読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

人間の温もりを描けない孤独のイラストレーターを描く、「トニー滝谷」(2004年)

2009-04-27 05:17:20 | 映画;邦画
~あらすじ:美大で芸術を学んだトニー(イッセー尾形)は、デザイン会社へ就職、その後独立してイラストレーターになり、自宅のアトリエで仕事をこなすようになる。そんなトニーが一人の女性、出版社編集部員・小沼英子(宮沢りえ)に恋をする。(シネマトゥデイ)~

監督、脚本:市川準
音楽:坂本龍一
撮影:広川泰士
出演:トニー&省三郎:イッセー尾形
英子&ひさこ:宮沢りえ
ナレーション:西島秀俊

原作は、1990年に『文藝春秋』6月号に掲載。1999年に文藝春秋より短編集『レキシントンの幽霊』の中の一編として刊行されています。村上春樹さんの長編はこのブログでもカテゴリーに設けているように、ほとんど読みましたが短編には全く手をつけていません。「トニー滝谷」という作品があることは知っていましたが、どんな作品なのかは知りませんでした。

このタイトルを聞いて、私たちの世代にすぐに思い浮かぶのはトニー谷さんです。その芸風は、デビュー当時のタモリさん、今で言えば、さしずめルー大柴さん。赤塚不二夫さんのおそ松くんの「イヤミ」のモデルだとも言われていますね。で、村上さんのこの小説は、トニー谷さんをモデルのしているのかというところですが、村上さんはハワイで偶然手にした選挙キャンペーンTシャツにすり込まれていた名前が「トニー滝谷」で、そこから全く無関係にイメージをふくらませて書いたとしています。

しかしながら、トニー谷さんの生涯を改めて知ると、この小説は彼のために書かれたと言っても過言ではないほど、トニー谷さんの実人生の影を投射していることに気づきました。映画である本作から原作を類推しても、不遇な親子関係と彼が背負った孤独がテーマであるこの作品は、実在のトニー谷というタレントをベースに、全く異なる世界を描き出した小説であるといっても良いと思えます。

トニー谷(1917年10月14日 - 1987年7月16日)は、「東京出身のヴォードヴィリアン。戦後日本の特殊状況を鋭く批評するキャラクターを構築した、キザでイヤミでバタ臭くてアクの強いゲテモノ芸人。リズムに乗りソロバンを楽器のようにかき鳴らす珍芸が売りで、妙な英単語を混ぜたしゃべりは『トニングリッシュ』と称された」。

「短めのオールバックにちょび髭、吊りあがったフォックスめがね(ロイド眼鏡)がトレードマーク。芸風・容姿・芸名も含めて「日系二世」というギミックで売ったが、以下の通り実際には純日本人である。長い間東宝専属。舞台・映画(100本以上の出演)・テレビ・レコードで活躍」。

<トニー谷 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%BC%E8%B0%B7


監督の市川準さんを初めて知りましたが、残念ながら昨年亡くなっていたんですね。脚本も市川さんが書かれていますが、村上作品を随分読み込まれているような、そんな脚本ですね。

市川準(いちかわ じゅん、1948年11月25日 - 2008年9月19日)は、「日本の映画監督、CMディレクター。本名は、市川 純(読み同じ)。東京都府中市出身。CM演出家を経て1987年に『BU・SU』で映画初監督。以降、幅広い題材に意欲的に取り組み話題作を数多く発表した」。

<市川準>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%82%E5%B7%9D%E6%BA%96


坂本龍一さんの音楽は、先日取り上げた「シルク」もそうであったように、本作においても絶品であります。映画音楽でも今後の活躍を期待します。

<愛と音楽と五つの国で紡がれた名作、「シルク」(2007年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/8de951abc9d04ffa7e5a048d22f1544a


本作でナレーションを担当した西島秀俊さん。映画を観ながらこのナレーションは誰だろうと気になりながら、エンドロールのクレジットを見ても顔が思い浮かびませんでした。しかし、顔と名前が一致すると、いかにも村上作品に登場するような俳優さんだと思えます。

西島秀俊(にしじま ひでとし、1971年3月29日 - )は、日本の俳優。東京都八王子市出身。桐朋中学校・高等学校卒業、横浜国立大学工学部中退。クォータートーン所属。身長178cm。

<西島秀俊>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B3%B6%E7%A7%80%E4%BF%8A


主役を演じたイッセー尾形さん。本作にまさに打って付けの役者ですね。私は東京在住の、1980年代初めに渋谷ジャンジャンで彼の一人芝居を観たことがあります。それが、「バーテンによる12の素描」であったか、「イッセー尾形の止まらない生活」シリーズであったかは思い出せません。

イッセー尾形(いっせーおがた、1952年2月22日 -)は、「日本の俳優。一人芝居のスタイルを確立し、日本における一人芝居の第一人者となる」。

<イッセー尾形>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E5%B0%BE%E5%BD%A2


英子&ひさこ役を演じた宮沢りえさん。こういう役は彼女でなければ演じられないと思わせてくれる存在感があります。ご結婚とご懐妊、おめでとうございます。

<宮沢りえ>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E6%B2%A2%E3%82%8A%E3%81%88


<eo映画|『トニー滝谷』イッセー尾形インタビュー>
http://eonet.jp/cinema/interview/050224_interview.html

<ペーパーバック・ライター/桑畑四十郎 : 市川準監督インタビュー『トニー滝谷』>
http://tarner55.exblog.jp/1464430/


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