私は毎年北海道に行っていますが、その途中でよく寄る恐山…。
青森の下北半島にありますが、ここは、死者が集まる場所ともいわれ、イタコさんが有名ですね!
「口寄せ」といわれる、死者を自らの体に乗り移らせて、その思いを伝える行為が有名です。
若いころは何も悟らずに、胡散臭い!なんて、イタコさんには失礼なことを思っていましたが…。
イタコさんのこんな仕事って、実はとても大事なことだと、年をとってから分かるようになりました…。
…。
このイタコさんの口寄せ。
「予約ができない。」ことを皆さんはご存じでしょうか?
なぜ予約ができないのか…。
死んだ者の声を聞きたい人たちは、夏の暑い日差しの中、自分の順番が回ってくるのを何時間でも待っています。
この「予約ができない。」ことって、私は、実は重要な意味が隠されているんじゃないかって、思えてならないんで
す…。
皆さんは、お釈迦様のケシの実の話をご存じでしょうか?
お釈迦様の名声を聞いたある女が、死んだわが子を抱いて、お釈迦様にこの子を蘇らせてくれと頼みます。
そんな女に、お釈迦様は「それならば、ケシの実を集めてきてください、ただし…。そのケシの実は死者が出た家のものは
ダメです。死者が出ていない家のケシの実だけを集めてください。」と言いました。
女はわが子を蘇らせたい一心で、死者が出ていない家のケシの実を集めようとしますが…。
いくら家を回っても、死者が出ていない家なんて見つかりません…。
だって、人は必ず死ぬんですから…。
疲れ果てた女は悟ります。
そして、再びお釈迦様のもとへと訪れ、こういいます。
お釈迦様、あなたは私に人は必ず死ぬことを悟らせたかったんですね。そして、この苦しみは自分で乗り越えるしかない
んですね…。
恐山の口寄せは、一見胡散臭そうに思えるかもしれませんが、愛する者を失った方たちは、どうしようもなくて、自分の
気持ちの整理がつけられず、藁をもすがる思いでイタコさんに会いに来ます。
その時…。
順番を待つ人たち、周りの人すべてが、自分と同じ境遇にあることに気づきます。
何時間も待つ間に…。
当然周りの方との会話も生まれるわけであり…。
そんな人とのかかわりあいの中で、おのずと自分の心の整理がついてくるように思えるんです。
人は必ず死にます。
残されたものは…。前に進むしかないんです…。
決まり切った答えですが、愛する者を失った方は、それがなかなかできないんです…。
そんな、愛する者を失った方の心のケアをするのが、イタコさんの仕事であり、それには、恐山に行って、長い時間順番
を待ち、周りにいる自分と同じ境遇の方と話をしてみることが必要なんだと思うんです。
だから、あえて、イタコさんの口寄せは、予約を受け付けず、延々と順番が回ってくるまで待たせるようにしているんだ
と、私には思えるんです…。