聖徳太子についての文章である「古代日本七不思議」の中の半藤氏の文章の続きを、ご紹介し忘れていました。
文芸春秋社刊「古代日本七不思議」に納められている、半藤一利著「飛鳥の幻をタンテイする」のご紹介を続けます。
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(引用ここから)
712年に太安万侶によって選上されたという「古事記」を、古代朝鮮語で読んでみると、より中身がはっきりしてくる。
まずは、天地開闢。
伊邪那岐神と伊邪那美神が登場。
「岩波古語辞典」には、「互いに誘いあった男女の神の意」とある。
しかしこれを朝鮮語として分解すると、「イザ」は「イド」からの転換と考えられる。
善いとか美しいの意味がある。
「ナ」は「生まれる」・「出る」の意である。
「キ」と「ミ」は、男女を区別する尊敬語で、すなわち「美麗出生の男女の神」となる。
海の神を「大綿津見(おおわたつみ)命」という。
「岩波古語辞典」は、「綿は海の当て字、海をつかさどる神」とあるが、海がなぜ綿なのか、触れていない。
しかし朝鮮語では、海を「パダ」という。
「ツ」は、接続のことば。
「ミ」は尊称であって、神の「ミ」と同じく、「すべて霊威あるもの」、「呪力あるもの」を意味している。
神の、「カ」は、接頭語。
「命(みこと)」の「ミ」もそれにあたり、「コト」は「事」・「言」「もの」。
ここから「ミコトノリ」が出る。
天照大神の直系の神にこれがつく点から見ても、「ミコトノリ」に従った神ということになろう。
「天照大神」の「アマ」は、朝鮮語の「オマ」=「母」から来ている。
「天地創造の母」の意。
「テラス」=「ティル」は、「望む」、「見下ろす」であり、「天地を見下ろす母神」となる。
天照大神の弟が「建速須佐乃鳥命」で、「岩波古語辞典」によると「勇猛迅速に荒れすさぶ男神、嵐神」である。
「たけ」を朝鮮語の「タク」で「勇猛」・「敏捷」、
「はや」を朝鮮語の「ハラ」で「早い」、
「すさ」は「スス」で「喧噪・さわがしい」。
これを合わせると、「勇猛喧噪男命」である。
アメノウズメノミコトは、「岩波古語辞典」は「名義不詳」としているが、「ウズ」とは朝鮮語で「ウス」、「笑い」の意となる。
疑問は氷塊する。
「笑いの神」なのである。
天孫降臨で日向に下ったのが、ニニギノミコトである。
正確な名はえらく長い。
天津日高日子番能ニニギノミコト(あまつひこひこほのににぎのみこと)と申し上げる。
「アマ」と「ツ」は、すでに書いたとおり「天地創造」と接続の言葉で、「天の」というような意味。
「ヒコヒコ」は「ヒウォヒウォ」からきて、「豊かに実る」、すなわち「豊穣」である。
「ホ」=「ポ」=「穂」。
「ニ」は朝鮮語でも「ニ」で、「稲」のこと。
「ニギ」は、これも同じ発音「ニギ」で「熟れる」・「爛熟」となる。
となると、「天豊穣稲穂之熟命」。
この神は、「米の豊穣を司る神」なのであろう。
この米の神の日本上陸を先頭するのが、猿田彦命。
これは「サル」の解釈で、2通りの意味が考えられる。
「サル」の「サ」にアクセントをおけば、「稲」。
「ル」を巻き舌でほとんど発音しないなら、「物事の災いとなる邪気」、「陰気」となる。
「ダ」は前者でいけば「田」「地」。
後者なら「タ」と発音される。
朝鮮語の「分ける」「取り除く」、ということになる。
「農耕の神」と見るか、「悪気や邪気を取り払う神」と見るか?
稗田阿礼は朝鮮半島からの渡来人であったのだろうか?
そうではあるまい。
そう考えるより、太安万侶を中心に編纂官たちは何かを参考にして「古事記」を編んでいったと考える方が自然である。
その何かとは、大化の改新で灰塵に帰したと言われている、聖徳太子・馬子が編纂した「天皇紀」「国記」ではなかったか?
日本列島を作りたまいし神々から、神武以来国家建設の中心となった天皇家の物語が、一人の男・稗田阿礼の記憶から絞り出されたとは、いささか無理な話だ。
手本があった。
そして「序」で言うように、その手本から「嘘を削り、真実を定めた」とする方が良いだろう。
皇祖・皇宗の由来を克明にした「日本書紀」についても、成立の重大な理由の一つが、天孫たる天皇家が日本の首長たる神慮や定めを創作するにあった、という、その最も生々しい原図が、曽我天皇の否定、曽我天皇よりも現天皇の優位を系譜的に創造する必要に発していたと見てよかろう。
(引用ここまで)
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