今から20年ほど前、ハンググライダーはあらゆる改良が繰り返されて、ハングの進化はもうこれまでか?と言われた時期がありました。
しかし、実際は現在もなおハングの進化は続いています。
今回ご紹介するのは、そんなことが言われた20年ほど前に出現したハンググライダーです。
アメリカのウイルスウイングが作ったHP-AT(ハイフォーマンス アドバンスドテクノロジーの意)です。
この機体では、実は今に続く「ステップダウンリーディングエッジ」が初めて採用されました。
これはどのようなものかというと、下の図のように、フロントスパーに対しリアスパーに細い径のものを入れるというものでした。
それまでのハンググライダーのスパーは、フロントもリアもそれほど径の違いがないものが使用されていました。
一般に、スパーの直径は、太いものほど固くなるため、コントロールは重くなりますが、高性能になります。
逆に細いものを使用すると、コントロールは軽くなりますが性能は出ません。
この問題を見事に解決し、「美味しいとこどり」にしたのがステップダウンリーディングエッジなのです。
実はよくよく調べてみると、ハングの性能により影響を与えているのはフロントの方、コントロール性に影響を与えているのはリアの方と分かってきたのです。
それならば、フロントスパーの直径を太くし、リアスパーを細くしてやればよい‥。
その発想がステップダウンリーディングエッジだったわけです。
HP-ATはメーカーのもくろみ通り、性能とハンドリングを見事に両立することに成功しました。
そして、この技術は瞬く間に他のハンググライダーにも採用されていったのです。
この技術はのちのセールカットの進化にも影響を与え、VGがより効果的に効かせられるようになり、大きくハンググライダーの性能を上げる結果に結びついています。