応を検討すべきであることから、まず過去のアイヌ政策を反省し、明確な言葉で公の場で謝罪する事から始めなければならない。

現在、日本政府が設置しようとしている「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」のメンバー8名のなかに、
アイヌ民族の委員が1名しか入っていないことは、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を日本政府が認めたにも関わらず、
それを無視するものであり、認めることはできない。

したがって、「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の構成や運営においては、アイヌ民族と
日本政府との対等な関係が保障されるべきであることから、その数についても、少なくとも半数以上が
アイヌ民族から選ばれ、委員の選定についてもアイヌ民族の意見が尊重されるべきである。

日本政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」に明示されている、先住民族の権利、
とりわけ、自己決定権、言語権、自然資源利用権など、アイヌ民族が本来もっていたすべての権利の
速やかな回復を図るべきである。

アイヌ民族だけでなく、日本のすべての国民、とりわけ、将来を背負う若者たちのためには、
幼児期からの教育がもっとも重要である。

アイヌ語を公用語とし、義務教育でも学べる言語とすること、
アイヌ民族の視点で歴史教科書を作成することなど、日本政府は若者の教育を重視した施策を
早急に実施すべきである。

アイヌ民族は、北海道だけでなく、本州、サハリン(旧樺太)、クリール諸島(旧千島)、カムチャツカなど、
広大な地域で生活していた先住民族である。
この事実にもとづき、日本政府は、いわゆる「北方領土」の返還交渉にアイヌ民族を主権者として
加えるべきである。

さらに日本はウチナンチュウ(沖縄)の人々、在日韓国人などを含む、様々な人々からなる多民族国家であり、
日本政府は多民族で多文化主義の国家という考え方を基本とする社会を構築することを明確に示すべきである。

先住民族サミットアイヌモシリ2008参加先住民族一同
  2008年7月4日 決議

      

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ニュージーランドでは、先住民族マオリ族の固有な言葉を、生きた言葉として使う試みで、
その独自な社会と文化が保持されているという。
日本においても、様々な立場から、様々な歴史が語られるのは、文化に豊かさをもたらすことだと思う。

報告会でも、「イオル(伝統的生活空間)の再生」(狩り場の再生など)といった静的な政策より、
もっと主体的にアクティブに現実にかかわってゆきたい、と話されていた。

当然の要求ではないだろうか。
他者の自由を認めなければ認めないほど、自分の自由さもまた、見失ってゆくのではないだろうか。

「ニュージーランドの先住民」HPから転載する。

「ニュージーランドの先住民」HP
http://www.newzealand.com/travel/ja/about-nz/features/maori-culture/index.cfm



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近年では、コハンガ・レオ(マオリ語でことばの巣の意)という言語教育システムの導入によって、
マオリ語が復活しつつあります。

就学前児童を対象とするコハンガ・レオでは、子どもたちが積極的にマオリ語で話せるよう工夫がなされています。

早期にマオリ語の基盤を作り、続く初等・中高等教育においても各課程の中にマオリ語を含める
ことで、マオリ語が日常生活の中で根付き、育っていくようにしています。


歴史を昔話や神話、伝説などの形で口承する伝統は今日でも引き継がれています。

多くのマラエでは長老が部族の知恵、礼儀作法、系譜を若い世代に伝授しています。

長老が語り伝える話には、マオリの本質的な世界観に基づいたものが数多くあり、例えば、
北島を釣り上げたマウイの伝説 [ マウイの魚の物語 ] や、ティエケ(セアカホオダレムクドリ)
の背中はなぜ赤いのか [ マウイと鳥のティエケの物語 ] 、といった物語が
よく知られています。

伝統工芸彫刻家もまた、マオリ文化の継承に大切な役割を果たしています。

彼らの刻み込む複雑な彫刻作品には、歴史に対する敬意がこもっています。
各作品にはひとつの物語が彫刻で表されていて、読める人が見ればわかるようになっています。

頭の形にも、体の姿勢にも、ひとつひとつの模様にもそれぞれに意味があり、その全てが合わさって
過去の出来事を記録し、記憶を後世に伝える働きをしています。

現在のニュージーランドの指導者たちもマオリの伝統的な信仰を尊重しています。

近年では、マオリの禁忌に触れないために、北島で道路計画の修正が行われた例があります。

計画の原案では、道路はある沼地の上を通る予定になっていました。

ところが、地元の部族ナティ・ナホの人々は、この沼にはカルタヒという一つ目のタニファ
(水辺に住む魔もの)がいると信じていました。

カルタヒはワイカト川が氾濫している間はそこで泳いで暮らしているが、一年のうち半分は
この沼地で過ごしているので、カルタヒを怒らせることになると恐れました。

そこで、ニュージーランド国土交通省はナティ・ナホの人々にとって歴史的に大切な場所として
この沼地を保存することを認め、道路計画を変更したのです。

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「先住民族サミット」HP
http://www.ainumosir2008.com/map5.jpg
「伝統的生活空間(イオル)の再生について」
http://www.town.shiraoi.hokkaido.jp/ka/seikatu/chouminseikatu-ioru.htm
「ニュージーランドの先住民」HP
http://www.newzealand.com/travel/ja/about-nz/features/maori-culture/index.cfm
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