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公然化する中国の指導層選び-絶対者の退場、そして権力グループ間の闘争へ

2011-11-26 16:25:54 | アジア
「(2011年11月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

金融を担う実力者の中国副首相、王岐山氏は、来年の米国大統領選挙でバラク・オバマ氏に挑もうと、完璧に髪を整え、宣伝に必死になる政治家たちとは、ほとんど共通点がないように思えるだろう。

 1つには、王氏は文化大革命の最中に田舎に送られた後、20代前半を共同農場で働いて過ごした。だが、米国の共和党大統領候補たちが党の指名争いに向けて準備を進める一方で、王氏とその同僚である共産党幹部の「予備選挙」はかなり進行している。

 運命の定めで、中国は来年、米国とほぼ同じタイミングで次世代の指導者を選出する。両国の指導者選出が重なるのは、少なくとも20年ぶりのことだ。

劇的に変わる指導者選び


中国は来年、米国大統領選とほぼ時を同じくして次世代の指導者を選ぶ〔AFPBB News〕

 権威主義国家では、密かな競争関係や政治的なスタンドプレーが公になることはめったにない。中国共産党は自らを無私無欲で大衆に仕える結束した組織に見せるためなら大抵のことをする。

 だが、ここ数カ月間、王氏や重慶市党委書記の薄熙来氏、広東省党委書記の汪洋氏といったライバルたちは、10年に1度の指導部交代に向け、自身の勢力基盤を固めるよう計算された政策発表や演出を繰り返してきた。

 アナリストらは、このような公然とした権力闘争は前代未聞であり、中国には力のある最高指導者がおらず、国を統治する人物を決めるうえで利益集団の間の合意形成に大きく依存しているという事実を反映していると指摘する。この争いの勝者は世界第2位の経済大国の政策を定め、人類の5分の1に対して強大な権力を振るうだけに、ことは重大だ。

 「共産党の歴史上初めて、後継者を任命する本当の最高指導者がいない」。米ノースウエスタン大学の教授で、エリートが支配する中国政治の専門家であるビクター・シー氏はこう言う。

 「毛(沢東)の台頭以降、指導部の継承はすべて非常に力のある個人によって決められてきた。(現在の国家主席で共産党総書記の)胡錦濤を含め、直近4代の党総書記は(元最高指導者の)小平が選んだ」

国家副主席の習近平氏は来年、胡氏の後を継いで党総書記の座に就くことになっているが、同氏の任命は恐らく初めて、強力な独裁者ではなく、党のエリート層が集団で決めた。

 9人から成る中央政治局常務委員会では、習氏より下のポジションの大半はまだ争われる状況にあり、王氏、薄氏、汪氏は皆、委員の座を手に入れる位置につけている。

 来年、温家宝氏が首相の座を降りる時には現在副首相の李克強氏が後継首相に就く予定になっているが、中国政界の一部では、李氏ではなく王氏が首相になる可能性があるとさえ言われている。

 中国共産党の最高幹部を選ぶプロセスは秘密に包まれている。だが、アナリストらは、1980年代、1990年代に氏が5人前後の党長老に相談していたのに対し、習氏の総書記任命には恐らく200人もの人が影響を与えたと見ている。

 常務委員会のポスト決定に関与する人の数は、1980年代、1990年代が10人もいなかったのに対し、今回は恐らく300人にも上るという。

 「発言権を持つ重要な役者の数が大幅に増えているため、王岐山や薄熙来のような候補者は以前よりずっと多くの聴衆にアピールしようとしている。公の場で多少のポーズを取っても損はない」とシー氏は言う。

「世界は景気後退に入る」と述べ、改革を訴えた王岐山副首相

 これまで何カ月間も目立たないようにしてきた王岐山氏が、全国的な舞台に姿を現し、アナリストや政府当局者いわく、リベラルな改革を進めてきた実績を訴え、自身の昇進を固めようとしたのは、このためだ。

 先週、国営メディアに大々的に取り上げられた地方会議で、王氏は世界経済が再び景気後退に陥ると予想し、その悪影響に対処するために中国は改革を推し進める必要があると語った。

王氏の発言は、中国政府が金融政策を緩和し始める舞台を整えたが、一方では、同氏が今後追求するだろう政策目標を打ち出すことにもなった。ここには、リベラルな改革派を安心させる狙いがあったようだ。

 王氏の発言はまた、潜在的な挑戦者に対して、同氏が来年どんなポストに就くことになろうとも金融を掌握し続けることを示す警告とも受け止められた。

 王氏は先月下旬、金融界の改革派の大物たちとともに、清華大学で開かれた公開イベントに参加した。中央銀行総裁の周小川氏、銀行規制当局の主席を務めた劉明康氏、政府系ファンド会長の楼継偉氏、証券監督当局の主席に任命された郭樹清氏らが顔をそろえた。

米国の予備選は終始報道されるが・・・

 それ以上に意味深長だったのは、改革派の元首相、朱鎔基氏が出席したことだ。朱氏はめったに公の場に姿を見せないが、10年前に引退した後の自身の後継者たちの国と経済の運営に批判的だと言われている。

 しかし、米国の共和党予備選は、すべての展開や失言が1日24時間放送のケーブルテレビで流されるのに対し、中国の政治レースで誰が最有力候補なのかは、選ばれた勝者が民に挨拶するために壇上に立つまで、世界は知る由もないのだ。

By Jamil Anderlini

© The Financial Times Limited 2011. All Rights Reserved. Please do not cut and」

 なお中国の動向に関する米国議会の報告書が⇒http://www.uscc.gov/annual_report/2011/annual_report_full_11.pdf


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