白夜の炎

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薄煕来事件後1年半の重慶

2013-07-26 18:46:13 | アジア
 薄煕来の腹心で、生徒のアメリカ総領事館に逃げ込み、薄煕来事件の発端を作った王立軍に関係する問題が紹介されている。

 重慶の公安局長として30件を超える不動産開発プロジェクトにかかわっていたとの事。

 その多くは公安関係の施設だったようだが、権力の大きさを感じる。

「薄熙来事件、重い負の遺産 建設中断の建物多く

中国総局 大越匡洋

 中国指導部を揺るがした重慶事件。2012年2月6日、重慶市トップだった薄熙来氏の側近、王立軍・元同市公安局長が四川省成都市にある米総領事館に駆け込んだことがすべての始まりだった。それから間もなく1年半。失脚した薄氏の裁判が近く開かれるとの観測も流れる。真相が明らかになったとはいえないまま、事件は早くも過去のものとなりつつあるが、重慶市内を歩くといまもなお色濃く残る事件の爪痕に気づかされる。

 「王立軍氏、半身不随に。病因は不明」。7月初め、中国でこんな情報が流れた。12年9月、王氏は職権乱用や収賄、亡命を図った罪などで懲役15年の有罪判決を受けた。政治犯の多くが入る北京市郊外の秦城監獄に収監されたとされる王氏は、すでに1カ月にわたって病床についているという。

 情報の真偽は定かではない。中国の指導者が夏に河北省の避暑地に集まり、人事や政策運営を話し合う「北戴河会議」を控え、薄氏の裁判がいよいよ開かれるのではないかとの観測も流れている。山東省などでの開廷がうわさされ、薄氏の失脚につながる権力闘争の口火を切った王氏については「口がきけない状態だとしておく方が何かと都合がいいのではないか」との臆測もささやかれる。

 「重慶警察クラウドコンピューティング情報安全サービスセンター」。重慶の市街地北部には、欧州風ともいえる奇妙なデザインの高層ビルが建設途中で放置されている。建物の外観はほぼできあがっているものの、内装は施されず、重慶名物の大雨が建物の内部にまでふき込む状態だ。総投資額は3億元(48億円)とも6億元ともいわれ、警察当局への通報や治安、交通に関する情報を一括管理するシステムセンターになるはずだった。

 建設の旗を振ったのは王氏だ。薄氏の右腕の公安局長として「打黒(暴力団一掃)運動」を陣頭指揮し、格差の拡大などに不満を持つ庶民を味方につける薄氏の政治パフォーマンスを実行するうえで重要な役回りを担った。しかし、実際には「打黒」の名を借りて民営企業家の財産を没収し、不動産建設などに回すといった事態が横行した。

 同センターは11年春に起工式を開き、12年中には完成するはずだった。だが王氏の逃亡、薄氏の失脚という重慶事件によって建設は宙に浮く。工事はストップし、敷地内はいまも人けがない。物置の陰をのぞくと、起工式の際に来賓の乗る車を同センターまで誘導するために作った標識が捨て置かれていた。

 市公安局はもともと、市の傘下にある建設請負会社「重慶路橋」から、同センターを完成後に買い取る予定だったが、このほどこの購入契約を破棄した。すでに払い込んでいた1億元余りの一部代金も返金させたという。重慶路橋は同センターをマンションなどに造り替える計画だと伝えられている。

 王氏が残した「負の遺産」は同センターだけにとどまらない。地元メディアによると、「刑事技術センター」「反テロ武装警察基地」など、王氏が推し進めた不動産開発プロジェクトは30件近くに達し、総投資額は数百億元に上るという。これらの多くが工期の延長という名目で問題の解決が先送りされ、完成のメドが立たないままになっているという。

 薄時代に王氏が市内数百カ所に設置した交番も大部分がすでに撤去され、いまの重慶市トップ、孫政才・同市党委書記は「薄時代との決別」を宣言した。しかし、新生・重慶の具体像はいまもなお明確には描けていない。

 重慶は12年に13.6%の経済成長を誇ったが、今年は12%へ低下する見込みだ。成長の勢いに陰りがみえるだけでなく、1人当たり域内総生産をみても重慶は全国平均とほぼ同じで、北京や上海の半分にも届かない水準だ。北京や上海と並ぶ直轄市の重慶。内陸開発の重点地域とされながら、いまだに豊かさへの途上で足踏みしているといえる。中国現代史上に残る激しい権力闘争の傷痕をどう癒やすか。それは、重慶が新しい成長への道筋をどう描くかということとも無縁ではない。」

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM18037_S3A720C1000000/