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たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

自意識と混迷 <時代の風 自意識の進化=長谷川眞理子>と<東芝半導体売却 「日米韓連合」と契約 迷走の7カ月検証>を読みながら

2017-10-08 | 企業運営のあり方

171008 自意識と混迷 <時代の風自意識の進化=長谷川眞理子>と<東芝半導体売却

「日米韓連合」と契約 迷走の7カ月検証>を読みながら

 

長谷川眞理子氏は前者の記事で<私たちは、「自分」という存在を認識している。周囲の状況に応じて「自分」の行動を変えることは、どんな動物でも行うが、私たちは、そうしている「自分」を自分で認識している。それは、自意識、自己認知などと呼ばれる。>

 

この自分について、動物を対象に鑑のテストの話をされ、この鏡に映る自分を認識できることが自己認知の有無を判断する決め手の一つだが、それだけでは決まらないとニホンザルの例を引いています。

 

ではその鏡ですが、<私たちが現在使っているきれいなガラスの鏡が発明されたのは14世紀ごろだ。ベネチアングラスで有名なイタリア・ムラーノのガラス職人が発明したという話である。>ということはあのの画像と信じられてきた絵について、ご本人が見てもそうかなと思ったかもしれませんね。

 

わが国では古来の鏡、銅鏡は祀りのために使われたものでしょうか。銅鏡で自分の顔形を確認したり、美醜を話題にしたり繕ったりということはなかったのでしょうかね。

 

ところで長谷川氏はある著書を取り上げて自己を認識することから外界、自己の内面、sあらには人権意識にまで高まっていくというのを引用しています。

 

<スティーブン・ジョンソン著の「世界をつくった6つの革命の物語」(朝日新聞出版)では、ガラスの鏡の発明が、ルネサンス以降の絵画に「自画像」というジャンルを生み出し、やがて、自己の内面を語る小説という文学の誕生を促し、やがてはそれが個人の人権意識の確立にもつながっていく歴史が描かれている。個別の技術が、誰も思いもよらなかった社会の転換を生み出すというのは、こういうことだろう。技術は、ある一つの側面で生活を便利にするばかりでなく、人間が外界をどのように認識するかにも影響を与える。>

 

この新しい鏡という技術が自己認識を発展させたことから、次のような新たな技術により新たな問題が起こったかのような展開でしょうか。

 

<高度なレベルの自意識を持つ私たち人間は、現代のあらゆる科学技術を駆使して、「自分」だけに焦点を当てるようになってはいないだろうか? ペットボトルからスマートフォンまで、「個人」の自由と好みを満足させ、自分の興味にふけり、自分の感じたことをつぶやき、自撮りの画像を配信し、人々の注意を自分に向けさせようとする。「自己チュー」の横行である。>

 

この長谷川氏の立論には飛躍があるようで、どうもまだ理解できないでいます。鏡はたしかに自己認識になんらかの役割を果たしたかもしれません。しかしその機能はほんの一面ではないでしょうか。別に視覚障害の方を出すまでもなく、自分の顔形を鏡で見たからといって、自己認識が高まる人はあまりいないのではと思うのです(美意識の繊細な人は高まるかもしれませんし、芸術的なセンスのある方にも特段の影響があったかもしれませんが)。鏡は自己認識や外界との関係、とりわけ自己の内面への意識化にはあまり関係ないように思うのです。

 

さらに突然、<高度なレベルの自意識を持つ私たち人間は、現代のあらゆる科学技術を駆使して、「自分」だけに焦点を当てるようになってはいないだろうか? >と指摘する前提が、ペットボトルやスマホなどだと、ちょっとといいたくなります。むろんいずれも個人の要求に応えた部分と企業による顧客対応力や差別化の展開が生み出したものであることは否定しません。でもその商品や利用の仕方について、<「自己チュー」の横行である。>と切り捨てるのはいかがでしょう。

 

さらには<しかし、子どもが4、5歳になると他者の視点からものが見られるようになるのと同様、この自己チュー技術の社会も、そのうち他者や共同体全体への配慮を持つようになるのかもしれない。>これではまるで社会的な努力、それに向けた個々の鋭意で持続的な試みがまったく欠落しているようにさえ思えます。

 

私も四半世紀前には、ペットボトルの横行やポイ捨てなどについて、批判的な文書を書いたことがあります。しかし、大量生産・大量消費、大量破壊を踏まえて、当時からさまざまな社会的配慮が意識化し、たとえばリオサミットに結集された思い、サステナビリティという共通意識が全世界で芽生えていったように思うのです。そしてこれは個人の選択というより企業戦略、さらに資本主義の構造的欠陥という意味合いも議論されたように思うのです。

 

自己認識は、個人の問題として考えれば、生まれてから死ぬまで、適切な教育環境・規範環境を整備することにより、自己の欲望・欲求を一定程度抑制できるのではないかと思うのです。それは「見えざる手」によるのではなく、社会的なシステムが必要だと言うことです。

 

ところで話はがらと変わり、東芝問題です。東芝の東芝メモリ売却をめぐるこの7ヶ月の迷走は、とても自立した企業体とは思えない状況だったと思います。

 

この点、上記記事は、トップの綱川社長がすでに決断能力を欠いていたことを示しています。経産省の介入、銀行団からの足かせ、WDによる強固な反対活動、それに対し、鴻海や日米韓連合との駆け引き、それに加えて当事者である東芝メモリ社長の独自スタンスと、混沌した状況にあったと思います。

 

まさにそれは東芝本体が統一体としての企業統治、自己認識力を備えていなかったことの証左でしょう。しかもそれは東芝メモリ売却という現在の事柄にとどまらず、米原発企業WHの買収時、その後の経営管理自体ができていなかったことが、今日の問題の根源にあると言わざるを得ないのでしょう。

 

取締役会の合理的な意思決定(客観性やコンプライアンスを確保するため)を担保するため、社外取締役を早い時期から整えてきたわけですが、そういった形式だけでは、鏡の前のスーツ姿を飾るだけに過ぎないおそれがあります。そのことは2年前の不正会計問題が発覚したときの処理にも現れています。第三者委員会という名称の組織を作って調査させても、はじめから原発事業を全面的に対象にしていないなど、第三者性を欠落するようなやり方では、自己の問題を客観視することができないのは当然です。

 

その結果昨年暮れのWHの破産状態の発覚が遅れたともいえます。つまりは活用できる社会的な仕組み、人材がいてもトップにその意識がなければ、企業に根付いた膿をはき出すことは困難でしょう。それは鏡や先端技術ではないと思います。

 

最終的には意思決定を委ねられた、それぞれの段階の人の意識に委ねられているでしょう。いまの東芝は、残念ながら、人間の60兆の細胞を統合するだけの能力を欠いた状態で、多様に事業分化した総合企業を統御できないまま、呉越同舟でどこにいくかわからない状態ではないでしょうか。東芝の製品を使ってきた人、東芝の内外・末端で働く多くの労働者、その人たちのことが果たして考えられているのでしょうか。

 

鏡からすると、驚異的な先端的科学技術を備えた半導体を扱ってきた企業も、その統御能力がないと、危うい状態になる大いなる警鐘でしょうか。

 

今日はこの辺でおしまい。

 

 


異質の合体の未来は <東芝 売却契約を締結 半導体子会社、日米韓連合と>などを読みながら

2017-09-29 | 企業運営のあり方

170929 異質の合体の未来は <東芝 売却契約を締結 半導体子会社、日米韓連合と>などを読みながら

 

今日は和歌山まで出かけ、帰りはこのブログを書くために高速を利用して帰ってきましたが、やはり疲れます。和歌山では大阪講演内容をライブ放映するということで出かけました。第一東京弁護士会の佐藤泉弁護士が大阪弁護士会館で、近畿弁護士連合会主催研修セミナー「廃棄物処理法のコンプライアンスについて」と題する講演をされたのです。佐藤さんはたしか20年くらい前、日弁連公害環境委員会にニューフェイスで参加したような記憶で、どこか地方で会合があったとき初めてあったと思うのです。しっかりされていて当時から廃棄物問題に強い関心をもっていたと思います。

 

その後の日弁連会合でもしっかりした見識を示され、なかなかの人だと思っていたら、すでに環境省だったか、厚労省だったか(昔は廃棄物は厚労省所管でした)、審議会の委員をされていて、その後も継続してつとめられているようです。ほんとは大阪まで出かけていって久しぶりに挨拶をしたいとも思いましたが、最近は電車に乗るのも億劫になり、環境によくない車で和歌山まで行ったのです。佐藤さんの話は、残念ながら途中寝入ってしまったのですが、起きているときは、なかなか流ちょうな話しぶりで(そういえば初めて講演を聴きました)、内容も基礎から応用まで充実していたように思います。いつか機会があったらこのブログでも取り上げたいと思います。

 

ところで、政治の世界は一緒になったかと思えば離散するの繰り返しのようにも思えます。希望の党の動きは今後どうなるのでしょう。でも人間世界の常かもしれませんし、だいたい、地球自体がそうなんですからね。おもしろいと思ったのが、東芝メモリの売却をめぐって新しく生まれた会社の名前、「パンゲア」です。一時的に合体したものの現在の五大陸等に分裂する暫定的に存在した超大陸の名前ですね。

 

希望の党もややこしい組織に映りますが、この「パンゲア」という会社自体はもちろんのこと、東芝メモリの今後、さらには東芝本体がどうなるか、ほんとややこしや、ややこしやです。

 

ともかく昨日から今日にかけて毎日ウェブサイトに何本か関連記事が掲載されていますので、それを見ながら、ちょっと考えてみたいと思います。

 

東芝 売却契約を締結 半導体子会社、日米韓連合と>では、東芝メモリ売買契約を簡潔にとらえていますので、引用します。

 

<経営再建中の東芝は28日、半導体メモリー子会社「東芝メモリ」について、米ファンドのベインキャピタルが主導し、韓国の半導体大手SKハイニックスが参加する「日米韓連合」に売却する契約を結んだ。>

 

具体的にはまず<日米韓連合は、東芝メモリ買収のための特別目的会社 (SPC)「パンゲア 」を設立。>次に、<パンゲアに対し、東芝が3505億円を再出資するほか、ベインが2120億円、東芝メモリの取引先の光学ガラスメーカー、HOYAが270億円、SKハイニックスが株式に転換できる社債などで3950億円、アップルなど米IT企業が議決権のない優先株で合計4155億円を拠出する。このほか、銀行団が6000億円を融資し、買収額は合計2兆円になる。>

 

つまり、東芝が東芝メモリを日米韓連合に単純に売却するのではないのですね。特別目的会社というのは、私が会社法問題から離れた後19986月に成立した「特定目的会社の証券発行による特定資産の流動化に関する法律(通称SPC法)」に基づいてできるようになった会社で、私には初耳でしたが、金融界では結構使われているようです。

 

ウェブ情報で調べると、特別目的会社の<特別な目的とは、資産の流動化や証券化などを指し、利益の創出を目指した通常の企業活動の目的とは異なる。企業は、保有する資産を特別目的会社に譲渡することで、資産を企業本体から切り離すことができ、特別目的会社は、譲渡された資産を証券化して資金調達に協力する。これにより、企業の財務体質の改善が期待できる。>とのこと。

 

SPC法をチェックしないと、なんともいえませんが、パンゲアがそういった会社だとして、今回設立した方式はちょっと逸脱していないのか気になりますね。東芝が出資してパンゲアという特別目的会社を作るのはいいとしても、他の会社はどうい位置づけになるのでしょう。

 

他方で、東芝がパンゲアに出資するという形で、東芝メモリを買う、しかも買収代金2兆円のうち3500億円超も出費してですから、蛸が自分の足を食べている感じになりませんかね。

 

むろん経産省の意向が入ってのことだと思うのですが、米韓の会社に主導権を握らせないように、過半数をわずかに上回る0.5%を日本企業側で握るという戦略でしょうか。本来なら、官民ファンドの産業革新機構と日本政策投資銀行が出資して議決権者にならないとおかしいのですが、WDとの仲裁判断や仮処分などで敗訴して売買がご破算になるリスクを回避しようと言うことでしょうか。

 

とはいえ、<官民ファンド・・は当面は出資しないが、東芝が議決権を行使する際に指示する権利を持つ。>というのですから、この複雑な契約構造の中に、さらに開示されていないさまざまな条件が組み込まれているのでしょう。そして<東芝はWDとの係争解決後、株式の一部を革新機構と政策投資銀行に譲る計画だ。>というのですが、その場合の譲渡条件も決まっているのでしょうかね。そのときもめなければいいですが。

 

韓国企業の位置づけも判然としません。<SKハイニックスが取得できる議決権は10年間は15%以下に制限し、経営関与を抑える。独占禁止法審査を通りやすくする狙いで、SKは東芝メモリの情報から遮断される。>とされています。しかし、<SKハイニックスが株式に転換できる社債などで3950億円>と同社が最大の資金拠出者です。独禁法審査を通りやすくするということで、こんな厳しい制約が課せられてもSKは参加したいのでしょうかね。それに議決権割合も、出資額と全然整合性がなく(まそれ自体はありうるでしょうが)、なんだか契約書の内容がどうなっているのか気になります。

 

ベインがSKの約半分程度の拠出にかかわらず、議決権割合49.9%ときわめて優遇されているように見えるのですが、なぜでしょうね。

 

半導体売却、日米韓連合と契約 WD係争、独禁法審査…再建なお課題 足並み乱れ? 記者会見中止>の記事は、上記の資金拠出の内訳を図表でわかりやすくしていますが、それ以上に、見出しの通りベイン1社が会見しようとして、キャンセルとなった経緯を見ると、どうも内情は固まっていないのかもしれません。

 

この「パンゲア」の未来予測は簡単ではないですが、<半導体メモリー市場では、世界シェア首位の韓国サムスン電子が巨額の設備投資を継続して攻勢を掛けている。東芝メモリが対抗するには本来「巨額投資を果断に進めることが不可欠」(東芝幹部)だが、足並みがそろわない日米韓連合の下、スピード経営を行えるかは分からない。>というのが実態のように思えます。

 

WDとの紛争は容易に解決できる状況にはないと思われるのです。お金のない東芝が債務超過を回避するために、打ち出の小槌になるはずの東芝メモリを売却して2兆円を獲得しないといけないはずなのに、その前に3500億円も出さないといけないのですから、これで債務超過を回避できると考える方が不思議です。WDとの紛争解決のあかつきには、官民ファンドに株式譲渡するのでしょうか、その可能性が乏しいから官民ファンドが参加しなかったのではないかと思うのですが、形勢逆転の見通しがあるのでしょうか。それに資金力がありそうなSKが転換社債の行使を制限され、10年間も議決権15%以下で、しかも情報から遮断されるのであれば、サムソン電子に対抗するような巨額の投資を継続するとは思えないですね。パンゲアもたしかに一瞬に分裂したわけではないのですが、地球時間と人間時間、しかも瞬時を争う企業競争の世界では分裂は一瞬に起こるかもしれません。

 

と不安な話ばかりでは困るので、希望の党の言葉のように、「希望」をもって合体の行方を見守りたいとは思います。

 

今日はこの辺で終わりです。


企業の力と魅力 <シャープ JDI再建「国内連合で」 戴社長、支援に意欲>などを目にして

2017-08-11 | 企業運営のあり方

170811 企業の力と魅力 <シャープJDI再建「国内連合で」 戴社長、支援に意欲>などを目にして

 

今朝の毎日朝刊は一面トップで<東芝赤字9656億円、国内製造業最大 延期の決算発表>と東芝が期限切れ寸前の決算で約1兆円の赤字決算と報じた上、2面、3面では<東芝監査法人と玉虫色決着 決算「限定適正」><東芝「限定付き適正意見」監査限界浮き彫りに>との見出しで詳細に報道しています。

 

そして<内部統制については「不適正」とし、決算にも「一般に公正と認められる基準に準拠しない」との意見>といった「限定付き適正」といった摩訶不思議な結論でようやく上場維持となったものの、なお綱渡り状態です。

 

その東芝、日立、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して124月に設立されたジャパンディスプレイ(JDI)は、赤字続きで、昨日の毎日では<有機EL転換遅く サムスンに押され>で、東入来会長が<「ラストチャンスだと思って構造改革をやり切りたい」>と会見で決意を示し、<今回の構造改革では、主力だった液晶パネル事業に代わり、有機ELパネル事業を経営の軸に位置づけた点が大きな変化だ。東入来会長は「有機ELなくしてスマホビジネスの将来なし。戦略的にかじを切った」と方針転換を強調した。>というのです。

 

しかし、ウィキペディア情報では<スマホなどの小型端末向けの有機ELディスプレイは、サムスンディスプレイのシェアが2016年時点で97.7[12]と、ほぼ独占している。韓国のLGのほか、中国最大手のパネルメーカーである京東方科技集団なども2014年に携帯端末向けパネルの量産を開始したが少量生産にとどまり、サムスンのようにパネルを外販するには至っていない。2016年現在では中国・韓国メーカーの高級スマホを中心に有機ELディスプレイの採用が進んでいる。>というのですから、この段階でどういう具体的な市場戦略があるかを示さないと筆頭株主が官民ファンドの産業革新機構ではきちんとコントロールできないおそれがありますね。

 

ここまでが前置きです。ここで見出しの記事が登場です。

 

<シャープの戴正呉社長は10日、経営難に陥っている液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)の再建について、「シャープが主導すれば自信はある。黒字化でき、技術流出もない」と述べ、支援に強い意欲を示した。液晶の主要技術を国内に保持するために日本企業で連合を組み、業界首位の韓国メーカーや台頭する中国勢に対抗したい考えだ。>

 

シャープ、そして背後の鴻海という企業は、次々と企業・事業結合ないし提携という打ち出の小槌を降り続けています。東芝の半導体事業の買収参画もまだ続いていますね。シャープの買収はまだ一年しか経っていないですね。こんどはJDIの事業に参画しようというのでしょうか。市場支配力への飽くなき戦略でしょうか。むろんどんな企業体でも大なり小なりこれがないところはないでしょうが、鴻海は別格のようにも思えます。

 

いや、昔の日本企業もそうだったと回想にふける暇はないでしょうね。東芝も事業拡大を求め続け、現在は迷走しているわけで、綱川社長の留任について有力なステークホルダーの意見も厳しいのは当然でしょう。

 

ではシャープの戴正呉社長は、この一年間でどのようなシャープ改革を行ってきたのでしょうか。ちょうど毎日が3日間の連載でその一端を取り上げています。

 

シャープ変転/上 鴻海流「信賞必罰」浸透 太陽電池、総出で営業

シャープ変転/中 液晶、世界へ再挑戦 8K前面に独自路線

シャープ変転/下 人材確保、再建の鍵 買収1年、問われる真価

 

買収したシャープについて、<経営状況を調べた鴻海の郭台銘会長(66)は「清の皇帝のようだ」とあきれた。成功体験をひきずり、経営が傾いても高コスト体質から抜け出せない姿を、3世紀続いた末に衰退した中国最後の王朝に重ね合わせたのだ。>と手厳しいです。

 

その象徴がシャープの太陽電池事業ということで、撤退も検討されたそうですが、<「ぜひ商品の良さを知ってもらおう」。奈良県天理市の研修施設に昨年12月、設計や品質管理といった太陽電池に関わる社員数十人が集まった。3カ月は通常の業務を離れて、太陽電池のセールスで販売会社社員と一般の住宅を回った。関西地区の営業を統括するシャープ子会社の三島広史さん(43)は「それだけ追い込まれていた」と振り返る。信賞必罰を旨とする鴻海の傘下となり、危機意識が早くも浸透していた。 >とセールスのあり方の変更を社員全員が真剣に取り組んでいます。

 また、<割高だった原材料購入契約の見直しもあり、太陽電池事業は17年3月期に3年ぶりの営業黒字を確保した。>のですから、やはり変化は明確に現れたのですね。

 

でも<国が普及を目指す省エネ住宅「ゼロ・エネルギー・ハウス」向け機器の販売に力を入れ始めたが、“太陽電池バブル”崩壊後の需要減から国内外で抜け出せておらず、依然として厳しい事業環境は続く。>これだけで<鴻海流「信賞必罰」浸透>という風に理解できるかはまだなんともいえませんが、事業の赤字状態を黒字化したという客観的事実は、短期的には事業化に関わる担当社員の意識改革の結果ともいえるでしょう。ただ、それ自体はたいていの企業が心がけているわけで、それがシャープの場合清国の末期のように張り子の虎状態だったかどうか、もう少しみないと的確には評価できないように思うのです。

 

2に取り上げたのは8K路線の選択です。<有機ELでLGに後れを取ったシャープは、優位性がある8Kを戦略の中心に据えたのだ。>もう有機ELではサムソンに勝てないとあきらめているように見えるのですが、それがよくわからないのです。たしかに液晶の成功体験にこだわってその事業拡大に邁進した結果シャープは鴻海に身売りしたのですから、将来性のある事業選択をどうするかは最も重要です。

 

<「有機ELは韓国勢が先行している。郭会長から『追随はしたくない』という話があった」と明かす。>というのですが、それは合理的な判断といえるのでしょうか。

 

私にとっては4Kだろうが8Kだろうがあまり大きな違いがわかりませんし、それぞれに魅力を感じるほどの尺度をもっていないので、その選択の合理性を判断するだけの材料がありません。ただ、記事は次のように疑問符的な問いかけをしています。

 

<普及に向けた鍵になるのは、放送局のスタンスだ。国内では18年12月に衛星放送で4Kと8Kの実用放送が始まり、それに合わせてシャープが8Kテレビを発売する予定だ。だが、NHKと各民放が参加する4Kに対して、8KはNHKだけ。4K放送は既に世界的な潮流となっているが、より大きな投資が必要になる8Kには多くの放送局が二の足を踏んでいるからだ。>

 

そして<それでも鴻海は世界的に需要が伸びると判断して、中国や米国で8K向け液晶工場の建設に突き進む。米ウィスコンシン州の工場建設は先月、ホワイトハウスでトランプ大統領と郭会長が並んで発表した。そこで作った液晶でシャープがテレビを生産する。シャープが経営危機に陥った主因は、液晶への過剰投資。「シャープを変える」と乗り込んだ鴻海が頼りにしたのも、やはり液晶だった。もう失敗は許されない。>

 

第3はさらに疑問符が大きくなっているようにも思えます。

 

<東京・新橋のビルの一室に、2016年11月に設立されたベンチャー企業「Team(チーム)S」の小さなオフィスがある。社名の「S」は、シャープの頭文字と同社の創業理念「誠意と創意」に由来する。メンバーは8人全員がシャープの元社員で、うち4人は液晶への過剰投資で経営危機に陥った頃に辞めた。

 「スマートフォンと“下敷き”をつなぐ通信の新しいアイデアを思いついた」。今月2日、オフィスに集まった5人が開発中の製品について意見を交わした。下敷きと呼ぶのは、B5サイズほどで湾曲する厚さ数ミリのシート。無線でつながったスマホの表示画面をそのまま映し出して、指で操作できるユニークな製品だ。さまざまな企業と連携して開発を進めており、19年春にも世に出る予定だという。>

 

山椒は小粒でもぴりりと辛い、とはよくいったもので、元シャープ社員のメンバーは少数精鋭の魅力を遺憾なく発揮しているように思えます。

 

上記のチームSのリーダーは<入社した1984年ごろ、社員の平均年齢は27歳前後で「『とにかく何でも挑戦してみろ』という自由な社風が好きだった」と振り返る。希望退職を経て、現在の平均年齢は43歳を超えている。>と問題を指摘しています。

 

この連載は最後に、<台湾の鴻海精密工業がシャープを買収して12日で1年。鴻海流の徹底したコスト削減と、時代を先取りするユニークな製品を生み出す「シャープらしさ」は両立していけるのだろうか。鴻海の郭台銘会長(66)は「数字(利益)さえ上げれば文句は言わない」(シャープ幹部)という。再び成長軌道に乗り、輝きを取り戻せるか。シャープが真価を問われるのはこれからだ。>と数字の拡大を目指す企業家精神とシャープが本来もっていた自由で闊達な雰囲気で作られた独創的な商品の魅力と折り合うか、将来の行方を注視しています。

 

そして鴻海の郭台銘会長が有機ELをシャープの事業戦略から外す一方で、見出し記事ではシャープの戴正呉社長がJDI再建支援を発表しています。<JDIは再建の柱に有機ELを据え、2019年の量産化を目指す構えだ。シャープとしては、JDIと「日の丸連合」が組めれば、有機ELが強化でき、世界的な競争力を確保できるメリットが期待できる。>

 

Kと有機ELの二兎を追う者は一兎をも得ずということになりはしないか、誰もが不安を感じるのではないでしょうか。いや、鴻海全体ではちゃんと制御できているというのでしょうか。

 

その巨大な力、それを支持する資本マネーの流れは、グローバル社会では当然かもしれませんが、その企業が本当に魅力的な存在であり得るのか、社員にとって、またその商品を選択しようか考える消費者にとって、思案する問題かもしれません。

 

今日はこのへんで終わりとします。


郵便と不動産業 <日本郵政 野村不動産買収へ 数千億円規模・・>を読んで

2017-05-13 | 企業運営のあり方

170513 郵便と不動産業 <日本郵政 野村不動産買収へ 数千億円規模・・>を読んで

 

夜半の雨音の激しさで、ひょいと目覚めてしまいました。といっても明け方近くです。夜半の雨というのは季語にならないのでしょうかね。子規の俳句をちょっと見たのですが雨はそれなりにありますが、「夜半の雨」となると見つかりませんでした。他の著名な俳人もないのでしょうかね。

 

真夜中に聞く雨音はなにか情緒があっていいです。とはいえこれが鴨長明や西行が住まいとしたような庵だと情緒を感じてばかりいられないかもしれません。良寛が詳細にその様子を謳った五合庵では極寒だけでなく豪雨もたまらんでしょうね。

 

でも私は現代の家に住み、台風でも豪雨でもなんでもこいです。夜明け前の雨景色はすばらしいです。薄もやの中で風もなく雨足が垂直に五月雨のごとく落ちているのです。その風景はよりロンドン近郊の田園風景に似た雰囲気を醸し出しています。霧なのか靄なのかどちらでもいいですが、薄ぼんやりとした中に瓦屋根としっくいの家並みがぼんやり浮き出ていて、周辺は薄緑色に染まった丘陵地の静寂な佇まいがいいです。

 

目の前にはスギとヒノキの林が超然として屹立していて、その葉っぱの鮮やかな緑を背景に雨脚の長く伸びた線が見事にカミングアウトしています。広重の世界を見るようでもあります。

 

スギ・ヒノキが雨に打たれる様子をじっと眺めていると、ふいにそういえば防水性の強い木だなと思いながら、カナダやアメリカの戸建て住宅の屋根を思い出しました。わが国では、檜皮葺といえば神社などの屋根葺きで有名ですし、杣人がぶり縄で登りながら、見事に檜の皮を剥がしたり、宮大工がその檜皮を竹の釘を使って重ね合わせて、作る様子は何度かTVで見たことがあります。素晴らしい伝統芸ですし、檜が持つ防水性を太古の昔から利用してきたことを証明してくれているように思うのです。

 

他方で、こけら葺きは、法隆寺、慈照寺などで使われていて、同様に古墳時代から利用されてきた板葺きの一つですが、最近の住宅では別の簡易な材料に代わって、スギ・ヒノキ・サワラなど木材は使われなくなっていますね。

 

で北米の戸建て住宅の屋根に戻りますが、その分譲地の良さの一つが屋根葺材料です。Wood shinglesとか、Cedar Roofingとか言われていて、薄い角形の小さな板を張り付けて屋根材にしていますが、ヒマラヤスギなど針葉樹で防水性の強い材料が使われています。その屋根が時間が経つと、より一層苔むした感じであったり、情緒のある雰囲気になり、それはやはり長く利用し続けることを前提に使われているように思うのです。

 

わが国では便利で安価な代替物を利用していますが、20年も経つと逆にみすぼらしい状態になり、多くは取り替えたり、別の材料で葺いたりしているのではないでしょうか。

 

折角、わが国にもスギ・ヒノキなどの針葉樹が樹齢50年を優に超えて伐期を迎えて放置されている状態ですので、なんとか屋根材などにも活用できないものかと、ふと思ってしまいました。

 

さて、今日のテーマに入る前に、少し関係のない前置きが長くなりました。個々で本日のテーマに入りたいと思います。今朝の毎日一面は、<日本郵政野村不動産買収へ 数千億円規模、安定収益柱に>という見出しで大きく取り上げていました。その隣にソフトバンクの5500億円投資も並んでいましたので、この点にも少し触れたいと思います。

 

さて日本郵政が野村不動産の買収を検討するということ自体、資本主義社会における企業の自由な選択といえるかもしれません。しかし、日本郵政は、07年の民営化までは公社でしたし、現在も<政府が約80%の株を握る。>だけでなく、<従業員数は約25万人。>とマンモス企業であり、実質、まだ政府系の事業体に等しいように思うのです。

 

その日本郵政が、郵政事業本体の収益改善を図れず、<海外事業の成長を目指して、2015年に日本郵便を通じ6200億円をかけて買収した豪州物流会社「トール・ホールディングス」は、経営不振のため17年3月期に4000億円の損失を計上>したばかりです。この企業買収の経営判断はどのように検証されたのでしょうか。

 

企業の買収は、単に投資目的であれば別ですが、買収側企業としては、当該買収先の事業を本来の事業に有機的に統合させることにより、収益強化、拡大を図るのが常套策ではないかと思います。ソフトバンクが数々の買収を繰り返してきていますが、まさにいい例でしょう。

 

日本郵政の場合、先の海外事業の成長を目指すということと、国内の郵政事業とをどう連携し、全体として事業拡大を図るという戦略が示されていたのでしょうか、疑問です。

 

今回の野村不動産の買収検討ですが、わずかな情報では軽率に判断できませんが、基本的にはよほど採算性・公益性を見通す合理的な根拠が示されないと、安直な選択として、メビウスの帯のごとく同じ過ちを繰り返すことになりかねないように懸念します。

 

たしかに<郵政は、傘下に2万4000以上の郵便局を持ち、保有不動産の価値は2兆円以上にのぼる。13年と昨年6月に商業施設「KITTE」を開業。不動産開発での収益向上を図っていた。>ということですので、大地主であることから、ま、三菱地所や三井不動産のような一面はあるでしょう。

 

しかし、上記の商業施設がどういうもので、どのような収支状況か不明ですが、おそらく自らにノウハウがないので、借り物でやっているのではないかと思うのです。不動産開発は極めて高度なノウハウが必要ですし、その市場も細分化し、さらに発展しているわけで、武家の商いではとても太刀打ちできるはずがありません。

 

では野村不動産は最適なんでしょうか。いや違うと言うほどの知見があるわけではありませんが、多少、というかほんのわずかな知識はあります。何回かは訴訟の相手になったことがあります。いや、野村不動産が最初に開発した鎌倉市梶原(頼朝を救ったあの梶原景時の家系の土地とも言われています)の分譲地は、その中の戸建て住宅地が私が担当した成年後見の管理財産の一つでしたので、なんどか訪れたことがあります。たしかに古いですが、緑豊かで北鎌倉の奥まったいい環境作りをしていると思いますし、住宅も割合よくできていました。

 

それと隣接して鎌倉市中央公園があり、これがまたいいので、なんどか訪ねていますが、立地も悪くないです。とりわけ公園はたしか都市公園としては極めて異例ではないかと思うのですが、森林を自然状態に近く管理したり、湿地も多様で、田んぼもあったりと、これからの都市公園の見本になるようなところではないかと思っています。

 

つい余談が過ぎましたが、野村不動産の事業内容を見ると、私が関係したマンション事業がかなり広報などでも力を入れていて、他の戸建て分譲地や事務所ビル、商業施設などもありますが、とりわけ商業施設などはそれほどやっていない印象を受けています。

 

IRなどをきちんと見れば分かることだと思いますので、事業毎の収益力などは客観的な数値を基に議論するのが筋でしょうね。

 

ただ、日本郵政が保有している不動産の所在地ですが、とくに各地の中央郵便局は、私の狭い知識でも、駅前(たとえば横浜駅)とか、市役所そば(横須賀市)など、23階建の低層建築物で、公共空間の一部となっています。このような立地での開発について、野村不動産が過去に経験があるのか残念ながら知りません。三菱地所クラスになると、公共的空間のより効果的な活用を図ったり、ビジネスチャンスを拡大するテナントの吸収などに多大なノウハウがあることはよく知られていると思います。

 

そんなおおざっぱな感覚ですが、野村不動産の開発マインド自体は決して悪くないと思うものの、日本郵政の不動産を効果的に活用できるノウハウを有しているかとなると、すこしクエッションがつくのではないかと思うのです。

 

ソフトバンク買収と投資でグループ成長 一方で失敗も>によれば、ソフトバンクの成長が買収と投資で急激に伸びていることが分かります。そのソフトバンクでも失敗とされる買収が指摘されています。しかし、いずれも自己の事業を適切に評価し、将来性を見込み、買収・投資によって、いかに垂直的あるいは水平的な統合を効率的に成し遂げることができるかといった、事業の発展性をしっかり見込んでやってきたように思うのです。

 

通常、企業が買収・提携先を選択するとき、対象の絞り込みを合理的な基準で行うはずで、あえて野村不動産を対象にした、それも唐突に、他に選択の余地がないかのように、発表したのは、いかにも不自然な印象を感じるのは私だけでしょうかね。

 

他方で、郵便局は、極めて公共性の高い場所であり、その利便性は高く、多くの人が利用するところです。その利便性を損なわないような開発を目指してもらいたいですし、と同時に、場所的有利性を活用し、郵便事業と他のさまざまなサービス事業との相乗効果を測るような開発計画を打ち立ててもらいたいですね。さらにいえば、いま政府が目的とすべき、健康増進や社会福祉の進展のために、モデルケースとなるような施設計画であって欲しいとも思うのです。いずれにしても日本郵政本体では、そのような企画は無理かもしれませんので、提携なり買収先が率先して日本郵政らしいスタイルの不動産開発をしてもらいたいと期待しています。

 

今日は前置きが長くなったこともあり、2時間近くになりましたので、この辺で終わりとします。


株式会社と機関投資家 <議決権行使、機関投資家に開示圧力 「なれ合い断つ」金融庁議論>を読んで

2017-02-21 | 企業運営のあり方

170221 株式会社と機関投資家 <議決権行使、機関投資家に開示圧力 「なれ合い断つ」金融庁議論>を読んで

 

今日は北風が冷たく、また冬に舞い戻った感でした。和泉山脈は冠雪でしょうか白っぽい姿、風がどっちから吹いてくるか、ただ寒い印象と、和泉山脈の冠雪のような様子に、北風だったと、今思っています。

 

それはともかく終日いくつかの事件の書類書きに追われて、来客との対応もあり、業務時間終了の時間になってようやく書く余裕ができました。久しぶりに残業?して、この千日回峰行ならぬ千日ブログを休まず続けようかと、少し躊躇しつつ、書き始めています。

 

テーマはとしばらく新聞記事やウェブ情報を見たのですが、どうも書く気分にならない事件・情報ばかりで、つい見出しの記事に、以前から気になっていたことと関係して、少し書いてみようかと思い、ざっと適当にウェブ情報を集めて、さてどう書いていこうか、また歩きながらというか、書きながら、適当な思いを綴るしかないな、とため息まじりにタイピングしています。

 

株主総会の形骸化論は、昔ほど言われなくなりましたが、それでもぱっと関連記事を見ると、昨年の総会開催日ころの話題は、その集中割合が激減しているというニュースであって、その総会での議題や議事が充実しているかといった話題はないに等しい状態で、悲しい限りです。たとえば毎日記事では<進む分散化 29日ピーク、集中率32%で最低>といったことです。

 

という私自身、株主総会に関心を抱かなくなって20年以上経つので、なぜわざわざブログの話題にするのか、自分でも不思議です。

 

どうも気になることがいくつかあり、素人ながら、全体像が怪しい雲行きを感じるのです。たとえば、たしかに現在、株価は上昇気流にあります。アベノミックスの成果という見方が大勢かもしれません。さらにトランプ効果といったことも好影響かもしれません。

 

そして、株主総会や会社自体の健全性がよくなったかと言われると、少しはよくなったと思うし、コンプライアンスやガバナンス、社外役員制などさまざまな制度化、法整備も相当進んだことは確かでしょう。

 

しかし、会計不正は大胆に行われ、一体、この間、どのくらいの企業が問題になったか、そのたびに第三者委員会を設置して調査・勧告等が行われてきましたが、一向に改善されない実態はあちこちに見られ、表ざたになったのは氷山の一角に過ぎないと思わざるを得ないのです。

 

会計不正だけでなく、事業上の不正もあります。そういった問題を監督したり、是正する仕組みが出来上がっているはずなのに、機能していないのです。

 

こういった前置きを前提に、今回は毎日記事にある機関投資家の問題と取り上げたいと思っています。そこでは主に、<生命保険会社や信託銀行など、顧客のお金を預かって運用する機関投資家に対し、株主総会での議決権行使の内容を開示するよう求める圧力が強まっている。>として、従来からの機関投資家が対象となって、金融庁も経産省も議論しているように思うのです。むろんこれら従来からのいわゆる専門的な機関投資家こそ、しっかりステークホルダーとして、株主総会の在り方、ひいては経営陣の経営姿勢を問うことを求めること自体は、方向性として妥当だと思います。

 

しかし、そこで問題にしている議決権行使について、議案への対応の開示を求めるといった程度ですら、その専門的な機関投資家は拒否反応を示していること自体、経営を適正に監督する役割を果たすといった期待をもてないと思わざるを得ません。

 

総会自体が活発なときが人事案について紛糾しているような場合で、むろんそこには経営上の問題がクローズアップされることと関係することは確かですが、経営上の問題はそれ以外にも多様な議案の中に現れるわけですので、さまざまな議案について、適切に議論され、採否にどう対応したかは、機関投資家としての重要な役割だと考えますが、そういう実態は現在あまり見られないと思います。

 

で、問題は、そういった専門的な機関投資家については、それなりに金融庁や経産省が研究して、適切にコントロールしようと努力している側面はあるのですが、機関投資家と言っても様々です。

 

ウィキペディアによると、機関投資家とは、<顧客から拠出された資金を、有価証券(株式・債券)などで運用・管理する法人投資家。運用資産額が大きく、動かす金額も大きいため、金融市場に占める存在感は大きい。一般に大規模で長期運用の投資をする法人投資家を機関投資家といい、ヘッジファンドなど短期運用の法人投資家は機関投資家といわないことが多い。>とされています。

 

具体的な例としては、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、投資顧問会社、証券会社、投資銀行、銀行などとすぐにイメージできる企業のほかに、年金基金や共済組合なども含まれています。

 

この年金基金や共済組合は、アベノミックスで株式投資を拡大しています。しかも何十兆円という巨額の株式投資が行われています。株価の上昇は、こういった本来、株式投資されなかった、年金基金をはじめ少なくない他の法人も株式投資に参加していることが影響しているのではないかと思います。

 

それだけではありません。日銀が株式を買い支えているとも言われています。いや、実体経済がプラスに動いているとか、生産性があがっているとか、株価上昇の理由を挙げるのが大勢ですが、ほんとにそうでしょうか。

 

日本有数の有力企業と言われた東芝でしたが、相次ぐ不正会計の発覚、そしてついには米原子力企業のウエスチングハウス(WH)の買収から、そののれん代の過大評価2000億円余、ついにはその事業業績自体が粉飾に類するような7000億円余の減損を出し、企業消滅の危機に瀕しています。

 

株主総会が機能していたらとか、機関投資家が適正に議決権行使したり、経営側と対話をしっかりしていたらとか、といったいま、経産省や金融庁が求めているような機関投資家のなすべき役割を的確に行使したとしても、東芝のこの虚妄のような事業実態はつかむことができなかったでしょうし、改善も困難だったと思われます。

 

それでも機関投資家がしっかり経営側と対話して、経営実態について資料開示を求めて適正な事業運営に協力する状況が生まれれば、少しは違ったと思います。また、多くの企業もまた、経営者の自律的なコンプライアンスやガバナンスだけに頼るより、外部からの監視が必要でしょう。

 

そういう視点に立てば、年金基金や日銀といった組織が株式投資に関与している現状は、かれらが適正なステークホルダーとして機能するのであれば別ですが、私は少なくとも年金基金やそれに類するファンドの場合、それぞれが妥当とする価値を満足しているかどうかといった視点や、適正な企業運営が行われているかといった視点で、より厳しい関与が必要な時代だと思うのです。

 

とってつけたようなテーマと思い付きの議論になってしまいました。いつかこれも整理してもう少しまともな議論になるよう努力したいと思います。延長時間も過ぎてしまいました。今日はこれでおしまいです。しりきれトンボですが。