白夜の炎

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福島原発・除染労働の実態

2012-11-11 21:24:25 | 原発
「元除染作業員が危険手当未払いの実態を語る


木野龍逸フォローする2012年11月11日 00:53
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 11月9日に開催された「被ばく労働を考えるネットワーク」の設立集会で、国からの危険手当をピンハネされた元除染作業員の実情が報告された。それは朝日新聞などが報じてきた内容そのものだった。集会に参加した280人の人達は、報道でしか知らなかった状況を、身近に共有したのだった。

 これまでの報道では、環境省は今年1月から先行除染として18件、35億円を発注し、数千人が働いているが、ゼネコン6社が受注した1億円以上の先行除染6件のすべてで、作業員に手当てが適正に支払われていない事例が取材で見つかったという。発注時には、特殊勤務手当てとして1日に3000円から1万円が、賃金とは別に支払われることになっていた。

除染手当、作業員に渡らず 業者が「中抜き」か 福島(11月5日 朝日新聞)

http://www.asahi.com/national/update/1105/TKY201211040400.html?ref=reca

 報道を受けて環境省は実態調査を開始した。長浜環境省は調査を指示したことを明らかにしたほか、提出された賃金台帳上では不払いは確認されなかったとしつつも、ゼネコンなどに対して、下請けにも適正な支払いを徹底するよう求めている。

環境省、除染手当の支給徹底通知 ゼネコンなどに(11月5日 共同通信)

http://www.kyodonews.jp/feature/news05/2012/11/post-6990.html

特殊勤務手当の支給徹底、大手ゼネコンに要請 環境相(11月7日 朝日新聞)

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201211071015.html

 「被ばく労働を考えるネットワーク」の設立集会では、こうした不透明な雇用状況の実例の説明があった。被ばくネットワークは、原発だけでなく、除染作業の拡大により「すべての労働が被ばく労働である」という状況になった状況に対し、労働問題、健康問題に共同で取り組む連絡組織。重層の下請け構造によって見えにくくなっている被ばく労働の実態分析、情報共有をしていくことになる。

被ばく労働考えるネット設立…安全や権利守ろう(11月9日 毎日新聞)

http://mainichi.jp/select/news/20121110k0000m040116000c.html

被ばく労働を考えるネットワークHP

http://www.hibakurodo.net

 設立集会で語られたのは、楢葉町の除染作業でおこったピンハネや、ずさんな安全管理の実態だった。現在、ピンハネされた元作業員Aさんは、雇用されていた企業や、発注元企業などと未払い賃金の支払いについて交渉を重ねている。Aさんにいよると、状況は次のようなものだった。

 元作業員Aさんは、6月にハローワークで除染作業の募集を知った。記載されていた日当は8000~1万4000円だった。ハローワークの職員に問い合わせてもらったところ、作業現場は楢葉町で日当は1万円、寮は設置中なので、その間はいわき湯本の旅館に相部屋で滞在すること、宿泊費は不要などという説明があったという。しかし、後に問題になる危険手当(特殊勤務手当て)の記載はなく、ハローワークでも説明を受けなかったという。

 条件を聞いたAさんは応募することにし、7月中旬に福島の会社に行った。面接をし、作業前の事前講習を受けた翌日から、楢葉の現場に入った。この時にも、危険手当の説明はなかった。Aさん自身も、事前講習の内容などからは、それほど危ない作業という印象はなかったという。

 Aさんがいた楢葉の現場は、元請け(ゼネコン)から仕事を受注した1次下請けの下に、2次下請けと3次下請けがいたという。Aさんは2次下請けの所属だった。作業現場には80人から、多いときには100人以上の作業員がいたという。

 作業の全体指示は1次下請けの監督が出す。監督は4人だったが、常時ついているわけではなかった。作業は5~8人程度の班にわかれて行う。各班には、2次下請け会社の班長がいた。作業は3次下請け会社と同じ内容だったという。複数の下請け会社が同じ作業をしていることや、1次下請け会社から2次、3次下請け会社に指示が出ていることなどは、偽装請負の疑念を生む状況といえる。

 作業現場では、線量計は班長が持っていて、作業員はガラスバッジだった。空間線量は毎時1μSv前後だったが、ホットスポットは多かったという。放射線管理手帳は支給されていない。時々サーベイの人がやってきて、測っていく。すると、自分が座っていた場所が毎時10μSvだということを教えてもらったりすることがあったらしい。防護服は支給されなかった。

 8月末、Aさんの所属会社は、日当とは別に危険手当てが出ているので、差額を支払うといってきた。給料は月末締めの翌月中旬払いなので、この時に支払われたのは7月分の手当てだった。1日あたりにすると、約2000円だったという。

 その後、Aさんが一緒に作業をしていた人達と手当ての金額について話していると、3次下請けの人達の手当てが、1日に100円から200円程度しかないことがわかった。同じ現場で同じ作業をしているにもかかわらず、金額が大きく違うことに不信感を持ったAさんは、インターネットなどで除染作業について調べ始めた。

 その過程で組合のことを知り、相談しつつ、環境省に電話で問い合わせたりしたAさんは、危険手当が1日に1万円、国から出ていることを知った。「そんなに危ない作業をしてるのか」と驚いたという。

 危険手当てのほんとうの金額を知ったAさんは、仲間と一緒に「未払いの賃金を支払ってほしい」と、所属会社に問いただした。日当が1万円なら、国の危険手当を合わせて2万円になるはずだった。

 すると所属会社は、Aさんらの日当を5500円にして、寮費も引くと伝えてきた。しかもこの変更を、Aさんらが働き始めた7月にさかのぼって適用するといってきたのだった。

 さすがにAさんらは怒ったが、所属会社は、そうはいっても我々も上の企業からそれだけしかもらっていない、ない袖はふれないので文句があるなら上の会社にいってほしい、と応じたという。

 その後、Aさんは 組合を通じて所属会社や1次下請け会社、元請け会社と交渉を続けている。交渉に加わっている作業員は、Aさんの他に3人。当初は全員が参加した交渉だったが、諦める人や、ピンハネされても元の日当より上がっているのだからいいとして、交渉をやめる人も多かった。

 実はAさん自身も、「ピンハネがないにこしたことはないが、それを承知で働いている面はある」という。「でも」と、次のように続けた。

「でも、限度っていうのがあると思うんですよ。除染は危険な作業だから破格な手当てがあるんです。それをハネるって、どういう了見なんだと思ったんです。誰がピンハネしているのかを明らかにして、そこから返してほしいんです」

 Aさんらの要求している未払い分は、34~67万円にもなる。Aさんは、実態を明らかにすることで、交渉に参加していない人達も「手当てを受け取れるようにしたい」と強調した。

 またAさんは、「給料は悪くないんです。安全面さえちゃんとしてくれれば」という。しかし除染の仕事があれば行く気があるかと聞くと、「除染は危ないっていう話を後から聞きました。原発の方が安全管理はちゃんとしているだろうから、どうしようか考えてるんです」といった。

 除染の効果には疑問符もつくが、国や自治体が推し進めている除染作業は今後も続いていくだろう。そんな中でAさんのような事例が増えることだけは避けないといけない。試みにハローワークのHPで検索した除染作業の求人を見てみると、1日1万円の危険手当を明記しているのは1社だけだった。他に1社が、月額20万円強の手当てを記載していた。

 この両社の日当(基本給)は、5500円と6000円になっている。一方で、手当てを明記していない会社は、日当1万5000円程度で、月給が30万円前後という条件が多い。

 前述のように環境省は、実態調査を進めている。原発作業員の雇用環境、契約条件と非常によく似ているAさんの事例が明らかになれば、作業員をとりまく状況は少しは改善するかもしれない。それが、収束作業が続く福島第一の作業員に波及してよい方向に向かうことを願いたい。作業員が枯渇し福島第一原発の収束作業が頓挫するような事態を避けるためにも、是非、そうなってほしいと思う。」

http://blogos.com/article/49979/

チェルノブイリの影響→ウクライナで健康な子供は8% /さいたま市と同じ線量

2012-11-11 21:15:58 | 放射能
「さいたま市と同じ線量 ウクライナで健康な子どもは6%

ゲンダイネット2012年11月11日10時00分

 健康な子どもは6%――。昨年4月にウクライナ政府が発表した衝撃の事実。被曝(ひばく)者から生まれた子どものうち、健康なのは、チェルノブイリ事故から6年後の92年で22%だった。それが08年には6%に激減。一方で、慢性疾患のある子どもが20%から、78%に急増したという。

 恐ろしい結果だが、他人事ではない。ウクライナの放射能汚染レベルは、さいたま市と同じなのだ。

 9月24日~10月4日にかけてウクライナで現地調査を行ったNPO法人「食品と暮らしの安全基金」代表の小若順一氏がこう言う。

「3地域の学校を調査したところ、一番線量の低かったコバリン村学校は0.03~0.1マイクロシーベルト。さいたま市と同じ水準なのです。残りの2つ、ピシャニッツァ村学校は0.09、モジャリ村学校は0.12でした」

 小若氏らが子どもたちの調査を進めると、新たな問題も発覚したという。コバリン村学校の生徒の7割が足の痛み、2割が頭痛を訴えた。ピシャニッツァ村学校では足の痛みが6割、頭痛は5割に。モジャリ村学校では7割が足の痛みを、8割が頭痛があると答えている。小若氏は、「これらの健康障害は、食品摂取による内部被曝しか考えられない」と言う。

食品の検査で、モジャリ村のキノコは1キロあたり200~400ベクレルでした。ウクライナの田舎では、森でキノコやベリー類をとって食べる。キノコは肉の代わりとして使われ、食事の5%を占めるのです。どれぐらいで健康被害を起こしているのか調べると、彼らは平均して10ベクレルの食品を摂取していた。10ベクレルは日本の基準の10分の1。訪れた地域の線量はうちの事務室とだいたい同じでしたが、その地域でとれたライ麦を検査に出したら昨年の埼玉の小麦より低い線量でした。さいたま市でとれる食物が、どのくらい汚染しているか分かりませんが、汚染度が高い地域ほど危ないのは間違いない。政府は責任を持って調査すべきです」

 放射線量が落ち着いているからといっても安心はできない。放っておけば、子どもたちは内部被曝でジワジワとやられてしまう。国は真剣に対策を急ぐべきだ。


(日刊ゲンダイ2012年11月8日掲載)」

http://news.livedoor.com/article/detail/7130376/

チベットでの焼身自殺

2012-11-11 19:26:43 | アジア
「チベット族の焼身自殺続発 中国、沈静化に躍起

2012年11月11日 朝刊


 【北京=新貝憲弘】開会中の第十八回中国共産党大会で、チベット自治区の代表団分科会が九日、記者団に公開された。折しもチベット族居住地区で焼身自殺が相次いでおり、記者会見では、海外メディアから質問が集中した。現地からは自殺者を追悼するデモも伝えられ、当局は沈静化に躍起となっている。

 米政府系放送局のラジオ自由アジア(RFA)電子版によると、七、八の両日だけでチベット族六人が焼身自殺を図り、うち三人が死亡。新華社電は十日に一人が焼身自殺したと伝えた。八日開幕の党大会に合わせ、中国政府のチベット政策への抗議とみられる。

 記者会見で質問に応じたチベット自治区のルオサン・ジアンツン副主席は、焼身自殺は「国外の国家分裂主義組織の扇動や画策」と述べ、チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ十四世を指導者に掲げるチベット独立派が仕掛けたものだと批判した。

 その上で「(独立派は)焼身自殺者を英雄行為とたたえるが、チベット仏教は生命を傷つけることに反対している」と述べ、犯罪になるケースもあると警告した。ラサ市のチザラ党委書記は、対策として鉄道やバスターミナルなどでの入境者チェックやインターネット管理の強化を進めていると明かした。

 ただ、RFAは、一連の焼身自殺のうち二人がいた青海省黄南チベット族自治州同仁県で九日、一万人を超える学生や僧侶が政府庁舎や広場に集まりダライ・ラマ十四世の中国帰還を求めるデモを行ったと伝えた。

 一方、同日は新疆ウイグル自治区の分科会も公開された。ヌル・ベクリ主席は、ハイジャック未遂などテロ事件が起きているものの「安定という大局を変えることはできない」と強調。「テロ情報も住民から自発的に提供されるものが増えており、自首も増えている」と治安対策が効果を上げていると述べた。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012111102000113.html

 このような問題を「治安」の観点からしか見られなくなると、事態はさらに悪化するのだが・・・。

世界経済の覇者は誰か?

2012-11-11 14:39:51 | 経済
「大企業による寡占状況はさらに進行 5社が全米資産の56%を所有


  競争的市場資本主義の行き着く先は、寡占であることは、理論的解析を待つまでもなく明白である。それは、こうした競争をさらに優先するいわゆる新自由主義で加速されている。世の中には、こうした動きを批判することを、「陰謀論」として片付け、そんな意図は、こうした寡占を勝ち取る企業や個人にはないということになっている。しかし、現実はどうか。寡占状態がますます進行していることが、統計的に明らかになってきている。以下は、そのような解析の一つ(*)に基づく。(バンクーバー・落合栄一郎)

 世界中の4万3千の多国籍企業のうち、1318社が、世界全体の収入の80%を得ている。さらにこのうちの147社が、多数の企業を統合していて、多国籍企業の40%を掌握している。

 トップ50社には、 Barclays Plc (#1), Capital Group Companies Inc (#2), FMR Corporation (#3), AXA (#4),

State Street Corporation (#5), JP Morgan Chase & Co. (#6), UBS AG (#9), Merrill Lynch & Co Inc (#10),

Deutsche Bank (#12), Credit Suisse Group (#14), Bank of New York Mellon Corp (#16),

Goldman Sachs Group (#18), Morgan Stanley (#21), Société Générale (#24),

Bank of America Corporation (#25), Lloyds TSB Group (#26), Lehman Brothers Holdings (#34),

Sun Life Financial (#35), ING Groep (#41), BNP Paribas (#46), などがある。

 アメリカでは、JP Morgan Chase, Bank of America, Citigroup, Wells Fargo, and Goldman Sachs Groupの5社が、2011年末に、8.5兆ドルの資産を有し,これは全米資産の56%に相当する。この数値は、2007年には、43%であった。

 2011年12月、クリントン政権での財政副長官(ロジャー・アルトマン)は、「金融市場は、グローバルレベルの超政権である」と強調した。「この超政府は、通常の政治ではできないような、不都合な政府を覆すこともする。そして、政府に緊縮財政を押しつけ、一方、金融業は救済する。彼らは、IMFなどの組織よりも上位にあり、核兵器を除いて,全世界でもっとも強力な勢力になった」。これは、現在のユーロ圏(ばかりではないが)での財政危機の底流をなしている。

(* Andrew Gavin Marshall:
http://www.alternet.org/world/no-conspiracy-theory-small-group-companies-have-enormous-power-over-world?
)」

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201211111002240

NYTの暴露記事はどう描かれたか/ふるまいよしこさんのブログから

2012-11-11 14:32:40 | アジア
 以下はふるまいよしこさんのブログ記事。

 赤で表示したところを見ていただくと、NYTの記者が温家宝一族の資産形成の記事をどのようにまとめていったのかが書かれている。

 上海駐在時代に、中国各地の役所などで入手可能な資料を集めて分析していった結果だとしている。

 日本の記者にもこのような地道な取材をやってほしいものである。

 「見えない中国、見える中国
2012年11月10日(土)14時15分
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 ここ数日、ツイッターに「斯巴達」という言葉が舞っている。「いつもだったら5分の距離なのに、もう40分以上かかってる。夕飯の約束に大遅れ。『斯巴達』のせいだ!」とか、「テレビつけるとぜーんぶ『斯巴達』。いいかげんにしろ」とか、「なんで今日はネットにつながりにくいんだ? これも『斯巴達』効果?」などという具合に。もうお分かりかもしれない、「斯巴達」がそれほど喜ばれているわけではないことが。

 これを杓子定規に辞書を引いて、「スパルタ」などと訳してはいけない。いや、ギリシャの「スパルタ」のようでありながらスパルタにあらず、想像力と創造性という点からすれば、この「斯巴達」は最近の中国インターネット隠語のレベルからみれば、かなり上出来である。

「斯巴達」は「スーバーダー」と読む。このあたりでちょっとひねくれた中国人ならすぐ分かる。「スーバーダー」→「シーバーダー」→「十八大」、つまり今開かれている、中国共産党の第18回全国代表大会(党大会)を指している。北京ではこの党大会のおかげで急な交通規制が行われたり、庶民の日常生活に大きな支障をきたしているのだ。

 都市国家の「スパルタ」と中国共産党員の代表大会、もちろんそこには直接はなんの関係もない。だが考えてみるとその発音が似ているということ以上に、国家の強大化を目標に住民たちにあれやこれやの規制を設けて管理する中国共産党が、都市国家の強国を目指した管理規制社会のスパルタに重なる。もちろん中国政府はむやみな批判は許さないから、「十八大」を批判すれば書き込みはすぐに消されてしまうし、下手をすれば自分の身に危険が及ぶかもしれない。だから人々は「斯巴達」を批判の的にして不満を共有し合いつつ、リスクを回避する。

「十八大」話題のついでに一つ、真面目な情報をお伝えしておこう。今回の党大会では胡錦濤氏をはじめとする現指導部が習近平氏ら新しい世代のグループへとバトンタッチすることで注目されているが、一部では「胡錦濤は『裸退』するかも」という憶測が流れている。

 この「裸」というのは文字通り素っ裸、「退」は「引退」を指す。「素っ裸で引退する」というのはつまり、今回確実に退く党総書記の役職以外に「中国共産党軍事委員会主席」も一緒に手放してすっぱり引退するのではないか、という意味だ。

 中国で軍を統括する軍事委員会(正式には中国には国家と党にそれぞれ「軍事委員会」がある。が、同じ人物が同じ役職についている)の主席は現在の国家主席であり共産党総書記の胡錦濤だ。この軍事委員会主席職の引き継ぎについて今一般的に語られているのは、10年前に自分が前任の江沢民から共産党総書記の席を引き継いだ際に江がそれから約2年後にやっと軍事委員会主席を明け渡した例を踏襲し、胡も習への引き継ぎを数年後に先送りする、という説だ。

「裸退」とはその通説に反し、胡錦濤が「なんの官職も手元に残さず、すべて習近平に預けて完全引退する」こと。大胆な説ではあるが、その根拠として「胡錦濤の健康状態」が上がっており、胡はかなり重い糖尿病を患い、いつまで重要な官職を続けられるかわからないという。中国ではトップのカネと健康は機密中の機密だが、わたしがこの説に注目しているのは、時折しか公開の場に顔を出さない胡錦濤の顔の艶が確かにここ2年ほど悪くなっているからだ。

 もちろん、それも数ある噂のうちの一つに過ぎない。「裸退」を裏付ける、その他の確固とした根拠はわたしは手にしていない。しかし、「軍事委員会主席移譲後延ばし」説もしっかりとした根拠が示されているわけではなく、「慣習」のレベルで説明されているだけなのだ。さて、その結果はいかに? たぶん、このコラムの次回更新時にはその結果が出ている。

 だが、敢えて言うならば、こうした、その時は誰もが目にしながら「取るに足りない」と思っているものに重大な出来事を読み解くカギが隠されていたことが分かった例はよくある。それを偶然と呼ぶか、必然と呼ぶかは、引き起こされた出来事をきちんと見極め、検証してこそ出てくるものだ。

 その思いを強くしたのが、先月末ニューヨーク・タイムズ紙の上海支局長が、温家宝首相の家族らが首相の権威を使って最低でも27億米ドルもの資産を蓄えている、とした暴露記事だった。この記事は大騒ぎになったが、同支局長が記事の執筆の背景について読者と交わした問答が興味深かった。

 多くの人たちは、この暴露記事は、温家宝を追い落としを狙う「アンチ温」の保守勢力が記者に渡した詳細な資料がきっかけになったと考えている。だが、その一方で温をそれほど評価していない人たちの間からも、「なぜニューヨーク・タイムズが開明派と言われる温家宝の追い落としに参画したのか?」、「党大会直前の、まさに温家宝が下野する今になって発表されたのはなぜ?」、「アンチ温派は他のメディアとも接触したはず。だが、なぜ他の外国メディアから出て来なかったのか?」...などなど、多くの疑問の声が上がっている。

 執筆者であるデイビッド・バドーザ記者はこの問答記事の中で、記事は中国で公開されている、正式な情報を読み解いた結果であることを強調している。きっかけとなったのも、2004年に上海に経済記者として赴任後、銀行家や弁護士、会計士などとの会食の席で、政府指導者の家族が企業から秘密の株式配当を受けたりと、さまざまな方法で蓄財を増やしているという話をたびたび耳にすることだったという。その中でも温家宝の家族の噂をよく耳にしたので、温一家にターゲットを決めて資料探しを始めたそうだ。

 同記者によると、調査はまず、さまざまな土地の工商局から既定の費用を支払って企業の登記資料を手に入れ、丹念にそれを調べることから始めた。そこからさらに数十社に渡る、温氏の直属の家族が関係する企業資料を集めてそのリストをまとめたのだそうだ。「調べ始めて驚いた。そこにはたくさんの公開資料があったからだ。中国の優れた経済誌もたびたび手に入れて取材資料に使っているようなものばかりだが、中国政府が指導者の家族についての報道を規制しているために、中国メディアによるこのような調査報道は制約されている」と語っている。

「誰かが意図的に資料を持ち込んだのでは?」という質問には、「わたしが参考にした資料は資料棚いっぱいにぎっしりと詰まっている。これを温首相の敵が大型のスーツケースに入れて持ってきたなどということはない。わたしは公開されている資料を検証しただけ」と否定。昨年始めたという調査結果の公開時期が今になったのも、「最初は一ヶ月で事足りると思っていた。だが、調べれば調べるほどその内容は深く、調べ続けなければならなかった。その結果1年余りもかかってしまった」と言う。

 党大会とのタイミングも、自分の担当が経済であり、北京の党大会は別の同僚が取材していること、そして「わたしの調査では違法、あるいは汚職行為は見つからなかった。ただ、ほぼ誰にも知られていない、数十の投資プラットホームの裏に温家宝の家族の名前が隠れていることを暴露しただけだ」と、それが「温氏の汚職報道ではないこと」を強調している(確かにこのへんは実際に記事を読んでいない人たちの間で誤解されている)。

 さてこの言葉を信じるか。それとも、やっぱりあれはアンチ温家宝派の追い落としによる謀略だと考えるか。わたし個人は温がまさに首相の職を降りる直前であること、さらにこの記事以外にもさんざん党内のアンチ派の牽制を受けていること、さらに「汚職を証明」したわけではなく、またアンチ温派を含めた他のリーダーの家族も蓄財を増やしていることを考えれば、この記者の言葉は真実ではないか、という判断に立っている。

 だが、これらの情報がただの公開情報に隠れていたとは、それ自体が驚きである。見えるようで見えない中国、見えないようで見えている中国。このへんのどこを信じるかによって、事実の評価は大きく別れるような気がするのだが。」

http://www.newsweekjapan.jp/column/furumai/2012/11/post-588.php

中国指導部は資産を公開するのか?

2012-11-11 14:23:33 | アジア
「広東省書記ら「資産公開いずれ必要」、温首相の報道には触れず
2012年11月11日(日)10時43分

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[北京 9日 ロイター] 北京で行われている中国共産党大会で最高指導部入りする可能性があるとされる、広東省党委書記の汪洋氏らは9日、当局者の資産公開について、いずれは必要となるとの考えを示した。

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は先月、温家宝首相の一部親族が少なくとも27億ドル(約2150億円)の「隠し資産」を蓄えたと報道。主として温氏が1998年に国務院(内閣に相当)副首相に指名されて以降、母親や兄弟、子供たちが巨額の蓄財を行っていると伝えていた。中国政府は報道内容が中傷だとして非難している。

汪氏は、広東省が当局者に強制的に資産を公開させる方法を「模索」しているとコメント。また上海市党委書記の兪正声氏は、上海市では内部に向けて資産を明らかにするシステムがあるとした上で、「これは十分ではない」と指摘。同市の指導部が資産の一般公開に向けて着手したと明らかにした。

兪氏はまた、自らの子どもに対し、兪氏が上海市の当局者である間は同市の企業や当局とかかわりを持つことを禁じていると述べた。資産の一般公開を率先して行うかとの記者の質問に対しては「そのような決定がなされれば、資産が多くないので問題なくできる」と語った。

汪氏と兪氏は、温首相の親族をめぐる報道については触れなかった。中国共産党は来週に最高意思決定機関である中央政治局常務委員を発表する見通しで、汪氏と兪氏も常務委員に選出される可能性があるとされている。」

http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2012/11/86956.php


 果たしてどうなるのか。

 公開されても、その情報の信ぴょう性はどのように担保されるのか。

 信憑性の担保ということについては、日本でも西側諸国でも相当問題がある。

 今後が注目されよう。