白夜の炎

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中国の台頭と日本の未来

2012-01-06 16:06:59 | アジア
エコノミストが中国の台頭をデータで検証し、同時にその台頭を阻止することは誤りだとの主張を展開している(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34255)。

 タイトルをクリックしていただくと、中国とアメリカ経済の比較の表が出てくるが、今の中国はもはや日本など問題にせず、21世紀の超大国に向かいつつあるという姿が浮かぶ。

 日本の経済停滞の原因の一部は、このような中国の、あるいは他のアジア諸国の台頭にキャッチアップできていないためではないだろうか。

 ゴードン・ブラウン(イギリス前首相)が、ヨーロッパの経済危機にあたり、「日本のように閉じこもってはいけない」と発言したと記憶しているが、確かに日本は―3.11以前よりずっと以前から―国際的にアジアの発展、特に中国の発展にうまく自国を適応させることができず、この地域の成長から「落ちこぼれてきた」ように見える。

 特に小泉政権の時期(2001-2006年)、中国・韓国という新たなアジアの牽引車と無用な対立を引き起こしたことによって、それは決定的になったのではないだろうか。

 あの時期日本の新幹線の対中・韓国輸出の機会が失われたが、それだけでない。今日見られるように、中国は日本を見切った姿勢を持つようになった。また日本側では右翼的見解が跋扈し、それが論壇の主流にのし上がってきた(今日の橋下ブームはその後を継いだものだと言えよう)。

 そしてあの時期こそ、大国中国がくっきりとその姿を現した時期だった。当時日本駐在の王毅大使が、日中韓は力を合わせて全く新たな繁栄を形作る可能性があるが、日本はそれを逸するかもしれない、と『人民中国』にのせた文章に書いていたのが思い出される。

 中国の将来に関しては様々な意見があるが、一部日本国内にある中国経済崩壊論は、全く根拠のない議論である。このての議論はここ数十年一貫して存在するが、一度として当たったためしがない。

 また国際社会―この言葉が何を意味するかはそり自体問題ではあるが―の信頼ということについて考えても、少なくとも欧米諸国が、日本より中国の方を政治的対話の相手として信頼できる存在だと考えていることは確実である。

 アメリカはかつての敵国日本より中国の方を信頼している。周恩来とキッシンジャーの対話にもそれはよく表れている(『周恩来キッシンジャー機密会談録』岩波書店 2004年)。イギリスでは今でも戦時中の捕虜虐待問題等に関連して、特にエリート層の対日不信が深刻である(『戦争と和解の日英関係史 』法政大学出版局 2011年)。

 個人的体験であるが、8月にオーストラリアに滞在していたとき-今から15年ほど前のこと―現地のテレビで日本軍によるポート・ダーウィン空襲の体験者へのリポートが流されていた。またイギリスのテレビ局―BBCだったかITVだったかは覚えていないが―作成のビルマルート建設に関するドキュメンタリーが流されていたが、その中では中国側で建設にあたったかつての地域住民-取材時は老人たちである―へのインタビューを行っていた。番組の全体的なトーンは中国の友人たちを訪ねる、といったものだった。彼らはかつてともに敵国日本と戦った「同志」なのである。

 エズラ・ボーゲルは「日本が国連の常任理事国になることはない」と日本の新聞のインタビューで答えていた(記憶だけで申し訳ないが)。

 同時に中国は1996年以降上海協力機構を成立させ育ててきた。当初ソ連崩壊後の国境画定作業から始まったこの組織は、今では正式加盟 6ヶ国、オブザーバー 4ヶ国、対話パートナー 2ヶ国、客員参加 3ヶ国におよび、その中には対立厳しいインドとパキスタンもふくまれている(オブザーバー)。

 歴史的な対立をこえ-その対立は例えば印中間の国境問題も、印パ対立ももとはイギリスのインド支配に起因しているのだが―、ユーラシア大陸の中央部から、中東、欧州、アジアにまたがる、西側とは異なる世界的政治機構が成長してきている。

 中国の人々は、自国が外国の侵略にさらされている時にはそれと戦って独立を実現し、国内の政治的対立には革命で決着をつけた。革命後の動乱に周囲の国を巻き込むことはなく、混乱をおさめたのちは経済建設に邁進して今日を築いた。

 これからの10年で中国は間違いなく世界の超大国になる。欧米が作ってきたのとは異なる国際秩序を作る。なおかつそれを欧米との決定的対立を避けながら実現するだろう。もし日本人がいつまでも「中国は貧しい」「中国はコピー大国」などといった、中国を「下に見る」姿勢を変えなければ、間違いなく日本は中国が築き上げる新世界秩序から排除され、貧しい周辺国に転落していくことになるだろう。


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