たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

教育現場について 最低賃金違反の記事を見て

2016-12-26 | 教育 学校 社会

161226 教育現場について 最低賃金違反の記事を見て

 

今朝の毎日(残念ながらウェブ情報で見つからない)では、「柏原でも最低賃金違反」という見出しで、東大阪市で発覚したのと同様な学校の警備業務で最低賃金違反があったことを取り上げています。

 

概要は次の通りです。①小中学校の用務員について、大阪府柏原市から市立小中学校・幼稚園の用務員業務を請け負った警備会社が13年から16年まで、最低賃金を下回る給与しか支払っていなかったこと。②しかも市教育委員会は、今年4月中旬、用務員が相談していた市教職員組合から対応を求められたにもかかわらず、「委託契約のため、用務員の勤務時間や賃金を指定できない」と応じず、その後同月末にあった用務員業務の入札に当該警備会社が入札参加し、業務を請け負っています。③警備会社は、当初は府の最低賃金と同水準の賃金で雇い入れていたが、最低賃金が引き上げられた後も給与を据え置いたため、13年秋から違法状態が継続していたとのことです。④警備会社はその後、請求のあった用務員について差額を支払い、それ以外については社会保険労務士に任せているとのこと。

 

この問題は、学校教育とは直接、関係ないことと見過ごしていいでしょうか。用務員は、学校警備も含めさまざまな業務を、ある意味で教師が担うことのできないが学校業務の中で必須の仕事を、担う重要な一員だと思うのです。生徒の中には、教育現場の周辺で、日常的に自然のふれあいをする大人の一人かもしれません。教師は教育者の顔を持ち、閉鎖的な学校という中で校則を含め一定の規律で動いてるでしょう。教師の顔という、普通の大人と違う面を出しているのではないでしょうか。それに比べ、用務員や警備員はそのルールの外、あるいは境界上にいる大人ではないかと思うのです。その大人が見せる対応は、生徒にとって身近に感じる普通の大人でしょうから、知らない大人とふれあえる数少ない場かもしれません。

 

その用務員に対して、最低賃金違反を継続的に行っていた業者に委託していたことは、無視できないと思っています。しかも教育委員会は、委託しているから、用務員の勤務時間や賃金を問題にできないとの弁解は疑問です。民間では場合により許容の範囲との理解(これも間違っていると思いますが)もありうるかもしれません。しかし、市教育委員会が委託しているのです。委託者として、労働者の勤務時間が長時間労働になっているかとか、とりわけ最低賃金違反になっているかどうかは、確認すべき事柄ではないでしょうか。

 

子どもの教育は、周囲の大人が適法な労働条件で働いているかどうかを学ぶことも、これからは重要な事柄だと思います。というのは、10代からアルバイト、あるいは仕事に就く若者は少なくなく、そして若い世代の非正規労働者は極めて大きな比率を占めます。そういう若い世代の労働者の中では、最低賃金が都道府県毎に決まっていること、それが毎年のように変更されることを知らない人も意外と多く、最低賃金違反の労働を強いられる状態を続ける人も少なくないのが現状ではないでしょうか。

 

こういった労働条件と同様に、消費者被害の問題も、生徒が社会人になるために、多くを学ぶことは、現代社会における病的体質の中で子どもたちを守るため、また、社会の健全化を図るため、必須の事柄になっているように思うのです。

 

最近、あるTVでちょっとだけ見たのですが、社会保険労務士が授業に参加して、子どもたちにブラック企業のやり口を、企業側、労働者側、それぞれを生徒に役割分担させて、その意識や問題性をリアルに感じる取り組みをしているのを見て、参考になりました。もしかしたら高校生だったかもしれませんが、小中学生でも理解可能だと思います。

 

現代社会を教科書だけで理解しようとしても、いくら公民とかの内容を充実させても、生身の人間としてその問題に直面したとき、対応できるか疑問です。

 

その意味で、学校教育の中で、教師に多くを求めることはできないと思います。外部からさまざまな実務家が現代社会の問題、むろんすばらしい取り組みも、子どもの未来や夢を育むために、さまざまな方の参加を検討してもらいたいと思っています。

 

他方で、これはより重要なことですが、教師の現在おかれている状況への配慮が喫緊の課題だと思います。すでに教師の長時間労働精神疾患の多さは長く問題が指摘されながら、あまり有効な方策がとられてこなかったのではないかと思うのです。

 

教師のこのような劣悪な条件は、教師による生徒への体罰、差別的言辞、いじめ黙認、さまざまなハラスメントなどの背景にあるとも思えるのです。むろんモンスターペアレントや上司である校長、教頭などからのパワハラなども適切な対応策がとられているとは思えません。文科省の調査でも、教師が上司に相談する比率が極めて低い現状は異常ではないかと思うのです。

 

また、教師の中にも、非常勤講師を含め次第に非正規的な立場の人が教育現場に登場するようになっていますが、それはある意味で多様な現代社会を子どもたちが身近に感じることで、それ自体を疑問視するつもりはありません。しかし、それら多様な教師形態について、適切な労働条件が確保されているか、気になっています。それは用務員という立場の人だけの問題でないことから、ここまで関連として書いてきました。

 

これらを管理・監督する立場の教育委員会は、戦後民主化の要請が強い時代もあったと思いますが、形骸化した民主化ではなかったかと感じています。現在の状況は、教育委員会自体、地域の市民とも、PTAとも、また、教師とも、少し離れた位置にあり、相互の情報交流が十分になされていないような印象を持ちます。

 

教育委員会の独立性を保証されたかのような制度設計ではあるものの、民意の反映があってこその独自で公正な権限行使が可能になると思うのですが、その前提を具現化するシステムが構築されないまま、今日に到っているように思えます。

 

きちんと整理して論理立てて考えたのではなく、用務員の最低賃金違反問題からここまで問題を広げることに少し躊躇を覚えながら、心優しい、しかし、しっかり世の中を生き抜く力を養って欲しい、子どもたちのための教育現場を期待して書いてみました。


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