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たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

石積みを考える 石積みの文化的景観

2016-11-22 | 日本文化 観光 施設 ガイド

161122 石積みを考える 石積みの文化的景観

 

最近のニュースで、秀吉が建てた大阪城や伏見城の石垣跡が発見されたとかの話題が賑わっていたように思います。

 

現在残っている城(といってもほとんどが一旦破壊などの後に復元されたもの)の石垣を見ることが時折ありますが、見事に整っていて、石切の技術や積み方の巧妙さ、全体としての景観美を感じてしまいます。

 

ところが、あの秀吉が財を尽くして建てた伏見城や大阪城の石垣は、写真でしか見ていませんが、どうもしっかりと石切りしたものではなさそうです。そのままの石をつかっているものや切ったとしても平坦な形状にするような切り方ではないように思います。積み方も野積みのように、少々荒っぽい感じを受けます。だから伏見城は地震で崩れたのでしょうか。

 

そこは簡単に判断できないと思いますが、戦国期に作られ出した石垣は、そのように自然の石をあまり加工しないで作られ、見事にバランスよく積み上げたのではないかと思っています。

 

この技術は、伝統的なノウハウと熟練が必要ではないかと思うのです。私自身、わが家の畑と田んぼに段差があり、その一部に石垣が施されていたのが、崩れかけたので、自分で積み上げましたがわずか1m弱でも簡単ではありませんでした。

 

ところが、わが国の里山といわれる小高い丘、あるいは山は、見事な段々状になっていて、田んぼや畑が作られています。その段差は長年かけて積み上げられた石垣、石組みです。維新前後に来日した異邦人は、異口同音にこの見事な造形美を賛美しています。私自身、棚田風景はもとよりどこにいってもそのような段々畑など、日本人の勤勉さと自然美の調和の象徴のような風景に堪能されます。

 

田んぼ、畑にとどまらず、屋敷の石垣は、農村地帯だと、高さ5m、あるいは10m近い巨大なものも見かけることがあります。見事な積み上げです。ほれぼれして石組みを見上げます。そのような石組みにしだれ桜が石垣下まで垂れ下がっていたりして、ほれぼれする日本美と感じたりします。

 

石組み・石垣といった文化は、いつ頃からかはっきりしませんが、箸墓自体、3世紀半ば、記紀では二上山から石を昼夜を問わず運んで積み上げたとされています。また、7世紀、斉明天皇は石による大規模な水溝を開設するなど、多様で大がかりな石文化の一時代を作り上げたとも言われています。

 

それがいつの間にか、石の文化が消え去りそうな状況に危惧感を抱くのは私だけではないと思います。

 

景観法が突如、成立し、さまざまな産業の歴史的文化的景観が法的にも評価されるようになったのは、それ自体、支持されてよいと考えています。ただ、過去の遺物、遺産としてのみ評価するのでは、いかがなものでしょうか。

 

というのは、現在の開発行政では、石積み工法は宅地造成規制法令の擁壁構造基準などで基本的に認められていないといってよいかと思います。各地で盛土・切り土により土地の改変・造成を行いますが、さまざまな擁壁工法でもコンクリート方式が選択され、石積みは回避されています。鎌倉など風致地区・古都保存地区など、伝統的な文化景観が重視される場所でも、元あった石積みが壊され、コンクリートの直立擁壁に変わったりしてきました。

 

石積みは、その石積み自体が、微妙な配置、それぞれの石の特徴が混ざり合い、また、その曲線美もなんともいえません。が、敷地全体の利用面から言えば、その石積み部分に相当空間を使うことになります。たとえば東海道の一部では石垣が「三分転び」という呼称の工法で作られたりしています。これは勾配のことで1mの高さで基礎の奥行き30㎝長くなるため、基礎が地下深くでかなり突き出たところまで設置して、安定性を保ったりする伝統工法の一つもあります。その分、敷地の利用範囲が狭くなりますね。

 

とはいえ、北米などの開発行為をみていると、基本的に原地形をあまりいじらない、崖面や斜面をできるだけ保存する方式と比べ、わが国では工法の発達もあり、コンクリート文化とも言うべき状況で、どのような斜面でも切り土・盛土で垂直の擁壁を設置し、最大利用価値を求める傾向が70年代以降、とくに90年代後半以降は急速に進展しているように思います。

 

68年以降宅造法や都市計画法のたびたびの改正で、地盤自体の安全性が増したとはいえ、まだまだ大地震に対応できる造成工法がしっかりできているか、懸念されるところです。

 

その点、石組みは美しく、それが崩れても、敷地全体が崩壊する危険が少ないと思います。何よりも地域に石を産出するところだと、地産地消となり、地域の景観を形成・保全する重要な施策となり得ると思うのです。真鶴町は、それを実践してきた一例ではないかと思います。「美の基準」をもとに条例をつくり、その地域特性にあったまちづくりを始めて四半世紀以上経ちますが、このような自治体が今後もでてくることを期待したいです。

 

 


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