白夜の炎

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日本経済再建は容易なことではないと思う。

2015-03-31 19:17:27 | 経済
 日本経済の再建は容易なことではないと思う。それは先進国だからだ。

 例えば70年代80年代のアメリカ経済復興の道筋を考えてみたとき、どうだったろう。先進国アメリカは、自国の代表的産業だった自動車、半導体、各種機械等が次々と競争力を失い、大きく後退していった。

 その再建はもちろんアメリカの各種の対日政策によるところも大きかったが、結局はIT・デジタル革命をアメリカ発で起こすことによって実現したといえるのではないだろうか。

 自動車等、あれほど日本に様々な圧力をかけたものの、結局自動車産業はかつての輝きを取り戻せていない。政府の施策は企業自体を延命させることはできても、飛躍させることはできないのである。

 ではデジタル革命はなにによって可能になっただろうか。

 第一にアメリカの教育・研究機関の水準の高さと開放性の高さがあげられるだろう。だからこそ世界中から才能が集まるのである。

 第二に革新的研究に対する公的資金の大量提供である。国防総省をはじめとする様々な機関が実に幅広い分野に資金提供を行っている。また各種財団による資金提供もきわめて広範かつ手厚いものがある。またこれら財団は研究そのものの方向付けや支援においても大きな役割を果たしている。

 第三によく言われることであるが、研究をビジネスに転換する環境-企業-がしやすいことがある。単に資金を提供するだけでなく、ビジネスとしての成長をサポートする有稀有無形のインフラが豊富なことは日本とは比較にならない。

 しかし以上の他もう一つ指摘したいことがある。それはデジタル革命を主導した若い才能たちが本気で信じた「理念」「理想」である。ステープ・ジョブズだけでなく、当時夢を見ていた多くの高校生・大学生たちは、IBMの大型マシーンによる新たな知的能力の独占に危機感を持ち、それらを一人一人の個人に「解放」することを真剣に目財したのである。今日それが十分に果たされているか否かは別にして、当時若かった彼らがそう信じていたことは疑いを入れない。ダイナブック構想やネットワーク化の様々な試み。私が最初に購入したPCであるアップルのSE30には大なカードという一種のプログラミング可能なデータベースソフトがついていて、なおかつ同じアップルのPCであれば簡単にネットワーク化することが出来た。

 このような理念を彼らが信じたのは、アメリカ社会のもつ開放性と、やはり「自由で自立した個人」から出発する、アメリカ社会の基本的なありようが前提にあるだろう。だからこそ彼らは理想を信じることが出来たし、仲間を見出すことが出来たのである。

 今日のデジタル社会は、それまで一般人には見ることも想像することもできなかったものが、人々の手によって実現されたその結果である。その「見えない何か」を形にしたのは、上で述べたような理想・理念を信じた人々だったといえよう。

 翻って日本の状況を考えたとき、目に見えない明日を作り出すような真剣な理想があるだろうか。かつてこの国を破滅に追い込んだ理念を振りかざす安倍政権の空威張り以外何も聞こえないように思える。こんなものからは何ものも生まれない-破局以外は。

 日本経済の再建のためには、今の私たちには見えないものを作り出す誰かの信念・理想・理念がなければならない。それが多くの人々に広がるためには多くの人々をひきつけるものでなければならない。アメリカの理念が「自由」「個人」「開放性」といった形で提示された時、それは国籍とも民族とも宗教とも関係なかった。だからこそ人材は集まり、新たな理念は世界的規模で実現されていったのである。日本社会が問われているのは、果たしてそのような理念を生み出すことが出来るか否かということである。そのためには株価の心配よりも、政治や社会のありようを心配する必要があるように思われる。

 


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