まるさんかくしかく〇△☐Ⅱ

雑感・雑記・日記

0512 梵天雲龍

2017-05-12 18:23:24 | スペシャルな日

もう半世紀も前のことになる。私がまだ中学生だったころ、技術科で刃物を研ぐことを教わった。これが結構面白かった。刃物は使う内に当然切れなくなってくる。刃研は鈍った刃物を蘇らせる。だが、その面白さは刃研そのものにある。

丸刃にしてはいけない。研いでいる内はそれこそ無心。
刃研と言えば、同じく中学の国語の教科書に、詩人であり彫刻家の高村光太郎の詩「鯰(なまず)」の一節に「更に鋭い明日への小刀をりゅうりゅうと研ぐ」というくだりがある。研いでいるとなんとなく、簡単にそんな境地になれたような気がするのが刃研だ。

砥石は荒砥・中砥・仕上と3つ以上持っている。このごろはカミさんが買ったAmwayのステンレス包丁(当初から切れ味が私は好きではなかった)を、別のステンレス製品(キッチンバサミの峰など)で軽く当たってあとは新聞紙でバリを取るみたいなことでだましだましやってきた。だが、所詮切れないものは切れない。いちじは鉄製の古い菜切り包丁のほうが切れ味の点で勝っていたほどだ。その鉄製包丁も木製の柄の部分が割れてきて御釈迦になってしまった。
カミさんが包丁が切れなくなったので新しいのが欲しいとだいぶ前から言っていた。私が5~6千円のをホームセンターで物色して尋ねたところ「1万円くらいのがいいな~」なんて言われて久しい。で、なかなか買えないでいた。もうじき「母の日」。包丁をプレゼントしようと思い立った。

そこで今日は包丁専門みたいな刃物店に行って何かないか探してみた。42年もやってきた店主の爺さん、その店を愈々畳むのだそう。最初、1万数千円のをだしてきた。きれいな代物でちょっと魅かれるが、以前TVでダマスカス模様の包丁をみたことがあるのでそっちに話を向けると、RYUSEN(竜泉)の「梵天雲龍」の18㎝のを出してきた。
刃に触れたとき先ほどのとは明らかな違いがある。如何にも切れそうだ。そして刃文(はもん)が美しい。店主は「日本橋の木屋では3万円くらいする」と言っていた。ほんとかな。大手通販が大量に買うので、なかなか入手できないとも言っていた。

インターネットで調べてみてと言われたので調べたら、アマゾンでも竜泉刃物オンラインでも2万円強の値段だった。今日は18,000円で買えたが、トマトは力要らずでスッと切れた。

問題はカミさんだ。野菜を切っても包丁で横に寄せたりする。店主の爺ちゃん、そりゃダメだ!と注意してくれる。『そんなことしちゃダメだと叱られたって言ってよ。魚の骨とか(生の?)カボチャも切ろうとしちゃダメ』とも言われた。
しかし南瓜は、軟らかい「へた」の部分へ切っ先を入れていくという方法もあるのを知ってや知らずや。でもま~、家庭の主婦が力任せに包丁を扱えば、切れる包丁も刃こぼれするだろう。刃物を愛する店主だからこその忠言か。

今日はカミさん孝行、できたのかな?それはそうと、家に帰ってから包みを開け、包丁を眺めた。私、刃物が好きなのかもしれない。

それを見ていたら、今日は止めとこうと思っていた金麦、2本も飲ってしまった
。飲むのはこれくらいにしておこう。「気違い水」と「気違いに刃物」、どちらもアブナイ
もう少しだけ一人で刃文を愛で、この梵天雲龍を母の日(カミさん孝行)プレゼントにしよう

 

+++++++++++++++++梵天雲龍+  【うすはり/】
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2017.11 半年ほどで刃の片側にバリが出て切れ味落ちたので仕上げ砥で軽く当たり、蘇る。
2018.3.8 数日前、娘が使い「切れるね!キャベツ美味そう」。カミさん、「これはホント、気持よく切れる」。
2018.3.17 パン切りナイフも要らないね と豪語するカミさん。
2018.5.6 刃先欠損、カミさんが床に落としたり何だりは今までの包丁も。床は幾多の突き刺さり傷。想像すると、怖い。
2018.10.18 切れる刃物は気持いい。丁重に愛でるべし。
2020.1.17 切先が欠けたまま、梵天雲龍は今日も役立ってくれている。この包丁だけではあるまいが、お値打ち品。
2020.3.23 カミさんは「道具じゃん1」と料理のツールでしかない。その能力をフルに活かすには ... の私とは平行線。
2020.3.25 新聞紙でも広告チラシでも両刃の包丁左右の面を撫でてやる。日々どちらかに偏るのは、背骨など身体と同じ。
2020.3.31 何丁かある包丁。切り較べて改めて切れ味の違いに驚嘆し、有難みを知る。ちょっとした喜び、カミさんも。
2020.4.29 切れる刃物は気持ちがいい。ある意味繊細だがそれを維持する苦労が苦労でなくなるほどの至福はあるだろう。
2020.5.2 カミさんが、新型コロナ禍の今も、包丁をふるって料理してくれる。切れる包丁は、ストレスが少ない。
2020.5.6 半年ほど前、抜刀体験で巻藁を斬る機会があったが、うまく切れずに終わった何閃目か。心が曇っていた?
2020.6.21 孫娘6歳が、梵天雲龍でレモンスライスに切れ込みを入れた。グラスの縁に差すつもり。多少の不安と感慨と。
2020.10.3 日々の調整が大事。鋭利な刃物は実に繊細。繊細で高度なつくりといえば人体も同じ。日々の調整あってこそ。
2020.11.18 カミさんの包丁使いの荒い事!刃に沿って断続の溝。硬いもの斬る時も長葱切る時も、俎板に叩きつける如。
2022.6.12 この5年で梵天雲龍も草臥れてきた。刃も少し丸刃の様相を呈してきた。それでも仕上げとで当たれば、蘇る。
2022.6.15 私も72歳。健康寿命の境界に差し掛かかり草臥れ始めている。寒暑の汀の如、昨日今日明日で様相を異にする。
2022.7.1 切れ味鋭いものはそれ自体の見た目もさることながら、切り口も美しい。只々、憬れるばかり。