「やまゆり園殺傷事件」で、わたしが一番気になったのは、テレビなどで、被害者の方々の名前が一切報道されなかったことでした。
心からお悔やみ申し上げたい、と思ったのですが、どんな方々なのか、見当もつかないことに戸惑いました。
下の記事は、実名を出してお話をしてくださったご一家の記事です。
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「障害の有無関係ない、実名公表で理不尽さ訴え」
読売新聞 2016・08・26
神奈川県相模原市の知的障碍者福祉施設「津久井やまゆり園」で46人が殺傷された事件は26日で発生から1か月となる。
逮捕された元職員は「重度障がい者は周囲を不幸にする。いなくなればいい」との供述を続けており、県警は、異常な差別意識を募らせた末の犯行とみて事件の全容解明を目指す。
標的とされた入所者やその家族は悲しみと怒りを抱えながら、日常を懸命に取り戻そうとしている。
「かんちゃん、元気?」
やまゆり園の家族会「みどり会」前会長の尾野剛志さん(72)と妻のチキ子(74)さんは19日、腹部を深く刺された長男一矢さん(43)の病室を見舞った。
容体が安定したため、園近くの医療機関に転院してきた。
「園に戻れると思っていたのにね」。両親は息子の手を握り、頭をなでた。
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丸々としてよく笑う赤ちゃんだったが、言葉を覚えるのが遅かった。
「精神薄弱児、自閉症」と診断されたのは、3歳児検診だった。
その年、一矢さんは実の父親を水難事故で亡くしている。
剛志さんが、チキ子さんと出会ったのはその1年半後。
自宅の3畳間にちょこんと立っていた一矢さんを見て「なんてかわいい子だろう」と思った。
チキ子さんとクリーニング店を営みながら、新たな家族の暮らしが始まった。
一矢さんは水が嫌いだったから、お風呂はいつも大騒ぎ。それを克服させようと、雨の日にこそ公園に連れ出し、親子でずぶぬれになって遊んだ。
洋服のボタンをとめるのも苦手で、「ぱちん、ぱちん」と口では言うものの、手が動かない。
半年後、初めてうまくできた時はみんなで大喜びした。
一矢さんの日常の歩みが、大切な思い出として家族の記憶に刻まれた。
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「手がかかる分、かわいさも人一倍」。
そう家族に映った一矢さんに対し、世間の目は違った。
小学生の時、通学路の小川に葉っぱを流して遊んでいると「なにか捨てていましたよ」と電話がきた。
近所の家の前でアリを捕まえれば「なにか盗んでいきました」。
電話はすべて匿名で、「野放しにせず、施設に入れろ」と吐き捨てられたこともあった。
中学生の途中から支援施設に入所した。
一時帰宅すると、抱き着いて喜びを表してくれたが、両親の体はアザだらけになった。
施設から「自宅に戻るのは難しいのでは」と提案され、「正直ホッとした部分もあった」と剛志さんは明かした。
23才でやまゆり園に移ると、少しずつ環境に慣れ、園を我が家と思うようになった。
安心と少しの寂しさが交錯し、「できるだけたくさん会いに行こう。帰ってくる日はずっとかまってあげよう」と、チキ子さんと約束しあった。
そんな暮らしを続けて20年。
理不尽な事件が家族を襲った。
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一命を取り留めた一矢さんは病室で「お父さん、お父さん」と笑顔を見せた。
剛志さんは抱きしめて頬ずりしながら「一矢は一矢。障害の有無なんて関係ない。
お父さん、お母さんと言ってくれるだけでいい」と改めて思った。
剛志さんは「容疑者への怒りは煮えたぎっているが、憎しみ合いに引きずりこまれてたまるかという思いもある」と語る。
今はまず、一矢さんに安息の場を見つけてやりたいと願っている。
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尾野さん夫婦は「かわいい息子が理不尽な被害に遭ったことを訴えたい」と取材に応じた。
夫婦は実名を明かした上で、一矢さんについて語ることで傷がい者差別をなくしたいと願った。
一方、神奈川県警は、犠牲者の実名を公表していない。
知的障がい者が暮らす施設が現場となり、遺族が公表を望んでいないことを理由としているが、異例の対応だ。
実際、遺族も取材に口を閉ざしている。
やまゆり園に36年勤務した元職員の太田さんは「被害者が、どんな人だったかを伝えるためにも実名を公表すべきだ」と訴える。
20年近く園にボランティアとして携わった80代の女性は、入所者の安否が今も分からない。
「障がい者だから匿名とは、人権を軽く見ているのではないか」と感じるが、障がい者が好奇の目にさらされることも知っており、胸中は複雑だ。
諸沢英道・常盤大元学長(被害者学)は「実名報道で死者の尊厳が傷つけられる恐れはないが、遺族らが強く望むなら尊重すべきだろう」と指摘。
「警察が氏名を伏せると報道機関との接触が困難になり、遺族の選択枝を狭めてしまう。
警察発表は実名で、報道機関が遺族らに配慮しつつ、匿名か実名かを判断すべきではないか」と話している。
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「老人ホームの日々・・有りがたき日々」
「食べることが終わる時」
「なぜ人を殺してはいけないのか?(1)・・殺すなかれ、の声を聴く」
「わたしはむやみに傷つけられなくてもいい・・なぜ人を殺してはいけないのか?(2)」
「死なれる側にも教養がいる・・嵐山光三郎氏」